携帯電話大手3社の2019年度第1四半期決算が出揃った。ソフトバンクが増収増益を続ける一方、NTTドコモが新料金プランの影響で減収減益、KDDIも増収だが減益となるなど、久しぶりに各社の明暗が分かれた決算となった。
しかし、今後の関心はやはり10月の電気通信事業法改正と、楽天モバイルの新規参入の影響だろう。そこで、各社の通信事業と10月以降の取り組みにフォーカスし、今回の決算を振り返ってみたい。
7月26日に発表されたドコモの第1四半期決算は、売上高が前年同期比1.5%減の1兆1593億円、営業利益が同10.1%減の2787億円と、減収減益の決算となった。
同社が減収減益となったのは、当時の新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」の影響で業績を大幅に落とした2014年度以来となる。今回減収減益となった要因も、やはり分離プランを採用した新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」や、それ以前に導入していた低価格のプラン「シンプルプラン」「docomo with」などの影響を大きく受けたものであるという。
しかし、2014年の時は、新料金プランの加入者が想定を超えるペースで増えるなど、ドコモ側の予想と実際の傾向が大きく異なっていたことなど、ある意味戦略ミスが不振の原因だったといえる。だが今回は、新料金プラン導入もある意味総務省の要請によるところが大きく、もともと通期予想でも減収減益となる計画を打ち出していた。それに加えて新料金プランの加入者も「想定通りだが、若干低かった」と同社代表取締役社長の吉澤和弘氏が話すなど、戦略的には想定通りの内容だったという。
とはいえ、今後新料金プランの加入者は確実に増えることが予想され、その影響が業績に一層強く出てくるだけに、予断を許さない状況にあることは確かだ。しかも、その新料金に関してもう1つ新たな問題が浮上している。
それは、総務省が6月に公表した、10月の電気通信事業法改正に向けた「モバイル市場の競争促進に向けた制度整備(案)」である。この制度案がそのまま通過した場合、いわゆる“2年縛り”の中途解約時の違約金上限が1000円となるほか、通信契約に紐づいた端末値引きはすべて禁止。通信契約に紐づかない端末の値引き額上限も2万円に制限され、新料金プランやそれに合わせて開始した端末購入プログラム「スマホおかえしプログラム」を提供する上での前提条件が大きく崩れてしまう可能性が出てきているのだ。
しかも10月には、楽天モバイルが携帯電話事業者として新規参入する予定だ。かねてより低価格を掲げて参入を打ち出している楽天モバイルが、どのような料金プランを提供するかによって、新料金プランのさらなる見直しを迫られる可能性がある。
そうしたことから、吉澤氏は制度案の影響について「見極めている段階だ」と話しており、楽天モバイルの出方を見た上で対応を進めると説明した。ドコモは初めて分離プランを導入したばかりで経験が浅く、短期間で大幅な見直しを迫られた場合、顧客に大きな混乱をもたらしかねないだけに、当面難しい舵取りを迫られることになりそうだ。
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