シャープ、賞与年4回に--「四半期ごとの部門業績をタイムリーに反映」

AIoTクラウド、COCORO LIFEサービス事業は10月に分社化へ

 シャープ 代表取締役会長兼社長の戴正呉氏は8月6日、社内イントラネットを通じて社長メッセージを配信した。戴会長兼社長は、月1回程度のペースで社長メッセージを配信しているが、前回は7月25日に配信しており、それから2週間を経ずに配信した格好だ。

 今回の社長メッセージのタイトルは「四半期ごとに着実に成果を積み重ね、持続的成長を実現しよう」としており、8月1日からスタートしたAIoT Worldに関する新体制などについて説明している。メッセージの冒頭では、8月1日に発表した2019年度第1四半期業績について触れた。

シャープ 代表取締役会長兼社長の戴正呉氏
シャープ 代表取締役会長兼社長の戴正呉氏

 「この第1四半期は、営業利益率と最終利益率が先期を上回ったものの、利益絶対額は前年同期比で減益となっている。また、2018年度第4四半期に3四半期ぶりに前年同期比増収となった売上高についても、再び減収に転じている。一方、国内の製造業各社においても、当社と同様に厳しい決算発表が相次いでおり、今後も米中貿易摩擦の影響を主因として、世界経済の不透明感が益々強まることが予想され、各社とも一段と厳しい事業運営を余儀なくされる見通しだ。厳しい事業環境下ではあるが、当社は、次の100年に向けた事業ビジョン『8K+5GとAIoTで世界を変える』を掲げ、事業変革に向けたさまざまな施策を展開しているところである。

 また、2020年度の稼働に向けてベトナム新工場を設立するなど、事業リスクに対する打ち手もきめ細かくかつ大胆に講じている。今後もこうした取り組みを全社一丸となってスピードを上げて実行することで、いち早く業績向上を成し遂げ、厳しい事業環境を、飛躍に向けたチャンスへと変えていきたい」と宣言した。

 最初のテーマに挙げたのが「AIoT World」である。7月27日に開催した全社人事評価委員会において、AIoT Worldの早期構築に向けた組織再編について審議し、8月1日付で組織変更を実施したことを報告。各組織の狙いについて説明した。

 「スマートアプライアンス&ソリューション(SAS)事業本部」は、スマートHE事業本部と、グローバルHE事業本部を統合したものだ。HE(Health & Environment)事業は、2018年7月に、国内と海外の事業責任を明確化すべく事業本部を2つに分割。それから1年が経過している。

 「それぞれの管理体制や現地に根づいた企画、開発、さらには販売、マーケティングが定着してきた。その成果を踏まえて、国内および海外の事業部体制を維持しつつ本部を1に再統合することで、国内と海外の連携強化、組織の効率化を図るとともに、AIoT機器やサービスのグローバル展開を加速する」とした。

 また同時に、SAS事業本部傘下に「B2Bソリューション事業統轄」を新設。HE事業におけるB2B事業の拡大も一層加速していくという。「IoT事業本部」は、傘下にプラットフォーム事業部とクラウドソリューション事業部を設置。組織体制の見直しを行った。

 「今後は、AIoTプラットフォームを軸とした他社機器やサービスとの協業、法人向けクラウドソリューションの展開を加速し、B2B事業を大幅に拡大していきたい。加えて、こうした取り組みを一層強化することを狙いに、将来的に他社からの出資獲得を視野に入れ、株式会社AIoTクラウドとして、10月を目途に分社化する予定である」とした。

 一方、COCORO LIFEサービス事業は、10月1日付で、株式会社COCOROソリューションズとして分社化を予定。その準備組織「COCOROプラス準備室」を新設した。今後は新たな体制の下、COCORO MEMBERS会員の拡大や魅力あるスマートライフサービスの創出を加速することになる。

 また、COCORO OFFICEサービス事業では、ビジネスソリューション事業本部と、国内、海外販売会社の連携強化に向けたプロジェクト体制を組成しており、「AIoT World」の本格事業化を加速するために、One SHARPでの事業推進体制の構築を進めているという。

 「今後は、AIoT機器事業、COCORO LIFEサービス事業、COCORO OFFICEサービス事業、AIoTプラットフォーム事業の4つの事業領域において、取り組みのスピードを格段に向上させ、早期に具体的成果につなげてくれることを期待する」と呼びかけた。

賞与は年4回に、社長特別枠も

 2つめテーマは、賞与制度の見直しについてだ。戴会長兼社長は、信賞必罰をさらに徹底するために、年2回の賞与を、年4回にする考えを示していたが、その進捗について説明した。

