Coral Capitalは、不動産テックプレスセミナーを開催した。投資額が年々増加している海外の不動産テック事情から、Coral Capitalの投資先であるすむたす、BluAgeを交えて、最新のトレンドなどについて話した。
Coral Capital 創業パートナーの澤山陽平氏は「不動産テックへの投資額は右肩上がりで伸びている。いろんな業界で投資は増えているが、特にこの領域は大きくなると予想しており、かなりの速度で資金が増え続けている」と現状を話した。
さらに米国の不動産テック最新トレンドとして「マーケットプレイスだけだったが、最近はテック企業が実業のところまで踏み込んできている。今まではマッチングをして後は仲介会社にまかせていたが、テック企業が成約まで担う流れが起きている」と解説した。
また「B2Bが堅調だが、大きく盛り上がってきているのはB2C。VRを使った新サービスができているほか、B2Cを手がける会社が付加価値を出すために周辺サービスにまで手を広げている。B2B的なサービスを追加で提供する流れもある」(澤山氏)とし、B2C事業が拡大しつつある現状に触れた。
Coral Capitalの投資先として、日本の不動産テック企業2社を紹介。すむたすは、不動産の買い取り再販事業を手がけており、米国では「iBuyer(アイバイヤー)」として知られる分野だ。
すむたす 代表取締役の角高広氏は「日本で不動産を売るには、売りに出した後、内見、交渉などを繰り返して、かかる日数は平均して3カ月。諸外国と比べて期間が長いし、手間もかかる。この3カ月を待たずに家を売却したいと考えている人がすむたすのユーザー。すばやく売却することで、二重ローンになることを避けたり、欲しい中古物件が出た時にすぐに購入できたりする」とメリットを話す。
売却する際は、住所や広さ、築年数などの項目に答えていくことで、買取価格を表示。「項目は100~150程度あり、いただける情報が多いほど、正確に判断できるため、買取価格は高くなる」(角氏)。
また離婚、相続、借金といった理由からすぐに手放したいというニーズにも対応するとのこと。すむたすでは、最短2日で家の売却が実現する。現在は都内の中古マンションを中心に取り扱っているが、今後は全国展開のほか、戸建て、土地といった領域まで踏み込んでいきたいという。
BluAgeは、早く、安く、ムダのない部屋探しを提供するサービス「Canary」を運営する不動産テック企業だ。「ポータルサイトで物件を探し、問い合わせをして、内見、契約と部屋探しのプロセスはここ10年程度変わらない。しかし無駄な部分も多く、ここをなくしたい」と、BluAge 代表取締役の佐々木拓輝氏は意気込む。
Canaryは、アプリで物件と内見したい日時を入力すると、不動産エージェントとマッチングし、希望の日時に内見ができるサービス。「部屋探しは、スマホのアプリで探す人が増えている。なぜなら物件検索が早く、使いやすいから。この状況は私たち新興プレーヤーとして戦いやすい環境」(佐々木氏)と分析する。
加えてCanaryでは、ポータルサイトへの広告掲載のための労力や、顧客の取り合いによるリソースの浪費をなくせるなど、不動産仲介会社にとってもメリットを提供する。
佐々木氏は「現状のプロセスではどの不動産エージェントがよいのかわからず、悪質業者に捕まってしまうこともある。これはユーザーからは見えなかった部分。エージェントを評価することで、この部分も透明化できる」とし、部屋探しの現状を変えていくサービスを目指す。
最後に実施されたパネルディスカッションには、すむたすの角氏、BluAgeの佐々木氏に加え、三菱地所 新事業創造部兼DX推進部主事の那須井俊之氏が登場。モデレーターをCoral Capital CEOのJames Riney氏が務めた。
Riney氏が、不動産テック企業に対する投資の温度感について尋ねると、角氏は「盛り上がりは4年前くらい。盛り下がっている印象はなく、主戦場が増えた感じ。この1年で売買、建築といった分野にもテックが入ってきた」とコメント。佐々木氏は「VR内見やスマートロックなど、内見や部屋探しのフローはいろいろある。一カ所だけが発展しても全体は変わらないので、それぞれのフローで新しいものが出てきているように感じる」とした。
数々のスタートアップを支援している三菱地所の那須井氏は「不動産業界は情報の非対称性がある。この課題に対し、米国には既存業界に踏み込み、この課題解決を担うプレーヤーがいろいろ出てきている。これらのプレーヤーとは敵対せず、一緒に成長していきたい」とコメントした。
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