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「生活調律業」へのイノベーションを加速させるダスキンラボの狙い

別井貴志 (編集部) 野々下裕子2019年05月27日 13時24分
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ダスキンラボのエントランス。ロゴにある「1000分の3」には、「ダスキンと生活者とパートナー」の3者で、千里の地で1000回のチャレンジをするという意味が込められている
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ダスキンラボのエントランス。ロゴにある「1000分の3」には、「ダスキンと生活者とパートナー」の3者で、千里の地で1000回のチャレンジをするという意味が込められている

 多くの大手企業が令和時代に向けた新規事業開拓に力を入れるなか、ダスキンは社内外との共創による新たな取組みの場となる「ダスキンラボ」(以下、ラボ)を5月21日にオープンした。

 ダスキンは2015年から9カ年の長期戦略「ONE DUSKIN」を推進しており、第2フェーズに入った現在は、企業体質の強化と現事業の発展をベースに新たな分野へチャレンジしている。訪販グループにおいては、50年以上続くマットやモップなどの訪問レンタル事業で定着した「お掃除事業」を払拭し、変化する社会や生活の形にあわせて、暮らしのリズムや職場環境を整える「生活調律業」への進化を2018年4月より進めている。ラボはその第一歩と位置付けられ、生活者や外部とコラボレーションしながら従来の枠にとらわれないイノベーションを生み出し、生活のあらゆるシーンで役立つ新たな商品やサービスを形にし、共有、検証する場にすることを目指す。

 ラボのある大阪府・千里中央は、1970年の大阪万博で誕生した日本初のニュータウンの玄関口で、半世紀を経て始まった大規模再開発の影響で住みたい街ランキングの上位にも選ばれている地域。「生活者層の幅広さと街としての機能のコンパクトさなどを理由に、東京や梅田ではなくあえてこの地にラボを設けた」という山村輝治社長は、「地域コミュニティと連携し、座談会やワークショップ、アイデアソンなどの開催を通じ、参加者の思いが形になる場にしていきたい」と述べた。ロゴにある「1000分の3」にも、「ダスキンと生活者とパートナー」の3者で、千里の地で1000回のチャレンジをするという意味が込められている。

ダスキンの山村輝治社長
ダスキンの山村輝治社長

 ラボ室長を務める訪販グループ戦略本部の高下泰明氏は、「社会の変化にあわせてお役立ちの場を拡げてきたがまだ足りない」と言い、「これまで開発の中心だった本社を離れ、訪販とも異なる場で多様な事実から潜在的な困りごとを引き出し、新領域開拓につなげるオープンイノベーションをゼロから始めるのに必要な場にしていく」と意欲を見せる。運営まで1年かけて数多くの企業やメーカーを訪問して調査し、「未知のお客さまを見つけ出す」ために何が必要かを考え続けた。

ダスキンラボ室長の高下泰明氏は訪販グループ戦略本部に所属する
ダスキンラボ室長の高下泰明氏は訪販グループ戦略本部に所属する

 例えば、「見えない家事の研究」や「おひとりさまの幸せとは」といった具体的なテーマを掲げ、社内外と協力しながら研究する。そのためにラボ内はコンパクトながらセミナースペース、体験スペース、工作スペースなどが設けられ、クリエイティブでありつつ一般家庭の中もイメージできるような機能が用意されている。

 用途にあわせて自在に空間を変えられるよう極力壁を減らし、床に描かれた90cm四方のグリッドはパーソナルスペースであり、2つあわせると約一畳としてわかりやすく計算できるよにしている。キッチンや冷蔵庫などの設備は全て段ボールでできており、可動や収納できるものにし、壁はすべてホワイトボードとして書き込める。

 家具はすべてスタッキングブロックで、イスやテーブルとして使うだけでなくレゴのように間取りが組み立てられる。アイデアの創出に終わらず、その場でプロトタイプを作って実証実験までできるように工具も用意されている。試験的にラボを利用した人たちからは好評で、「新たな共感やフィードバックの場になるよう、すでに多数ある地域の教室やコミュニティグループと連携し、活動スペースとしても利用してもらえるようにする」(高下室長)という。

ダスキンラボの活動
ダスキンラボの活動

 他にもラボでは、直営スタッフが行動観察のスキルを学ぶ「生活調律研究員」の育成を4月から開始。この7月に第2期が始まる「やってみるプロジェクト」では、行動観察から発見した課題やニーズに対する解決モデルの作成・検証を行い、社内イノベーターの発掘や育成に向けたセミナー、ワークショップも実施する。コンセプトである「まなぶ」「つながる」「つくる」「みがく」の4つに沿ってさまざまな活動をし、失敗も含めてすべてを記録し、社内にある16の事業や外部パートナー、生活者とも共有する。「それらを元に外部パートナーとの協力関係も見直し、それぞれが得意とすることを活かせるように、これまでとは異なる分野での連携にもつなげたい」(高下室長)

 ラボでは事業化につながる形でアイデアを本社へ提案することも目指すというが、一方で山村社長は「事業に直接関わる商品開発機能は従来通り本社で行う」としている。あくまで訪販グループが目指す生活調律業の一助であり、収益や事業への影響は現時点では具体的に設定しているわけではなく、口コミで“千里にいい場所がある”と思ってもらえることを目指すという。「社内全員がラボに賛同しているわけでなく、2年で何かしらの結果が出せなければ運営の見直しも検討する。ただし評価は多面的に行い、失敗を恐れず取り組む」と述べた。

 ラボのスタッフは高下室長を含めて4名で、勤続20年以上の高下氏より年上のベテランもいる。「失敗を恐れず挑戦するには社内をよく知っている人間でなければ踏み外せないし、この人が関わっているなら大丈夫だろうと思われることが大事です。私自身は家事代行サービスの『メリーメイド』のエリアマネジャーなどを15年以上担当し、とにかく真面目に仕事を続けたことが室長に抜擢された理由だと思っていますが、新規事業の開発はダスキンとしてはやらねばならない課題であり、全力で取り組んでいきます」と高下室長は強い口調で語った。

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