米サイバー軍はこの1年間で、ロシアに対してかつてないほど攻撃的になり、同国の電力網を制御するシステムに「壊滅的な影響を与える可能性があるマルウェア」を仕込むなど態勢が変化していると報じられている。防衛姿勢から攻撃姿勢へというサイバー軍の戦略転換は、米議会が2018年夏に承認したものの一般にはほとんど知られていない法的権限によって可能となった。警告を意図したものではあるが、紛争時にサイバー攻撃を無力化できるようにもなっている。The New York Times(NYT)が米国時間6月15日、匿名の当局者の発言として報じた。
NYTによると、サイバー軍の活動は、大統領による特別な承認なしで、国防長官がゴーサインを出せるという。最近の動きは、2018年に議会が可決した軍の権限に関する法案に基づいて生じたようだ。この法案は、「米国に対する攻撃や悪意あるサイバー活動を抑止し、あるいはそうしたものから国を守るために」サイバー空間における「秘密の軍事活動」を認めている。
2020年の米大統領選に対するロシアの干渉が懸念される中で、サイバー軍は攻撃的な姿勢へと転じたが、サイバー戦争をめぐる戦略や懸念は以前から徐々に増加している。警戒を促したのは、2015年のロシアによるウクライナの電力網停止や、「Dragonfly」「Energetic Bear」として知られる、ロシア政府が支援するグループが、2017年に米国の電力会社の制御室にアクセスすることに成功したという報道などだ。
サイバー軍は2018年、まだ機密扱いの文書「国家安全保障に関する大統領覚書13」に従って、大統領から新しい権限も与えられたとNYTは報じている。なかでもサイバー軍の「Russia Small Group」は、「Internet Research Agency(IRA)」が使用するコンピューターを「制圧する」ために、その権限を利用した。IRAは、ロシアが支援するグループで、2016年の大統領選中にフェイクニュースやトローリングといった活動を行ったとして米司法省に起訴されている。
NYTによるとサイバー軍は、ロシアが2020年の米大統領選挙期間中に鍵を握る州で局地的な停電を引き起こす可能性を懸念しており、そうした攻撃を阻止する対策が必要だと考えているという。サイバー軍と米国は、サイバー世界でのこうした国際的なチェスゲームにおいて自らの動きを慎重に検討する必要がある。
同記事は、「現時点での疑問は、他国の電力網に地雷に匹敵する脅威を仕掛けることが、ロシアの脅威を阻止する正しい方法かどうかだ。これは冷戦時代の核兵器戦略になぞらえられる一方で、電力網は理にかなった標的だとも言える」と記している。
米CNETはサイバー軍にコメントを求めたが回答は得られていない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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