 ここでは、「当社の持続的成長には、社員一人ひとりがこれまで以上に高い意識を持って業績向上に取り組み、四半期ごとに、着実に前年を上回る成果を上げていくことが重要になる」と前置きし、「こうした考えの下、7月27日に開催した全社人事評価委員会において、当社の業績向上を牽引する役割を担うマネージャー(国内社員および海外出向者)を対象に、現行の賞与制度を3つのポリシーに沿って見直すことを決定した」と報告した。

 1つめのポリシーは、「四半期ごとの部門業績をタイムリーに反映する」とした。今後、年4回の賞与月数を決定することを示し、第1四半期と第3四半期は、当該期の部門業績評価に基づいて、第2四半期と第4四半期は、半期での部門業績評価および個人業績評価に基づいて賞与月数を決定する。「ただし、支給については、年金制度や社員の生活への影響なども考慮し、12月、3月、6月の年3回で行う」という。

 2つめのポリシーは、「部門業績に、より重点を置く」という点だ。賞与月数決定における個人業績評価の反映割合を引き下げ、部門業績評価の反映割合を約5割まで拡大するという。

 そして、3つめのポリシーに、「より厳格な信賞必罰を実施する」ことを掲げた。年間賞与月数の分布は従来通り、最高8カ月から最低1カ月とし、赤字の場合には、部門業績評価に連動する賞与を基本的にゼロとする。ただし、新規事業など、新たな取り組みに積極的にチャレンジした結果、赤字となった場合は、その取り組みを考慮して最終決定するという。

 戴会長兼社長は「これに加え、顕著な業績の達成や、ブランドの向上に大きな貢献を果たすなど、特筆すべき成果をあげた部門に対しては、社長特別枠として、半期で最大0.5カ月の賞与の上乗せを行う」とし、「今回の見直しは、社長就任当初より経営基本方針に掲げている『赤字は絶対に許されない』という方針に沿って、より厳格な信賞必罰を実施し、業績向上に繋がる制度へと変革していくものである。ともに力を合わせ、毎期着実に業績向上を実現していこう」とした。

 なお、一般社員の賞与制度については、制度の詳細設計も含めて、労働組合と協議の上、2020年度より新制度を導入する考えを示したほか、海外ナショナルスタッフについても同様に、来年度以降、制度の見直しを検討する予定を明らかにした。

 3つめのテーマに掲げたのが、「価格設定の重要性」である。ここでは、「値決めは経営である」という、京セラの創業者である稲盛和夫氏の言葉を引用。「値決めは単に売るため、注文を取るためという営業だけの問題ではなく、経営の死命を決する問題である。これは私が非常に感銘を受けた言葉だ。事業責任者には、商品の仕様や特長、競合他社の動向、自社のコストなどを常に念頭に置き、顧客満足度の最大化と、自社利益の最大化の2つが合致する最適な価格を見極めることが求められる」とした。

 「いまは、シャープは、『量から質へ』の方針のもと、利益ある成長を目指しているが、依然として不採算事業が残っている。また、直近では急激な為替変動など、事業環境に大きな変化が生じており、各事業責任者にはいま一度、この価格設定の重要性を再認識してほしい」と要望した。

 戴会長兼社長は先週金曜日に、台湾に移動する飛行機の中で、「価格の弾力性を下げる」というテーマのコラムを読んだことを紹介。「価格競争に陥りにくい構造を作るためには、“商品”“価格”“顧客”の3つの要素が大切であるとしていた。具体的には、商品の独自性(性能、デザイン、品質など)やブランド価値を高め、顧客の信頼を失うような安易な値引きをせずに適正な価格コントロールを徹底し、自社の商品やサービスの優位性を顧客にしっかりと伝え、理解を深めることが重要であると書かれていた。シャープは、B2B事業の拡大に向けた取り組みを加速しているが、この3つの要素のうち、とくに、“顧客”との接点の持ち方は、B2C事業とB2B事業では大きく異なる」とした。

 「B2C事業では、広報活動や宣伝、販促、店頭展示などの強化によって広く顧客の認知を高めることが中心となるが、B2B事業では、長い期間をかけて顧客との人間関係をしっかりと構築し、彼らのニーズを深く理解して、彼らが求めるソリューションを提案していくことが基本。こうして獲得したさまざまな導入事例や導入先顧客の声を広げていくことで、当社ならではの価値をより幅広い顧客に理解してらうことが可能になる。しかし、当社のB2B事業においては、国や地域、事業によって、こうした取り組みに対するレベル差があるのが現状だ。8月3日に開催したAMC(Asia Marketing Center) Meetingにおいて、日本やASEAN、中国、台湾のマーケティング責任者とともに、B2B事業の拡大手法について議論、検討し、全社的なレベルの底上げにも取り組んでいる。今後も、ビジネスソリューション事業本部が持つノウハウを全社に横展開する機会を設けるなど、One SHARPとなって、B2B事業拡大を加速していきたい」と述べた。

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