中嶋氏の説明を踏まえ、中村氏は「日本のスポーツは海外に比べると50年、もしくは80年は遅れている」との認識を示したうえで、だからこそ今、スポーツテックに進出するべきとの意義を強調した。その際、重視することは、テクノロジーを入れること自体ではなく、「スポーツエンターテイメントをどうやってファンに楽しんでもらうか」ということだという。
満員のサッカースタジアムにいるのは、勝ち負けが大事なファンばかりではなく、そこで売られている食べ物が好きな人もいれば、家族と過ごす時間が欲しくて来ている人もいるし、軽い気持ちで初めて来てみた、という人もいる。「サッカー以外の目的で来ている人たちにも楽しんでもらう仕組みを作るために、人材の流れとともにテクノロジーが入ってくるのは、スポーツだけに限らず普通の流れ」と話した。
また、スポーツにデジタルが本格的に使われ始めた起点について、FCバルセロナで国際部ディレクターを務めた経験を元に、「元々のところは、ヨーロッパのクラブが海外ツアーをやるところから始まった。ずーっと年間通してエンゲージさせて盛り上げて、バーンと来ます、というのが元々の走り」と説明した。
海外スポンサーに営業をかける際、その国には年1回、4日間くらいしか来ないのに莫大な金額を求めるのは「つじつまが合わなすぎる」ということで、その期間だけではなくクラブが本国に戻った後も、いかにその国のファンとつながれるかどうか、ということを重視すべく、デジタルが活用されていったという。
日置氏は、日本は世界と比べて特殊で、「スポーツに体育的な発想がある」と指摘。スポーツを「空間を利用した時間消費型エンターテイメント産業」と定義し、「その空間の中で行われているコンテンツがスポーツである、という発想になったら、デジタル分野を入れるのも当然」との見方を示した。
日置氏はまた、スポーツビジネスを考える上で、「ファンファースト」すなわち「ファンサービスファースト」を考える重要性に触れた。スポーツにかかわるスタートアップ企業は概して、選手のためのデバイスやサービスを考えるケースが多いが、ファンサービスに力を入れることで、チームやスタジアムの価値を大きく向上させることができると話す。「ファンエンゲージメントや設備という点にはまだ相当余地があって、(欧米の先進事例を見習った)タイムマシーン的なビジネスが相当できると思う」。
セッションの最後、中嶋氏は締めの言葉として、「スポーツを入り口とした広範なビジネスを、エキサイトメント(興奮)へと高めるコミュニティが世界に作れるということを、非常にうれしく思う。ここにいらっしゃる関係者の皆さんともコラボレーションしてやっていきたいし、今回の経験を元に来年も新しいチャレンジをしたい」と抱負を述べた。
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