イタンジは7月24日、ブロックチェーンを利用した電子契約サービス「電子契約くん」を提供開始すると発表した。見据えるのは、賃貸契約のワンストップ化。10月に国土交通省が開始する予定の社会実験、オンライン上で賃貸借契約ができる電子契約くんと、9月に開始するB2C向けサービス、セルフ内見型新賃貸サイトまであわせて、内見から、申込み、契約までのワンストップ化を目指す。
電子契約くんは、国土交通省の推進する社会実験への対応を見据えたブロックチェーンを利用する安全な電子契約サービス。従来の不動産の賃貸借契約では、宅建士による「対面」での契約に関する重要事項説明と重要事項説明書(35条書面)と賃貸借契約書(37条書面)の交付が義務付けられていた。
電子契約くんでは、将来の規制制度改革を見据え、インターネットを経由したテレビ会議と、電子サインサービスを利用した電子契約システムにより、賃貸借契約の電子化を実現。重要事項説明書と賃貸借契約書はPDF形式で各管理会社が利用する書面をアップロードできるため、入居希望者は不動産会社に来店することなく、賃貸契約が完了する。
イタンジ 代表取締役の野口真平氏は「7月23日に発表された住友商事とbitFlyer Blockchainの記事を見て、(自分たちが)発表する前日に別会社が発表するとは思わなかった。ただ、この分野は注目度が高いことがわかり、うれしく思った」と発表会冒頭にコメント。さらに「電子契約くんは、名前がチャーミングなため、すごくなさそうと思われるかもしれないが、そうではない。ブロックチェーンを活用することで、賃貸申し込み電子契約はもちろん、火災保険や家賃保証会社、インフラ契約など、賃貸取引に関わる各事業者が整合性のある同一データでつながことができる」と、将来の姿を話した。
ブロックチェーン上で契約をプログラム化する仕組み(スマートコントラクト)を基盤としているため、安全性の高い契約手続きを実現。電子サイン手続きには、弁護士ドットコムが提供する電子契約サービスの「クラウドサイン」や、サイバートラストのリモート署名基盤を連携した「iTrust サービス」を利用し、導入不動産管理会社にあわせたパートナー体制を整える。
ゲストとして発表会に登場した弁護士ドットコム 取締役クラウドサイン事業部長の橘大地氏は「日本に根強く残るハンコ文化だが、ものすごい社会課題があると考えている。契約交渉はメールなどでデジタル化されているが、締結段階になると書類の印刷、署名、押印、割印が必要になり、取引に時間がかかり、円滑に進められない。さらに、はんこが安心なものならいいが、はんこを悪用した事件なども多い。スピードもさることながら、印鑑の社会制度はこのままでいいのか問われている」と現状の課題を話した。
一方、2015年にリリースしたクラウドサインは、7月現在で導入社数は5万件を突破している。「スタートアップ、大手企業の両方に導入が進んでおり、利便性、安全性を実現している」(橘氏)とした。
イタンジの野口氏は「賃貸電子化の流れは生産人口の減少と関係している。不動産業界で働いている年齢層は高い。少子高齢化で働き手が減少するあおりをいち早く受ける。イタンジでは5年前から業務支援システムなどの導入を進めているが、この5年間で導入先企業の考え方は急速に変わった。IT化は免れない状況になりつつある」と労働人口減少の面からも電子契約の重要性を訴えた。
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