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大企業とスタートアップをつなげる「CVC4.0」とは--大手3社の事例を紹介

加納恵 (編集部)2019年06月19日 08時30分
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 米国シリコンバレーに本社を構えるベンチャーキャピタルである、ペガサス・テック・ベンチャーズは6月18日、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の最新状況について、セミナーを開催した。CVC運用体制「CVC4.0」について説明したほか、CVCを手がける大手企業を招きパネルディスカッションを開いた。

 ペガサス・テック・ベンチャーズは、世界30社以上の企業からLP出資を受け入れ、150社以上のスタートアップに対し、投資実績を持つベンチャーキャピタル。世界の35地域・国の予選を勝ち抜いたスタートアップが競い合う「スタートアップワールドカップ2019」も主催している。

 ペガサス・テック・ベンチャーズ 代表パートナー兼CEOであるアニス・ウッザマン氏は、最新のCVC運用体制であるCVC4.0について説明。1980年頃に登場したCVCを1.0とし、2.0、3.0と変化する過程で、どんな課題があったのか、CVC4.0は今までとはどう違うのかなどを話した。

ペガサス・テック・ベンチャーズ 代表パートナー兼CEOであるアニス・ウッザマン氏
ペガサス・テック・ベンチャーズ 代表パートナー兼CEOであるアニス・ウッザマン氏

 CVC1.0は、1980年中頃に登場。複数の大手企業が同じファンドに投資し、運用はファンドマネージャーが担っていたとのこと。そのため企業の意見は尊重されず、各社1~5億円の少額出資にとどまっていた。財務的リターンを目的としていたため、戦略的リターンが得られず、スタートアップとの事業提携などには結びつかなかった。

 この課題を克服するために生まれたのがCVC2.0だ。2000年代初期に登場し、大手企業が子会社を作って投資できる形を整えた。ファンドマネージャーは自社の社員が担当するため、意思決定ができ、投資したい会社にきちんと投資できる環境ができた。

 しかし、ファンドマネージャーの知識や知見が浅く、スタートアップを育てられなかったという。スタートアップは、継続的な資金調達、ビジネスのスケール、買収や上場などイグジッドと3つのサポートが必要だが、この段階では、手助けが行き届かず、スタートアップにとっても厳しい環境に陥ってしまうことがあったという。

 CVC3.0は、ファンドマネージャーに知識のある人材を雇い、自社の子会社で運用する形で、2010年初期に登場したという。しかし自社で運用しているため、会社の色が強く、優良なスタートアップと直接話せなかったり、案件数に限界があったり、運用面に課題があったという。さらに、提携したスタートアップを他社に紹介することもあまりできず、スタートアップがスケールしにくくなってしまっていたという。

 数々の課題をクリアした、CVC4.0は2014年頃にスタート。ファンドを自社で抱えず、外部のファンドマネージャーが運用する形になっているという。これにより、活動の幅が広がり、スタートアップにとっても事業提携しやすい環境が生まれた。

 ウッザマン氏は「外部のファンドマネージャーのため、ネットワークが豊富で、どんどん支援をして、生き残るスタートアップをたくさん生み出せる。事業会社の規模が大きいため、提携や合併などイグジットも大きく、ファンドとして成功しやすい」とメリットを話した。

インナーサークルにリーチできるCVC4.0という仕組み

 すでにCVC4.0に取り組む日本企業として、アイシン精機、双日、サニーヘルスの3社も紹介。アイシン精機 技術企画・統括部主査の勝田洋行氏、双日 ビジネスイノベーション推進室投資・事業推進課課長の井川淳氏、サニーヘルス 代表取締役の西村正弘氏が登場し、パネルディスカッションも実施した。

 アイシン精機は、2018年2月にファンドを立ち上げた。現業であるモビリティ、生産技術、新規ビジネスモデルなどの分野で、業務提携ができるスタートアップの支援を検討しているという。アイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュの2社共同のファンドになっており、「細かく要望を出しているが、ペガサス・テック・ベンチャーズには両社の意見を聞いていただいている」(勝田氏)と、独自のスタンスを話した。

 シリコンバレーに駐在員を派遣し、事業開発を進めている双日は、1月にCVCを設立。「社内には9つの営業本部があり、自動車、医療、エネルギー、金融など多岐にわたる分野を持っている。通常のベンチャーキャピタルは1つの領域に特化していたり、収益性の高い分野に絞っていたりするが、私たちが持つ9つの幅広い分野において、オーダーメイドのように合った優秀なスタートアップを探してきていただている」(井川氏)と話す。

 プライベートファンドとして、資産運用の観点から投資していたサニーヘルスは、戦略的投資をスタート。6月には、約110億円のCVC4.0型ファンドを締結した。西村氏は「社内のリソースが足りず、英語でアプローチして、日本語に翻訳してと海外のスタートアップへのアプローチは時間がかかる。その時にペガサス・テック・ベンチャーズに間に入ってもらうと、数カ月かかるプロセスが数週間になる」とスピード感を強調。また「通常では入り込めないような案件やスタートアップにも投資できる」と、インナーサークルにも強い影響力を持つことを示した。

 今後、スタートアップへの投資を考えている企業へのアドバイスとしては、「スタートアップへの投資はリスクが高い。自社でリスクマネジメントするのはハードルが高いが、ペガサス・テック・ベンチャーズと取り組むことによって、リスクを抑え、うまくいっている。お試しとして小規模ファンドからスタートするのはいいアイデアだと思う」(サニーヘルス 西村氏)と現状を説明。

 双日の井川氏は「幅広いネットワークを持ち、目利きができるベンチャーキャピタルと組むのは、取るべき選択肢」とパートナーシップの重要性を訴えた。

 アイシンの勝田氏は「インナーサークルに入るのは難しく、またリスクの部分まで見てもらえるのは大きなメリット。ベンチャーキャピタルとの連携はいいアプローチだと思っている」とコメントした。

左から、アイシン精機 技術企画・統括部主査の勝田洋行氏、双日 ビジネスイノベーション推進室投資・事業推進課課長の井川淳氏、サニーヘルス 代表取締役の西村正弘氏、モデレーターを務めたブルー・ブリッジ・パートナーズ 代表取締役社長CEOの船津康史氏
左から、アイシン精機 技術企画・統括部主査の勝田洋行氏、双日 ビジネスイノベーション推進室投資・事業推進課課長の井川淳氏、サニーヘルス 代表取締役の西村正弘氏、モデレーターを務めたブルー・ブリッジ・パートナーズ 代表取締役社長CEOの船津康史氏
 

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