東京地下鉄(東京メトロ)と日本電信電話(NTT)は7月29日、「東京の魅力・活力」の共創についての協業に合意したと発表した。鉄道インフラの保守・点検や、移動の円滑性向上、新たなモビリティサービスの実現に向け、両社で連携する。
インフラ分野については、IoT技術の活用により状態基準保全(CBM)の概念を採用する。東京メトロ 代表取締役社長の山村明義氏は、「現在のメンテナンスでは偶発的故障の予期が困難、設備本来の寿命に満たない時期の修繕・更新の可能性、現場社員の経験や知識に頼ったメンテナンスなど、さまざまな課題がある」と説明した。
これに対し、東京メトロが持つこれまでの鉄道保全のノウハウと、NTTグループが持つIoT技術やAIなどによるデジタルメンテナンスソリューションを融合。メンテナンスの改善を図る。山村氏は、「これまでの鉄道保全のノウハウをベースに、IoT技術やAI、ビッグデータ分析などを活用し、安全・安定性向上を目指す」と説明した。
移動の円滑性向上については、山村氏は「2020年東京オリンピック・パラリンピック開催時における列車の混雑緩和が課題となっている」と説明。これに対し、各駅の出入場データや、トンネル内に設置された携帯電話回線アクセスポイントなどのビッグデータを活用。駅間の混雑度実測データや予測データを算出し、列車の増発や駅係員の増配置、旅客へ向けた混雑状況の発信をすることで、駅や列車の混雑緩和を図る。
新たなモビリティサービスについては、ドコモグループが提供するシェアサイクルと、東京メトロの地下鉄路線網を連携。出発地から駅までの移動や、目的地での移動などをシームレスに連携したサービスを提供し、通勤需要や観光需要などに応える。NTT 代表取締役社長の澤田純氏は、「メトロの駅を起点としたモビリティのネットワークを東京に構築し、人々の健康や、町並みの向上に資するようなインフラを作り上げたい」と語った。
東京メトロでは、3月に発表した中期経営計画「東京メトロプラン2021」において、「安心の提供」「持続的な成長の実現」「東京の魅力・活力の共創」をキーワードに掲げ、同社グループが保有する経営資源と外部のアイデアを組み合わせた、新たな事業価値の創出を目指している。
また、NTTグループでは、2018年11月に発表した中期経営計画「Your Value Partner 2025」において、同社グループが持つ技術やソリューションを活用し、スマートワールドの実現を目指すことを掲げている。
東京メトロとNTTではこれまで、AIを用いて顧客満足度向上に向けた実証実験などを共同で進めてきたという。両社は今回、2020年東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルパートナーとして、両社が協業できる分野を模索。それぞれが持つデータを活用し、東京の魅力・活力の共創に向けて各施策を進めることで合意した。
山村氏と澤田氏は、今回発表した内容について具体的な取り組みについては決定はしていないものの、将来的には混雑度に関するJRや他私鉄との連携や、海外へのシステム輸出なども検討するとしている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス