MITメディアラボ伊藤穰一所長が辞任へ--疑惑の投資家からの資金提供めぐり

　マサチューセッツ工科大学（MIT）メディアラボ所長の伊藤穰一氏が辞任することが明らかになった。MITメディアラボは、性犯罪疑惑で起訴されたJeffrey Epstein氏との関係をめぐり、スキャンダルに見舞われている。MITメディアラボは、Epstein氏からの資金提供に関して、以前認めていたよりも深く関わっており、不祥事を起こしたこの投資家との関係を隠そうとしていたという。The New Yorkerが米国時間9月6日夜に報じた。

提供：Jon Skillings/CNET

　MITのL. Rafael Reif学長は7日、MITコミュニティー宛ての書簡で、「記事で告発されている内容はきわめて深刻であるため、直ちに徹底的な独立した調査が必要だ」と述べた。「私は7日午前、著名な法律事務所にこのプロセスの策定と実施を依頼するよう、MITの法務顧問に求めた。その事務所ができる限り迅速にこの調査を実施し、私と、MITの理事会であるMIT CorporationのExecutive Committeeに結果を報告してくれることを期待する」（Reif学長）

　Reif氏によると、伊藤氏は7日午後に所長職の辞職願を提出し、MITの教授と職員としての職も辞任するという。米CNETがThe New Yorkerの記事と伊藤氏の辞任についてMITメディアラボにコメントを求めたところ、担当者はReif氏の書簡を参照するよう求めた。

　MITメディアラボは、Epstein氏に絡むスキャンダルに揺れていた。Epstein氏は性的搾取を目的とする人身売買の容疑で起訴されていたが、8月に勾留中の留置所で自殺した。MITシビックメディアセンターの所長で、メディアラボの准教授でもあるEthan Zuckerman氏は8月下旬、メディアラボとEpstein氏とのつながりを問題視し、メディアラボを離れると表明した。J. Nathan Matias客員教授も、メディアラボの職を辞すると発表した。メディアラボは、人間の機能を模した未来的なロボットからインターネットでの社会実験に至る幅広い研究で知られている。

　メディアラボはこうした辞任発表の直後、MITがEpstein氏から20年間で約80万ドル（8600万円）の資金を受け取っていたことを声明で明らかにしている。The New York Timesによると、伊藤氏は先週、メディアラボが52万5000ドル（5600万円）、同氏個人の投資ファンドが120万ドル（1億2800万円）をEpstein氏から受け取っていたことを認めたという。

　記事によると、「Epstein氏はMITの公式寄付者データベースで『不適格』とされていたにもかかわらず、メディアラボは同氏から寄付を受け取り続け、資金の使用について同氏の助言を受けていた。また、同氏の寄付を匿名扱いにすることで、一般にも学内にもその全容を開示しないようにしていた」という。

　The New Yorkerの記事はMIT内部の記録や現在と過去のメディアラボの教員や従業員から得た情報を基にしており、Epstein氏がメディアラボ向けに少なくとも750万ドル（約8億円）の寄付を確保し、これにはMicrosoft共同創設者のBill Gates氏からの200万ドル（約2億1000万円）とプライベートエクイティ企業Apollo Global Management の共同創設者で投資家のLeon Black氏からの550万ドル（約5億9000万円）が含まれているとしている。

　Gates氏の広報担当者はThe New Yorkerの取材に対して、「Epstein氏がBill Gates氏に計画的または個人的な寄付を指示したという主張はすべて完全に間違っている」と述べた。

　Apollo Global Managementの広報担当者はコメントの依頼にすぐには応じなかった。Black氏は7月、Epstein氏との関わりの大部分は資産計画や慈善事業の助言、税務戦略に限られており、Apollo Global ManagementはEpstein氏と取引したことがなく、Epstein氏に対する連邦政府の告発で申し立てられた行為に自身は気づいていなかったと述べていた。