前者に関して、KDDIではトヨタ自動車のテレマティクスサービス向け通信機能を提供するなど、IoT領域で20年間サービスを提供してきた実績があるという強みを持つ。現在はそうした信頼あるネットワークの取り組みを世界に広げるべく、トヨタ自動車とコネクテッドカー向けのグローバル通信プラットフォームを展開するほか、日立製作所や東芝と「IoT世界基盤」を構築するなどの取り組みも進めているという。
また後者に関しては、傘下のソラコムが展開しているIoT関連の取り組みを紹介。それに加えて、ソラコムが強みを持つクラウド技術を生かし、コアネットワークの仮想化の先を行く、パブリッククラウドでコアネットワークの機能を実現する技術開発を、共同で進めていることをアピールした。
その一方で、高橋氏は「1G、2Gの時代は全て自分達で用意してきたが、5Gでは自分達で作る時代ではなくなる」と、通信会社同士の競争と協調という新たな関係が必要になると説明。サービス領域では競争しながらも、ネットワークではコスト効率の悪いエリアを共同で整備するなど、必要に応じて協力していくべきだと語る。
また競争と協調は、ビジネスプラットフォームでも求められると高橋氏は説明。特に今後は通信だけでなく、特定の領域に特化したプラットフォームに関して、協力関係が必要になってくると話す。その事例の1つとして高橋氏はスマートドローンのプラットフォームを挙げ、世界的なスマートドローンプラットフォームの発展に向け、LGユープラスと業務提携をしたことを明らかにした。
さらに講演では、イノベーション分野に関しても新しい取り組みをいくつか発表した。1つはNVIDIAとの提携で、KDDIが東京・虎ノ門で展開しているビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」にNVIDIAのGPUが導入されるという。これにより、参加しているスタートアップ企業などは、5GとAIを活用したアプリを開発しやすくなるほか、NVIDIAのエンジニアとの接点を作りやすくする環境も用意されるとのことだ。
2つ目は、そのKDDI DIGITAL GATEを2019年秋より、大阪と沖縄にも拡大すること。KDDIではさまざまな自治体と、5Gを生かした地方創生に向けた取り組みを進めているが、イノベーションの拠点を地方に拠点を拡大し、新しいビジネスソリューションを開拓することで、地方創生や社会課題解決への取り組みに一層力を入れていく狙いがあるようだ。
そして3つ目は、KDDI DIGITAL GATEと、日本航空が展開するオープンイノベーション拠点「JAL Innovation Lab」との提携を強化すること。新たに5Gと他のテクノロジーを融合したサービス開発や、空港などでの5Gの実用化を目指したビジネスの検証などに取り組んでいくという。
こうした提携は、高橋氏が社長に就任して以降、他社の中期計画にKDDIのアセットを加えて実現できることを、KDDI DIGITAL GATEを通じて実現するよう働きかけてきたことが大きいという。すでに両社のラボでは共同で実証実験を実施するなどさまざまな取り組みを進めているが、日本航空側は、5Gのインフラや端末の普及、特定エリアへの早期のアンテナ設置、他のキーテクノジーと融合した新サービス提供などを要望している。そのためには、一層の連携が必要と判断して今回の提携に至ったのだという。
最後に高橋氏は、5GやIoT、ビッグデータなどについて「(技術だけを)しゃべる人は信じちゃいけない」と、技術を活用したユースケースの創造が重要との考えを示した。その上で、デジタルトランスフォーメーションによるリカーリングビジネスを加速するためにはパートナー企業の力が必要であると強調。パートナー企業と5Gでのビジネス変革を進め、イノベーションを実現できる仕組みを作り上げていきたいと話した。
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