飲食業の約58%がFAXで発注--FoodTechが巻き起こす近未来飲食経営とは - (page 2)

客単価は850円から2500円へ--分析がカギ

 EBILABは伊勢神宮の参道に店舗を構える老舗「ゑびや大食堂」から生まれた店舗経営ツール「TOUCH POINT BI」をさまざまな企業に提供している。

 「もともとは客単価850円のうどん屋だったが、今は業態を変えながら客単価2500円まで上げた。しかし(客数は)年間12万人で変わっていない。自分たちのマーケットがどういうエリアかを把握し、お金を払えるのはどんな人でといったことを把握することで、100円高くても300円高くてもいけるのではないかという世界が作れる。そういうことをしながら生産性を上げることこそ飲食業界がやらなければならないことだ」(小田島氏)

経営を向上させるためにはデータの見える化が重要だと小田島氏は語る
経営を向上させるためにはデータの見える化が重要だと小田島氏は語る

 IoT重量計の「スマートマット」で在庫を計量し、必要な数だけ自動発注するB2B向けサービスを展開するスマートショッピングの林氏は、「スマートマットは発注を自動化するため『発注作業がなくなるのでしょう?』と言われるが、導入すると在庫の動きや消費データが分かるので、それに応じて仕入れの仕方やマーケティングを変えようという企業には好評を得ている」と話す。データの見える化が企業の積極的な戦略・戦術見直しに役立つというわけだ。

 大島氏は「何をどれだけ買ったかは当然分かるが、発注している時間も分かる」と話す。「繁盛していない店に限って変な時間に発注しているといったことが分かる。働き方やタイムスケジュールが見えて、スタッフの指導にもつながっているという実績がある」(大島氏)

 小田島氏は、店の中で起こっていることをどれだけ見える化しているかが重要だと語る。「雨だったらこんなエリアから来るとか、気温が低いと名古屋から来るとか。名古屋から来る人はお寿司ではなくて牛丼を食べるとか、そういうデータが見えるとアプローチが変わり、今までとは違う新しい戦い方ができる」(小田島氏)

 見える化するのはPOS(店頭管理システム)データだけではない。ウェブカメラなどで店舗の前を通る人の数を正確に把握することで商圏の大きさとポテンシャルが分かるという。

 「自分たちのお店の前を歩いているお客様の人数をカメラで正確に撮るのが一番重要だ。商圏のボリュームがどのくらいで、そのうち何%がお店に入ったのか。看板を変えたらそのパーセンテージがどう変わったのか。『食べログ』や『Hot Pepper』などに広告を上げたらどのくらい上がったのか。ウェブ広告にお金をかけても入らないなら使わない方がいいとか、そういったことが見えてくる」(小田島氏)

EBILABではWebカメラを使ったシステムによって、店舗の前を通る人の数を正確に把握している
EBILABではWebカメラを使ったシステムによって、店舗の前を通る人の数を正確に把握している

データを分析して活用するためのシステムとは

 小田島氏は、EBILABがデータを分析して活用するためのシステムのダッシュボードを紹介した。ダッシュボードでは、来客予測と現在何人が来客したかというデータがリアルタイムで見られるようになっている。

店舗経営ツール「TOUCH POINT BI」のダッシュボード
店舗経営ツール「TOUCH POINT BI」のダッシュボード

 「前日に分かったら仕込みもできるし、出勤するスタッフの人数が仮に多かったらピーク時だけ入れて、アイドルタイムはほかの業務をさせるといったことができる。明日出るメニューの予測など、現場の店長や料理長などがやっていたことも機械がやってくれる。ベテランがやめてしまった場合でも、指示のムラを出さないための仕組みに使える」(小田島氏)

キャプション
日ごとの来店人数や売上高なども一覧できる
日ごとの来店人数や売上高なども一覧できる
来店者の細かい属性や売れた商品なども一覧し、分析が可能になっている
来店者の細かい属性や売れた商品なども一覧し、分析が可能になっている

 では、飲食店が変わるためには何を第一歩とすればいいのか。大島氏は、日本の飲食業の約58%がFAXで発注しているのをなくしていくこと、スマートショッピングと連携した自動発注の仕組みをさらに進めたいと語った。

スマートショッピングのスマートマットを活用した自動発注の仕組みによって、発注作業を簡略化できる
スマートショッピングのスマートマットを活用した自動発注の仕組みによって、発注作業を簡略化できる

 大島氏は、インフォマートがGMOペイメントゲートウェイと組んで2020年1月に開始する予定の電子請求書早払いサービスをアピールした。

 「インフォマートの中で、フードだけでも年間約1兆7000億円が流通している。その流通しているデータ利用し、資金繰りの改善につなげたい。飲食業は月末締め翌月払いとなっているが、その通りに払ってもらう。業者には2日とか3日にGMOが支払うことで、卸などが好景気化したり、もしくは値下げにつながったりするかもしれない。今までは不動産などを担保に銀行からお金を借りるという世界だったが、データで資金繰りを良くしていくという世界をこれから始めていく」(大島氏)

インフォマートがGMOペイメントゲートウェイと組んで2020年1月に開始する予定の電子請求書早払いサービスによって、飲食業界の大きな課題である資金繰りが向上すると大島氏はアピールした
インフォマートがGMOペイメントゲートウェイと組んで2020年1月に開始する予定の電子請求書早払いサービスによって、飲食業界の大きな課題である資金繰りが向上すると大島氏はアピールした

 小田島氏は、「経営者の考え方を変えること」と「投資の仕方を変えること」が重要だと話す。「今までは人口が増える中で何をやってもうまくいっていたが、人口が減少する中では今までのやり方が通用しない。そんな中で新しい考え方で店舗経営を考えていくことが必要だ。まず第一歩は(データの活用など)難しいと思うものを簡単に考えてみてトライすること。もう1つはデータ投資を含めた投資が重要だと思う」と語った。

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