自動運転技術の潜在能力をフルに引き出す--5G対応「C-V2X」の可能性 - (page 2)

Stephen Shankland (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2019年09月09日 07時30分

 ネットワーク機器を車に搭載するコストは200~300ドル(約2万1000円~3万2000円)と推定されているが、5Gが普及すれば自動車メーカーもそのくらいは負担するかもしれない、と話すのは、IHS Markitのアナリスト、Christian Kim氏だ。5Gを組み込んだ車なら、車内でストリーミング動画も見られるし、ファームウェアのアップデートも、交通事故情報も取得できる。C-V2Xはそこで威力を発揮する。DSRCでは得られないメリットだ。

 無線ネットワークの月額料金のせいで出費がかさむとして難色を示すドライバーもいると予想されるので、導入を促すために、自動車メーカーが数年間は無料サービスを提供することになる可能性もある。だが、C-V2XはVerizonやAT&Tといったキャリア各社が運用するネットワークへの接続を必要としない。C-V2Xを搭載した車は、直接の通信が可能になる。

 この直接通信リンクには、キャリアのネットワークを経由しなければならない通信より高速という利点もある。また、5Gネットワークのサービスエリアが当面は限定的で、拡大に時間がかかるという欠点に対処できることにもなり、ドイツのように全高速道路を網羅することが義務付けられている国ではメリットになる。

 もちろん、C-V2Xは、まだ重要な企業からの支持を獲得しなければならない。Googleの親会社Alphabetのもとで自動運転車を開発しているWaymo、General Motors傘下のCruise、そして電気自動車メーカーのTeslaなどがいまだ全面同意に至らず、5GAAへの加盟を見送り続けているからだ。

 Teslaにコメントを求めたが、回答は得られなかった。Waymoは、同社の自動車が「現状のままの道路」を走行する前提で設計しているので、自動運転車に5Gは必要ないとしているが、それ以上のコメントはなかった。Cruiseも同様の構えだ。「当社の全電気式自動運転車は、今の道路、今日のインフラで安全に走行するように設計されている」というのが、担当のMilin Mehta氏の説明だった。

政府を巻き込む

 C-V2X支持派は規制当局も説得しなければならず、これには時間がかかる。1999年、米政府は5.9GHz付近の貴重な周波数帯をDSRCのために割り当てたが、DSRCは標準として古くなりかかっている。現在C-V2X支持派が求めているのは、その周波数帯のおよそ4分の1だ。

 米連邦通信委員会は、C-V2Xのために余地を空ける権利放棄についての意見を審査している段階だ。かつてはDSRCを支持していたGMも、C-V2X標準の支持に回っている。

 7月には、欧州の規制当局もC-V2Xの動向に対する関心を表明した。中国のいくつかの都市も積極的に支持しており、それどころかC-V2Xが最初に実現するのは中国になる可能性すらある。

 規制の現状からも、DSRCは不利になりつつある。トヨタ自動車は、現在もDSRCを支持しているが、2021年から米国で販売する車についてDSRCを組み込む計画を「一時凍結」した。同社広報担当者のNathan Kokes氏によると、5.9GHzの周波数帯が今後も確保されるという確約が必要だからだという。半導体メーカーのNXPも、C-V2Xより成熟しているという理由で、DSRCと、欧州での同等の標準であるpWLANを推している。トヨタ自動車もNXPも、5GAAには加盟していない。

 だが、C-V2Xは、成熟度こそ劣るかもしれないが、強力な技術には違いない。5Gは、数十億台のスマートフォンと、何千何万というモバイルネットワークのアクセスポイントを背景に普及する見込みであり、自動車業界もその広がりと勢いに便乗できるチャンスなのだ。

 IHS MarkitのKim氏は、DSRCの闘いを敗北と呼んでいる。C-V2Xに関心を示す企業は増えつつあり、何といっても通信業界のロビー活動は強力だ。

 1年前の時点では、C-V2XがDSRCより優勢になるかどうか明らかでなかったが、「今では極めて明白だ」とKim氏は言う。

Fordが賛同

 Fordも、Kim氏と同じ結論を早くから出していた。2022年から米国で販売するすべてのモデルにC-V2Xを搭載する予定であり、自動車メーカーのなかでも特に強硬にC-V2Xを支持する立場だ。同社のコネクテッドカープラットフォームおよび製品チームを率いるJovan Zagajac氏によると、FordはDSRCに相当額を投資した末に、C-V2Xの方が高速で信頼性も高く、コストも下がると判断したのだという。

 C-V2Xが普及すれば、最終的には昔ながらの交通信号が都市からなくなる可能性すらあるともZagajac氏は述べた。ただし、規制当局が新しい車についてC-V2Xを義務化し始めるとしても、C-V2Xを搭載しない車の数が膨大であるため、この可能性が実現するのはよほど先のことになりそうだ。

 Zagajac氏によれば、交通信号や道路工事、緊急車両などについてのデータが車のセンサーを補完するようになるので、そうなれば、消防車や救急車が通過するときには車線を空けるよう明瞭な信号を自動運転車に送るといったこともできるという。「C-V2Xは、自動運転技術の潜在能力をフルに引き出すだろう」

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]