サムスンとAppleを筆頭とするスマートフォンメーカー各社はここ数年、より高価な製品を提供するようになってきた。だが、消費者は買い換えを先送りするようになっている。最近では、スマートフォンの最高価格帯で競争がいよいよ厳しくなっているというデータも揃い始めた。
Appleとサムスンが先頃発表した4~6月期の決算報告によると、ハイエンドスマートフォン市場は楽観を許さない状況だという。Appleの場合、「iPhone」の売上高が前年比で12%落ち込み、全体の純利益は13%のマイナスを記録した。同社の新モデルでは8万4800円からと最も安価な「iPhone XR」の方が、11万2800円からの「iPhone XS」と12万4800円からの「iPhone XS Max」より売れ行きがいいとアナリストは指摘している。これと同時に、うわさされている9月の「iPhone 11」登場を待って購入を控えている人もいる。
一方のサムスンは、スマートフォン全体の売上高が7%増の24兆3000億ウォン(約2兆1000億円)となり、Strategy Analyticsによると世界スマートフォン市場のシェアも2ポイント上昇の22%となってリードを広げたという。だが、その売り上げの大部分は、同社の廉価モデル「Galaxy A」シリーズによるものだ。モバイル事業の営業利益は前年比42%減で、749.99ドル(約8万円)の「Galaxy S10e」から始まるフラッグシップモデル「Galaxy S」シリーズの売り上げは落ち込んだ。その原因は、「『Galaxy S10』の販売に弾みがつかず、高額製品の需要が伸び悩んだことにある」とサムスンは説明している。
何らかの形で財務上の責任を担った経験があるなら、こうした結果にも驚くことはないだろう。スマートフォンの価格は上がり続けており、買い換えの頻度は減っている。1000ドルの端末を買って、思いつくオプション機能がひととおり何でも揃っていれば、ユーザーはそれで満足して以前より長く使い続けるようになってきたのだ。米国では、消費者が次のモデルに買い換えるまでの間隔が、2年から3年に延びている。同時に、ソフトウェアのアップデートで古い端末でも新しく感じられるようになったし、ハードウェアの設計は1年ごとにそれほど大きくは変わらなくなった。また、高価なフラッグシップモデルにしか搭載されていなかった機能が、安価なモデルにも採用されるようになったという背景もある。
そうなれば、多くのユーザーにとってはもう十分なのだ。
「イノベーションは、ハードウェア側よりソフトウェア側の方で進んでいる。デバイスの寿命が延びているのは、それだけ機能が充実しているからだ」。Creative Strategiesのアナリスト、Carolina Milanesi氏はこう分析する。
スマートフォンはどんどん高価になっているかもしれないが、ユーザーがそれを購入しているとは限らない。Appleとサムスンの場合、フラッグシップでも安価な方が多くのユーザーを引き付けている。
米CNETのScott Stein記者は、iPhone XRを「価格込みで考えればベストのiPhone」と評し、「iPhone XSとほとんど同じ機能が100ドル以上も安く」手に入ると語った。また、同じく米CNETのJessica Dolcourt記者は、Galaxy S10eを「小型の端末が好きで、安価なモデルを求めているユーザーにとっては夢の1台」と呼んでいる。
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