ソフトバンクは7月2日、法人事業に関する戦略説明会を開催した。これまでの法人事業に関する取り組みを振り返るとともに、新たな戦略も明らかにした。
同社の代表取締役社長執行役員 兼 CEOである宮内謙氏によれば、現在ソフトバンクは、コアとなる通信事業のほか、連結子会社化したヤフー、そしてソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資企業などと合弁で展開する新事業領域の3つを事業成長の柱として位置付けている。中でも大きな成長の可能性を秘めているのが法人事業だと考えているという。
その理由について宮内氏は、2020年の商用サービスを予定している「5G」の存在を挙げる。5Gの登場によってIoTの利用が急速に広がり、それを活用して収集したビッグデータ、そしてデータ処理を担うAIという、3つのテクノロジーが本格的に動き出すことによって、大きなビジネスチャンスが生まれるというのだ。
宮内氏はさらに、そうした新しいテクノロジーの登場によって「あらゆる産業が再定義される」と話す。スマートフォンの普及が多くのビジネスを生み出したように、新たなテクノロジーでデジタライゼーションがモノにまで広まることで、今後既存のあらゆる産業で新しいビジネスが生まれるとしている。
そして、デジタライゼーションは、社会課題の解決にもつながると宮内氏は説明。日本では労働人口の低下やインフラの老朽化など多くの社会課題を抱えているが、それらの多くはデジタライゼーションによって解決できると説明。社会課題の解決を企業と一緒に推進することで「数年で営業利益を倍増できるんじゃなかろうか」と宮内氏は自信を示した。
続いて、同社代表取締役副社長執行役員 兼 COOの今井康之氏が、ソフトバンクの法人事業の概況と今後の戦略について説明。ソフトバンクの法人事業は、旧国鉄が設立した固定通信会社の日本テレコムを、2004年に現在のソフトバンクグループが買収して設立されたソフトバンクテレコムが基盤となっており、このネットワークインフラを強みとして法人事業の開拓を進めてきたという。
今井氏が「買収直後は収益が非常に大変だった」と話す通り、日本テレコム買収当時は500億円を超える赤字だったとのこと。だが、高品質で価格が安い固定電話サービス「おとくライン」を提供することで、値下げが進まなかった固定電話料金引き下げを実現し、150万回線を獲得するなど、企業の課題解決成果に取り組んできたという。
その結果、2018年には法人事業の売上高が6205億円、営業利益が763億円となるまで成果を挙げ、成長事業へと転換してきたとのこと。そうしたことから今井氏は、「企業の課題を解決すること」を法人事業のミッションとし、顧客目線で悩みを解決することを重視したビジネスを推し進めていくという。
そして企業課題の解決は、社会課題の解決にもつながり、そのために必要なのは業界のキープレーヤーとなるパートナー企業との「共創」だと今井氏は話す。ソフトバンクは売上高1000億円以上の大企業のうち、94%と何らかの取引があることから、そのつながりを生かしてパートナー企業が持つノウハウと、ソフトバンクが持つ強みを生かすことで、エンドユーザーに価値を与える共創プロジェクトを展開していきたいとしている。
ソフトバンクが持つ強みとなるのが、データ収集から分析、効果測定から課金・決済まで、今後主流となるB2B2Cのビジネスを一気通貫で完結できるプラットフォームを持つこと。そしてもう1つの強みが、親会社となるソフトバンクグループの投資先企業で、先進技術を持つ企業とプロダクトを作り上げていることだと今井氏は話す。
さらに今井氏は、そうした社会課題解決に向けた専門の組織として「デジタルトランスフォーメーション本部」を2年前に設立したことを公表。営業部隊を中心に選出した選りすぐりの120名を集め、「モバイルの販売を止めて新事業に専念させるようにした」(今井氏)。今後企業のトップと交渉しながら、8割近くが進んでいないという国内企業のデジタル化を推し進め、この組織からソフトバンクの次の柱となる事業を創出したいとしている。
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