いわゆるハリウッドの大作映画は、あまりハリウッドで作られてはいないことをご存知だろうか。実は、カナダのバンクーバーや英国のロンドン、シンガポールやニュージーランドで制作されている。なぜかというと、例えばバンクーバーのあるカナダ・ブリテッシュコロンビア州では、映画をこの地で製作すれば、経費の何割かを州政府が負担してくれるという税制の優遇措置がある(もちろん、従業員のうち何%がカナダ人であることなどの条件がある)。
一方で、ハリウッド(カリフォルニア州)には、このようなことをする州の予算はない。結果、様々な映画会社はヘッドクオーターをハリウッドに置くが、制作する人の勤務地は海外という図式が出来上がった。そのため、映画会社が会場にも就職相談窓口を設けてはいるが、実際に働く場所の多くは米国以外の国で、デジタルハリウッド大学卒業生で世界的な大手プロダクションで活躍するクリエイターも例にもれず様々な国に散らばっている。
展示会場は、最も多くの人を集めており、数多くの企業の新製品や新サービスなどが発表・展示されていた。
SIGGRAPHのエレクトロニックシアターで上映される作品の中から選ばれた最優秀賞作品は、自動的にアカデミー賞短編アニメ部門にノミネートされる。そのため、例年世界中のプロダクションから素晴らしい作品が多く寄せられる。
2019年は「ファインディング・ニモ」などで知られる大手映画会社Pixarにおいて、自社のアーティストやディレクターの養成を目的としたプログラム「SparkShorts(スパークショーツ)」で女性スタッフ達が自主制作したCGアニメのショートフィルム「Purl(パール)」が、最優秀賞を受賞し、良い意味での印象に残った。
本作は、ディレクターのクリステン・レスター氏の経験をもとに作られ、男性中心の現代社会の問題を9分弱にまとめた作品だ。今後は、動画サービスの「Disney+」で配信する予定とのことで、社会問題をCGアニメーションで発信することで、一般の人にも見てもらえるようになる一例ともいえる。
2020年のSIGGRAPHは、政治の中心地であるワシントンで初開催の予定だ。テーマは「Think Beyond(=いつもの考えを超える。分野を超える。今までと違うことを考える)」。一見すると政治とは無縁のエンタメ業界ではあるが、実はSIGGRAPHにもトランプ政権の影響があった。
例えば、論文の発表者が中国人だったので入国ができなかったり、テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のセミナーの講演予定者だったイラン人が入国できなかったりと、非常に残念なことが散見された。来年は米国の政治の中心地で、どのようなSIGGRAPHが開催されるのか見守っていきたい。
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