先週、Googleが華為技術(ファーウェイ)に対して「Android」のサポートを停止することが報じられ、その後、一時的な猶予が認められることが発表された。それに加えて、Armもファーウェイとの取引を停止する企業群に名を連ね、最後のとどめとなるかもしれない強烈な一撃をお見舞いした。これらのことは、米国と中国の貿易戦争が悪化した場合、テクノロジー業界にどんな影響が及ぶか、という警告とみなすべきだろう。
米大統領執務室からは脅し文句や大げさな言葉が発せられているが、事実は単純だ。両国間のサプライチェーンがあまりにも複雑に絡み合っているため、どちらの国も大きな痛みを感じずにそのもつれを解くことはできない、ということである。
皆さんがどんなデバイスで本記事を読んでいるにせよ、それは米国企業の部品と知的財産を使って、中国で組み立てられたものである可能性が高い。
設計と製造に必要なリードタイムを考えれば、このエコシステムの分離を求める米政府の命令は、実施までの期間を月単位ではなく年単位で考えるべきだろう。
ファーウェイをソフトウェアやハードウェア、知的財産から切り離せば、多くの企業が倒産してしまうはずだ。そのような命令から立ち直る能力を備える企業があるとしたら、それはファーウェイだろう。
中国での成功だけを見ても、ファーウェイは世界最大級のメーカーの1つだ。今回のような事態に備えて、秘密裏に代替ソフトウェアの開発も進めてきた。同社には、HiSiliconというチップ部門もある。
今回の騒動の結果として、ファーウェイがAndroidを利用できなくなった場合、失う影響が最も大きいのは「Google Play」ストアだろう。しかし、ファーウェイがすぐに独自のストアを開設したり、中国のほかのスマートフォンメーカーと協力して国家主義的な代替のストアを作り出したりすることは、想像に難くない。
Androidの世界には、通常のAndroidのほかに、それとは大きく異なる中国製のバージョン(例えば、「ColorOS」)も存在する。私たちが今、目の当たりにしているのは、ホワイトハウスによってもたらされたAndroidの分離なのかもしれない。
重要なのは、ファーウェイには従業員以外の株主がいないため、証券取引所への説明責任なしに、姿を消す、自社の利益のために行動する、組織を刷新するといった厳しい決断を下せるということだ。Armのチップ設計を利用できなくなって、独自チップの開発に着手する必要が生じた場合、これは極めて重要なポイントになってくる。
米政府が中国政府との取引を有利に運ぶために禁止措置を断念した場合、すべての禁止措置が無駄に終わる可能性もある。
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