――一方で、5月には映像配信業務を監視するオペレーション業務を受託するBtoB事業も発表されました。
監視オペレーションは、ノウハウを蓄積することで、今の体制を構築できました。当初は画面に張り付きで、チェックしたり、リモコンを手にもって、実際にザッピングしながら確認をしたりしていました。この部分を技術革新によって、システム的にチェックできるようになりました。オペレーションセンターでは、機能が正常に動作しているかを自動監視するRPAなども試験導入しています。
システムと人の組み合わせによるサービスとして、かなり精度の高いものを構築できましたので、新たなビジネスモデルとして、映像監視の受託を開始しました。すでに、dTVやDAZNの監視を請け負っています。
オペレーションセンターやカスタマーサポートセンターは、一見するとコストセンターに見られてしまいますが、それで納得しているのでは発展がありません。今までコストセンターだった部門でも収益を生み出すような活動をしていくべきだと考えています。これは、現場の担当者から出たアイデアでもあり、いい流れだと思っています。
――このほかにもBtoB的なビジネスモデルの構想がありますか。
映像配信は、システム的に“配信”だけにフォーカスがあたりがちですが、実際には制作、コンテンツの蓄積、配信、UI・UXと4つのプロセスから成り立っています。この1つ1つのプロセスで技術革新は進んでいて、それぞれがビジネスモデルになる可能性があります。
例えば配信部分は、複数のCDNを組み合わせることで、もっと安定して映像が送れるようになるかもしれません。その仕掛けが構築できれば課題解決ができ、ほかの映像配信会社にも提供できるでしょう。
また、コンテンツは蓄積する際に、多言語へのローカライズを同時にすることで、日本だけでなく、海外にも配信できるようになります。さらにスポーツコンテンツには対戦チーム名、点数、勝敗だけではなく、何時何分に誰がシュートを決めたかという、細かなメタ情報を加えることで、すぐに映像を取り出せ、再利用が促進されるはずです。
――新事業を展開される際は、他社との協業も必要になりそうですね。
これまで以上に積極的に協業していきたいと考えています。NTTぷららは、グループ内でも技術に強く、プログラミングができる社員も多いですし、サービスの構築なども自前で作れる自信があります。ただ、技術革新はものすごいスピードで進んでいて、それをキャッチアップするには協業が必須です。
これは技術部門に留まらず、営業においても同様のことが言えます。以前はNTT東日本、西日本の販路を中心に展開していましたが、現在はほかのISPの方はもちろん、ガス、電気会社といった方にも販売をお願いしています。この部分においてもアライアンスは非常に重要です。
――社長に就任されて、守っていくもの、逆に変えていくものを教えて下さい。
守っていきたいものはNTTぷららの強みです。どんな現場でも自ら手足を動かしてやりぬく「現場力」。これがないと会社が空洞化してしまいます。そして、事業をここまで大きくした「スピード感」と「チャレンジ精神」も強みだと思っています。加えて現場力、チャレンジ精神、スピード感を使って生み出していく「創造力」も大事にしています。この4つは強みとして、さらに強化していきたい。いずれもすでに社員に浸透していますが、ここをさらに高めていきます。
変えていきたいところというか、変えていかなければいけないのは、横串による組織づくりですね。会社の規模が大きくなり、約400人の社員は制作調達、営業、技術など、各部署に分かれているため、より連携を意識できる組織にしていきたいと思っています。
新しい組織づくりには、対話できる環境を整えることが必要だと思っていますので、社員と対話する機会は積極的に作っていきます。社内では働き方改革も進めていますが、在宅勤務やテレワークの環境を整える一方で、どういう働き方改革がのぞまれているのか、社内の有志を集めて、意見交換会も実施しています。
――今後の目標を教えて下さい。
短期的には、NTTドコモグループとして、「ひかりTV for docomo」などドコモ向けのサービスの機能性、品質を向上させ、ドコモのお客様にサービスを使っていただく仕組みづくりを充実させます。また、スマホファーストのサービス形態をしっかりと作っていき、そのサービスをお客様にきちんと届けることが、私たちの役目だと考えています。
コンテンツ面では、オリジナルコンテンツの制作だけでなく、さらなる広がりをもたせたい。今のお客様を見ていると、見るだけでなく何かを体験したい、参加したいという気持ち強いように感じます。そうした思いを汲み取って、私たちが包含して新しいコンテンツを提供できるようにしたいですね。
中期的な視点では、NTTドコモグループとして、映像を中心としたビジネスで2025年度に3000億円の市場を作りたいと考えています。
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