地球温暖化が進み、世界人口が増加し、およそ100万の生物が絶滅の危機に瀕しているとされている。地球が人類に対して我慢の限界を迎えつつある中、私たちはどのように存続し、繁栄していくのか。
Jeff Bezos氏にそう尋ねるなら、「宇宙に移住する」と回答するだろう。
航空宇宙企業Blue Originの創業者であるBezos氏は2019年5月にワシントンDCで開催されたイベントで、人類の生活圏を地球外に拡大する計画を発表した。
「私たちが太陽系に出て行けば、人類は太陽系に1兆の人口を抱えることが可能になる。それは1000人ものモーツァルトや1000人ものアインシュタインを擁することを意味する」「これは驚異的な文明になるだろう」と同氏は述べた。
では飛躍的に増加した人口はどこに住むことになるのだろうか。その問いに答えるべく、Bezos氏は1970年代のSFのプレイブックを手本にして、宇宙の暗い深淵に漂う高度な居住地を建設する計画を発表した。
米CNETのオンライン番組「WATCH THIS SPACE」のエピソードでは、Bezos氏の宇宙移住構想を取り上げている。そしてこれは必ずしも新たな領域というわけではないことが明らかになった。
スペースコロニーの構想は、小説家のJules Verne氏やロシアのロケット研究者Konstantin Tsiolkovsky氏が19世紀後半に発表した書物に遡る。当時、人間を宇宙へ送り出すという構想はまだSFの夢物語だった。
1920年代には、科学者のJohn Desmond Bernal氏がより具体的な構想を打ち出し、現在では「Bernal Sphere」(バナール球)として知られるスペースコロニーのデザインを発表した。直径およそ10マイル(約16km)のバナール球は宇宙に浮かび、人間の居住者に住居区域と農業地域を提供している。バナール球を草創期の青写真として、20世紀を通して科学上の大きな着想が生まれていった。
1970年代、科学者のGerard O'Neill氏が「O'Neill Cylinder(O'Neill Colony)」(オニール・シリンダー)を提示し、構想はさらに発展した。巨大な円筒状のコロニーであるオニール・シリンダーは宇宙で回転しながら人工重力を生み出し、およそ100万人が暮らせるようになっている。
米航空宇宙局(NASA)もこの流れに続いた。NASAは「1975 NASA Summer Study」(1975年NASA夏季研究)の一環としてコロニーを設計するためにスタンフォード大学の最も優秀な頭脳の持ち主たちを招集した。この10週間の講習で、教授や学生、ボランティアらが、「Stanford Torus」(スタンフォード・トーラス)と呼ばれる「宇宙で恒久的に多くの生命を維持」できる環状のコロニーを設計した。
スタンフォード・トーラスは生半可な構想ではなかった。チームはこのコロニーについて科学的に詳細な検討を行った。それには詳細な費用や財政的なメリット、さらには月の石を発射する「ペレットランチャー」から成る推進システムの非常に綿密な計画も含まれていた。
Bezos氏はワシントンDCのイベントの壇上で、O'Neill氏が初めて概念化した「人造世界」を持ち出し、公共交通機関や農業用ならびに住居用スペースを含むコロニーや、娯楽または無重力飛行用に特別に設計されたコロニーの建設が可能だと述べた。
Bezos氏はさらに、人類が宇宙への移住を始めるにあたって月に早期のインフラを提供するのに役立つ月面着陸機「Blue Moon」を発表した。
だが未来的なスペースコロニーの実現は、まだずっと先の話になる。ワシントンDCでのイベントで、Bezos氏はスペースコロニー建設を数世代にわたって実現する構想を打ち出し、人類を未来的な生息環境へ導くのは同氏ではないと述べた。
「誰がこれを実現するのか」「私ではない。(イベント会場で)前の列に座っている若者たちの皆さん、あなたたち、そしてあなたたちの子供がこれを実現することになる」と述べた。
ゆえに宇宙に浮かぶ透明な円筒で生活することについて興奮しすぎる前に、この構想はすぐには実現しないことを心に留めておくべきだ。また、NASAとスタンフォード大学が40年以上前に十分な予算を立てて打ち出した計画が依然として夢物語であることを考慮すると、人類が宇宙に移住すべく荷造りを始めるのはまだ相当先になるかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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