四谷:たとえば、どんなことをやりたいと思っていたんですか?
安田:記事コンテンツ以外に考えていたのは、ツール、データベース、マッチング、動画、クイズ、検定、あたりかなぁ。それらのチャネルごとに最適な形で情報提供しつつ、そこからデータや定性的なフィードバックを得たら即座に改善していく仕組みを作りたいな、と思っていましたが、なかなか手が回らなかったです。
四谷:まだまだ、Web担でやりたいことはいっぱいあったんですね。
安田:そうね。ただ、12年前と今では、あらゆる状況が変わっちゃったから。12年前のWeb担当者って、本当は、情シスや広報が本拠地なのに、Webをやりたいから自発的に兼務していたって人が結構いたんですよ。でも、今のWeb担当者って、配属されて来る人が多い。12年前と今のWeb担当者は、明らかにキャラクターが違うの。つまり、必然的に、Web担の読者層も、大きく変わったと言えるわけ。
四谷:確かにそうですね。
安田:Webというものの位置付けもこの12年で大きく変わった。昔はWebサイトがありさえすれば良かったけど、今のWebは企業の広報、マーケティング、コミュニケーションにまたがる戦略の一部。それに伴って、Web担当者として必要な記事も、個々の実務をうまく回すための記事だけでなく、組織や社会の中でどう仕事を進めていくべきかという記事も必要になっている。
四谷:実際、今のWeb担の記事も、Webばっかりってわけじゃないですもんね。
安田:これは、企業にとってWebが重要になった結果、1人や1部署ではできない規模の仕事ができるようになったという意味で良いことなんですが、じゃぁ、Web担だけが、Web担を作った当時の考え方のままでやっていいかというと、あかんやろう、と。
四谷:「Webが変わり、Web担当者も変わった。私たちも変わらないといけない」ってことですね。
安田:もうひとつ、12年前との大きな違いは、個人メディアや企業のオウンドメディアなど、我々のような編集のプロが介在しないWebメディアが爆発的に増えた、ということ。
四谷:増えましたよね。ある意味、ライバルメディアが一気に増えたような状態。
安田:ちょっと流れを振り返ると、まず、2004年頃にブログが世の中に出てきて、その後、ソーシャルメディアという概念が一般化していきます。その流れを受けて、オウンドメディアが出てきました。そういうものそれぞれで、その道のプロフェッショナルが直接コンテンツを出すようになって、場合によっては、我々メディアを凌駕するような存在になっているものもあります。
四谷:ただ、特に個人ブログなんかがそうだけど、急に更新が止まっちゃったり、エビデンスが甘くてフェイクニュース化してしまう、ということもままあったりするんですよね。
安田:そう。こうなると、内容は良くても、役に立つソースとしては頼りづらい。そこが、我々と大きな違い。我々はこれまで12年間、「Web担当者」をキーワードに現場の担当者に役立つ情報を発信し続けてきたんだけど、その姿勢はこれからも変わらないということは、様々なメディアが乱立する中で、強くアピールしなくちゃいけないと思います。
四谷:ほんとにそうですよね。ところで、安田さん、次の編集長は、なぜ私だったんですか? いい機会だから、ここで聞いておきたいです(笑)。
安田:なんでだったかなぁ。
四谷:マスコミ未経験で、30歳でインプレスに転職してきたから、まだ前職の方がキャリアとしては長いんですよ。
安田:説明しづらいんだけど、「あ、いける、大丈夫」って、思ったのよ。この人は、自分の理想をきちんと形にできる人だ、と感じたの。そもそも、僕がやってきたことを引き継いでほしいとは思っていないしね。我々は年齢がひと回り違いますが、そうなると、社会の中での位置も1世代違う。Webやインターネットに対する意識だけでなく、あらゆる場面で、そもそもの視点が異なります。だからこそ、僕とは違う方向にWeb担を引っ張って行けるはず、と思ったわけです。
四谷:なんだか緊張してきたなぁ。
安田:ただ、年齢だけが決め手じゃないよ。今のWeb担当者って、Webに関するスキルだけ身に付ければいいわけじゃなく、組織の中での立ち位置やふるまい方、他部署とどう連携するかといったビジネス的なスキルも必要ですよね。四谷さんは、前職は企業でWeb担当者をやっていた経験があるというのは大きな強み。その上で、今の現場世代の人と、年齢的にも意識的にも近いというのがポイントかな。
四谷:この後は、安田さんはどうされるんですか?
安田:具体的なことは決めてないんだよね。ただ、まだしばらくは、編集統括としてWeb担当者Forumと、ネットショップ担当者Forumに関わっていきます。四谷さん、瀧川(ネットショップ担当者Forum編集長)さんが、純粋に編集長業務に集中できるようにするための業務フロー作りや、Web担全体の制作効率を上げるための仕組みづくりなど、裏側からみんなをバックアップしていきますよ。
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