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不動産登記情報×ビッグデータで詐欺も撃退--トーラスがデータから解決する不動産の困りごと - (page 3)

加納恵 (編集部)2019年10月10日 10時49分
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AIはよく切れる包丁と同じ、作るのは難しくても使うのは簡単

——データを持っている強みですね。

 今の時代データが集まれば、AIが分析できますから、量を集めることが重要です。AIは、作るテクノロジーは高度化されていますが、実際に使うのはそれほど難しくありません。よく切れる包丁みたいなもので、切れる包丁を作る技術は難しいけれど、それでものを切るのは簡単ですよね。ですから、これからの差別化は個別のテクノロジーではなくて、優良なデータを持っているかどうかです。ビッグデータと教師データの2つの掛け合わせが強みの源泉になるでしょう。

「AIは、作るテクノロジーは高度化されていますが、実際に使うのはそれほど難しくありません。よく切れる包丁みたいなもので、切れる包丁を作る技術は難しいけれど、それでものを切るのは簡単です」
「AIは、作るテクノロジーは高度化されていますが、実際に使うのはそれほど難しくありません。よく切れる包丁みたいなもので、切れる包丁を作る技術は難しいけれど、それでものを切るのは簡単です」

——既存のデータをいかにオープンにするかも大事になってきそうです。

 そうですね。情報は出てこないと使えませんから。不動産テックがフィンテックほど盛り上がらないのは、情報が出にくいからです。金融市場は透明化されているのですが、不動産市場はクローズドです。しかし不動産業はそもそも情報産業ですから、効率を上げるためには業界としてどんどん情報を出していくことが大事だと思っています。

 不動産テックの本命のひとつは、ブロックチェーン技術を応用したスマートコントラクトになるのですが、これがフィンテックの例えばビットコインのような広がりをまだ見せていません。ビットコインは最初はオモチャのような存在で、使いたい人だけが集まってやっていました。遊びに近い感覚ですね。ある時しきい値を超え、急に実用化されたのです。インターネットが普及したときもそうでしたが、最初はオモチャと言われながらも一部の人たちの間にウイルスのように浸透していき、あるとき急に普及して本物になるのがネットワーク社会です。ところがスマートコントラクト的なものは、契約書など不動産業務の実務に直結しているため、失敗は許されない状況で事業をスタートしなければなりません。仕事ですから当たり前のことですが、テクノロジーがキャズムを超えるには、そのサービスや製品をおもちゃのように楽しみ、使ってみる時間が必要だと思います。不動産テックのスタートアップはそうした時期が許されず、いきなり本番にジャンプしないといけない。このギャップは大きいですね。

——不動産情報以外のデータをかけ合わせての展開なども考えていらっしゃいますか。

 考えています。例えば会社の登記情報を組み合わせれば、ファイナンスがしやすくなりますし、電気やガスの使用状況と組み合わせれば、その住居に本当に人が住んでいるのかといった物件情報がとれます。見守りサービスにも展開できるかもしれません。

 加えて注力しているのが人工衛星から得られる地表のデータです。宇宙からのリモートセンシング技術は、非常に発達してきています。たとえばこれまでは地球上の同じ地点を観測するのに、数週間かかっていました。ところが安価で小さな衛星を多数飛ばす事で、この間隔を十数分に1回に狭めるところまで来ています。これを活用すると地上の状況がパラパラアニメのようにわかる。駐車場に車が停まっている時間、停まっていない時間などは一目瞭然ですし、アミューズメントパークの売上予測に使えるかもしれません。石油コンビナートは、横から見るといつも同じ形ですが、実は落し蓋になっていて、中の量が屋根の高さで計測できるので、備蓄量がわかる。それがわかれば数カ月後の需給バランスを予想できます。そのような地表のダイナミックな動きと、所有権等をクロスして把握することができるようになります。今後のスマートシティや、政府が主導するSociety 5.0などを支える情報インフラの1つになっていくと思います。

 このようにデータをかけ合わせての展開は、裾野が大変広い。可能性はさらに広がっていくと考えています。

——今後の展開を教えて下さい。

 現時点で2つ考えていて、1つはAIを活用して、出口入口をあわせた上で、今まで言語化できなかった最適解もいくつも見つけたい。データが集まった上で、次にやるべきことを効率的に掘り起こして行きたいと思います。もう1つは、データをさらに網羅的に集めていきたい。全国の謄本を集めた上で、さらに海外のものも集めていきたい。海外にも謄本に相当するものは必ずありますから、それを集めてきてフラットなデータベースを構築したいと考えています。これが実現すれば、海外不動産投資をする際に、お客様の判断に役立つデータを提供できます

インタビュアー

赤木正幸

リマールエステート 代表取締役社長CEO

森ビルJリートの投資開発部長として不動産売買とIR業務を統括するとともに、地方拠点Jリートの上場に参画。太陽光パネルメーカーCFO、三菱商事合弁の太陽光ファンド運用会社CEOを歴任。クロージング実績は不動産や太陽光等にて3500億円以上。2016年に不動産テックに関するシステム開発やコンサル事業等を行なうリマールエステートを起業。日本初の不動産テック業界マップを発表するとともに、不動産テックに関するセミナー等を開催するほか、不動産会社やIT企業に対してコンサルティングを実施。自社においても不動産売買支援クラウド「キマール」を展開。2018年、不動産テック協会の代表理事に就任。早稲田大学法学部を卒業後、政治学修士、経営学修士を取得。コロンビア大学院(CIPA)、ニューヨーク大学院(NYUW)にて客員研究員を歴任。 

 

川戸温志

NTTデータ経営研究所 シニアマネージャー

大手システムインテグレーターを経て、2008年より現職。経営学修士(専門職)。IT業界の経験に裏打ちされた視点と、経営の視点の両面から、ITやテクロノジーを軸とした中長期の成長戦略立案・事業戦略立案や新規ビジネス開発、アライアンス支援を得意とする。金融・通信・不動産・物流・エネルギー・ホテルなどの幅広い業界を守備範囲とし、近年は特に不動産テック等のTech系ビジネスやビッグデータ、AI、ロボットなど最新テクノロジー分野に関わるテーマを中心に手掛ける。2018年より一般社団法人不動産テック協会の顧問も務める。

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