グーグルは7月10日、日本向けのAI人材育成および技術活用支援プログラムとして「Google AI for Japan」を発表した。「日本の次世代AI人材の育成支援」「日本におけるAI研究への貢献」「日本のビジネスや社会的課題の解決におけるAI活用支援」という3種類の取り組みに注力する。
まず日本の次世代AI人材の育成支援の取り組みとして、新たに研究助成金プログラムを開始し、AI領域の研究開発の加速を促す。今回6人のAI関連の研究者に対して5万ドルずつ提供する。支援は2020年までの2年間で、追加支援のオプションも用意している。助成金を受けた研究および研究者は次の通り。
このほかにもAI人材育成支援のため、フェローシップ・インターンシッププログラム、教材・関連ツールを提供する。この領域では、すでに東京大学にてAIの授業を支援し、東京オフィスでグーグルのAI研究者やエンジニアと共同で研究するフェローシップ、インターンシップを展開。技術者向けには機械学習の無償トレーニングプログラム「ML Study Jams」、機械学習に特化したイベント「Google Developers ML Summit」を開催。
子ども向けにも、文部科学省、経済産業省、総務省が9月に実施する「未来の学び プログラミング教育推進月間」に協力企業として参加し、教員が簡単にAIの仕組みや開発を授業に取り入れられるような教材も提供する。
これまでの日本におけるAI研究への貢献としては、東京オフィスのAI研究者のチームが、「強化学習の基礎研究」「日本語の高低アクセントのための音声モデリング」「ニューラル機械翻訳」などを研究し、10本以上の論文を発表したほか、グーグルが4月に発表した「End-to-Endの音声翻訳モデル」の開発に、日本の研究者も貢献したなどの成果があったとしている。ほかにも、国立情報学研究所などの学術機関との共同研究も実施しており、今後も大学や研究組織とのコラボレーションでAI研究を進めていく。
グーグルは、AIを活用した公募型の課題解決プログラム「AI Impact Challenge」を実施するなど、グローバルでAIの普及・定着に向けてAIを活用した社会問題解決の取り組みを推進している。3つ目の取り組みはそこにつながるものであり、国内ではこれまでに福島県南相馬市において、グーグルがオープンソース化した機械学習プラットフォームの「TensorFlow」を利用し、ソニーとZMPの合弁会社であるエアロセンスと協力して汚染土壌の仮置き場の安全性管理システムを構築した事例がある。
AI活用を支援する取り組みとしては、TensorFlowのほかにも機械学習モデルの構築を自動化するソフトウェアスイート「Google Cloud AutoML」、クラウドサービスとして提供する機械学習向けASIC「Cloud TPU」などのAI関連ツールを提供するとともに、開発者や事業者向けにトレーニングやサポートも実施する。
ビジネス面でも、AI活用のための施設として「Advanced Solutions Lab(ASL)」を開設し、日本の企業がグーグルのAIや機械学習エキスパートと協力してAIによるビジネスの課題解決に取り組めるように支援している。
同社のAI事業を統括するGoogle AI統括 Jeff Dean(ジェフ・ディーン)氏は、プログラムを通じて「日本における次世代AI人材の育成、AIをうまくビジネスや問題解決に役立てるための能力開発、AI研究そのものに対する貢献を行っていきたい」と話す。
「研究者や開発者、ビジネス向けのイノベーションや、社会問題の解決にAIを活用してもらいたい。AIは、ヘルスケア、農業、災害対策、文化の保全など社会にポジティブなインパクトを与えている。日本でも、AIを使って社会的な問題に対処できる機会があると確信している」(Dean氏)
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