ソフトバンクが法人事業戦略を発表--専門組織の多様なアイデアで“企業課題”を解決 - (page 2)

配送マッチングでネットスーパーの夜間配送を実現

 そのデジタルトランスフォーメーション本部の本部長である河西慎太郎氏からは、現在取り組んでいる具体的なプロダクトの内容が明らかにされた。この組織が設立してから2年間、社会課題解決のため450の新規事業アイデアを考え、その中から現在35の案件を進めているとのことだ。

デジタルトランスフォーメーション本部 本部長の河西慎太郎氏
デジタルトランスフォーメーション本部 本部長の河西慎太郎氏

 さらにそのうち、17の案件は「2020年に向けてマネタイズの準備ができている」と河西氏。中でも非常に力を入れている取り組みの1つとして発表されたのが、イオン九州と実施した、ネットスーパーの夜間配送を実現するための実証実験だ。

 河西氏によると、新規事業アイデアの大半は、日本の最も大きな課題として挙げられる労働人口の低下の解決に向けたものだという。そのため、現在は「小売・流通」「不動産・建設」「サービス・観光」「ヘルスケア」の4分野に注力しているとのこと。

 当初は販売手法を変革するためのプロジェクトを考えていたそうだが、各分野のキープレーヤーとなる企業と話をしていると、全ての企業に欠かせない要素が物流であり、物流業界が抱える課題こそが、成長を鈍化させている要因になることを知り「考えが浅はかだった」と河西氏は話す。

企業の課題解決には、その根幹を担う物流業界の課題解決が重要になっているという
企業の課題解決には、その根幹を担う物流業界の課題解決が重要になっているという

 そこで、物流のデジタライゼーションを進めることで、社会課題を解決することに注力。物流、特に顧客に商品を渡すラストワンマイルの配送に関しては、ECの伸びで急速に需要が高まる一方、世帯構成が変化し単身世帯や共働き世帯が増えたことで、日中に荷物を受け取ることができず再配達率が上昇。その一方でドライバーは減少傾向にあり、1人当たりの取り扱い荷物が10年間で2.4倍に拡大しているのが現状だという。

 それに加えて、運送会社の配送キャパシティは固定化されており、荷物の増加や減少に柔軟に対応できず余剰コストが発生しやすいことから、ビジネスの圧迫につながりやすいという。そこでソフトバンクでは、デジタライゼーションによってラストワンマイルの部分を、AIやIoTを活用して最適化することを考えているという。その中でも、配送拠点からの配送業務をマッチングする取り組みとして実施したのが、今回のイオン九州との取り組みになる。

 これは、ネットスーパーが共働き世帯から需要があるにもかかわらず、配送時間に家にいないがために利用が進まないことを解決する取り組み。店舗側でも配送コストの上昇で、配送時間の時間延長がしづらい現状があることから、それを解決するためCBcloudという企業の配送業マッチングサービス「PickGo」を活用した。ドライバーを必要な時、必要な数だけ確保することで配送コストを削減しながら、配送時間を20時から23時まで伸ばす実証実験を実施したという。

イオン九州とネットスーパーの夜間配送の実証実験を実施。配送業のマッチングサービス「PickGo」の活用で、コストを抑えながら夜間帯のドライバー確保を実現したという
イオン九州とネットスーパーの夜間配送の実証実験を実施。配送業のマッチングサービス「PickGo」の活用で、コストを抑えながら夜間帯のドライバー確保を実現したという

 実証実験の成果は「いま確認しているところ」(河西氏)とのことだが、この実証実験が成功すれば、それをモデルケースとして全国のイオングループへの横展開を進めていきたいとのこと。河西氏は「今後も新たな取り組みを発表していきたい」と話し、将来的にはバイクや自転車のマッチング、さらにはドローンや自動運転などを活用した配送の仕組み作りなどにも取り組んでいきたいとしている。

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