人の動きに高速追従するパナソニックのプロジェクションマッピングシステムが、アトラクションや演劇、コンサートパフォーマンスに彩りを加える。7月24日、開催を1年後に控えた「東京2020オリンピック1年前セレモニー」のオープニングパフォーマンスで、高速追従のプロジェクションマッピングを使用。新体操の選手である坪井保菜美さんのパフォーマンスに合わせ、映像を投影する、イノベーティブな演出を披露した。
プロジェクターを用いたプロジェクションマッピングは、イベントや展示会で注目を集める演出の1つ。しかし、最近では、静止物へのマッピングは成熟期と見られており、動体へのマッピング演出が求められているという。
パナソニックでは、2015年頃から、動体マッピングができるプロジェクターの開発をスタート。従来、外部PCが担っていた演算部をプロジェクターに内蔵し、コンパクトかつ、高速処理ができる高速プロジェクターを作り上げた。
高速追従プロジェクションマッピングシステムは、高速プロジェクターとセンサー部となる赤外線ライト、高速度カメラから構成。一般のプロジェクターが1秒間に60枚の画像を表示するのに対し、高速プロジェクターは、1秒間に1920枚の画像を表示する、高速追従性能を確保。動きに対して、遅れることなく自然な追従を実現する。
坪井選手が手に赤外線を反射するマーカーを持つことで、位置情報を検出し、追従する映像を投影。高速度カメラの撮影画像からマーカーの位置は1000分の1秒で算出でき、マーカーの位置情報を元に1920fpsでコンテンツを瞬時に投写する。
高速プロジェクターは、従来機に比べ10分の1以下となる0.0016秒の応答時間を実現。解像度は1920×1080ピクセルのフルHDで、明るさは2万7000ルーメン。レンズによって異なるが、5~12メートルの距離で100~300インチの投写が可能だ。マーカーは同時に2つまで検出できる。
オープニングパフォーマンスでは、4台の高速プロジェクターを用意。実際には3台を使って表示し、1台はバックアップ。メッシュスクリーンの後ろに坪井選手がスタンバイすることで、スクリーンに映像を投写すると同時に、坪井選手の動きも見られる演出になっていた。
パナソニックでは3月に、オリンピック500日前イベントとして、同様のシステムを展開。ダンサーであるケント・モリさんが手にセンサーを持ち、動体プロジェクトマッピングのダンスを披露したほか、卓球ボールにマーカーを装着し、ボールが動くことで、背景の映像が変わったり、ボール自体にもプロジェクションマッピングを施すことで色が変わったりする演出も見せた。
また、サッカーのパフォーマンスでは、高速プロジェクターを天吊し、床面に投写。サッカーボールにマーカーをつけることで、ボールが移動しても追従する映像も実現したという。
パナソニック コネクティッドソリューションズ社メディアエンターテインメント事業部ビジネスソリューションセンタープロジェクト推進部主幹の浅井宏建氏は「これまでは決まった映像に対し、ダンサーなどの出演者が練習をして映像に合わせていた。高速追従プロジェクションマッピングを使えば、ダンサーは自由に動け、映像がそれについていける。演出の仕方を変えられる」と、メリットを話した。
コンテンツは、デジタルアート集団のMoment Factory(モーメント ファクトリー)が担当。Co-Founding Partner Chief Innovation OfficerのDominic Audet(ドミニク・オーデット)氏は「私たちは2年前に渋谷に東京オフィスをオープンし、当初からパナソニックの開発チームとコラボレーションしている。なかでも拡張型スポーツコンテンツでコラボレーションしているが、課題はプロジェクターの遅延。パナソニックの開発チームとパイプラインを築くことで、私たちがコンテンツを作る、パナソニックがセンサーや高速追従システムを作ってきた。コラボレーションを続けながら、今回のパフォーマンスを実現できた」とコンテンツ側からの意見を述べた。
今後は、映像表示技術と動体認識技術の進化にあわせ、2022年をメドに、映像が空間とシンクロする、究極の視覚演出を実現したいとしている。
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