KDDIは6月27日、法人向けイベント「KDDI 5G SUMMIT 2019」を開催。その基調講演に同社代表取締役社長の高橋誠氏が登壇し、B2Bビジネスを中心とした同社の5Gに関する取り組みについて説明した。
高橋氏は、日本政府が提唱している未来社会のコンセプト「Society 5.0」に向けた取り組みを進める上で、5Gは重要なネットワークインフラになるとともに、5Gによってデジタルトランスフォーメーションが加速すると説明。2019年のラグビーW杯に合わせて5Gのトライアルを実施し、2020年3月に商用サービスを開始することを改めて説明した。
またKDDIは、2019年4月に実施された5G用の周波数割り当てに向け、「アグレッシブなプランを打ち出した」(高橋氏)ことで、世界的に使用されている帯域を獲得することに成功。そのプランを実現するため今後4万局を超える5G基地局を作っていくとし、「令和元年は5Gのスタートの年になる」と意気込みを語った。
ただし、サービス開始当初の5Gは、4Gのネットワークを活用しながら5Gを展開する、ノンスタンドアローン(NSA)と呼ばれる運用での展開となり、コアネットワークも5Gで展開するスタンドアローン(SA)と比べ5Gの能力をフルに発揮できるわけではない。それに対して高橋氏は、5GはEV(電気自動車)、NSAは4Gと5Gのハイブリッド車であると説明。ハイブリッド車が燃費が良く、長く走行できるのと同じように、NSAのネットワークも5Gの活用によって、4Gより一層の高速大容量通信ができるとアピールした。
そこでKDDIは、NSAの特徴を生かして2019年夏に定額制の料金プラン「auデータMAXプラン」を提供するとのこと。高橋氏は「従量制と定額制ではビジネスの作り方がガラッと変わる。定額制はどれだけネットワークを使ってもフリーな世界」と話し、5Gでは通信料金の定額制を前提としたサービス設計をしていく考えを示した。
また5Gでは、IoTの広がりによってスマートフォンだけでなくあらゆるモノに通信が入り込んでいくことを想定していると高橋氏は話す。それだけに「正直言って、B2Bの世界では通信料は儲からない。値下げのしようがないくらい安くなる」と考えているようで、その中でいかにビジネスを作り上げるかが、重要になると話す。
続いて、5Gの先行事例について、2019年4月より商用サービスを開始している韓国の携帯電話事業者LGユープラスの副社長であるチェ・ジュシク氏が登壇して説明した。チェ氏によると、同社では2017年から5Gの準備を開始し、他社に先駆けて5Gのネットワーク構築を進めてきたとのこと。
サービス開始当初は品質などで多くの不満が挙げられていたものの、時間が経つにつれ評価が高まり、「LTEでは契約数100万人の到達まで3カ月かかっていたが、5Gでは2カ月で超えた」(チェ氏)という。今後は人口カバー率93.3%を目指すほか、現在2機種となる5G対応スマートフォンが、5機種に増えることで2019年末には400〜500万契約の獲得を目指したいとしている。
高橋氏は、5Gによって今後顧客との関係性が再構築され、最近話題となっている定額制のサブスクリプション型ビジネスから、リカーリング(循環)型のビジネスへ移行していくのではないかと予想する。5Gが介在し、あらゆるビジネスにIoT機器が入り込むことでデータを取得できるようになり、それをAIで分析・活用することで顧客を深く知り、新しい価値を提案するという循環を作り出せるようになる、というのがその理由となるようだ。
特に日本企業は100年以上続く企業が多く、顧客と長い信頼関係を構築していることから、リカーリング型のビジネスがマッチするのではないかと高橋氏は話す。そのため、5Gによるデジタルトランスフォーメーションこそが日本企業の持続的成長につながるとしており、それを実現するためのキーワードとして、「トラステッド」と「イノベーティブ」の2つを挙げた。
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