そして、初代Atmoph Windowの登場から4年後の2019年、さまざまな改良を重ねた新モデルAtmoph Window 2がいよいよ発売される。本体サイズは650×400×50mm、重さは5.5kg。1920×1080ピクセルの27インチ画面に、美しい景色の映像を表示する(4Kカメラで撮影した映像をフルHD解像度に圧縮することで、美しい映像が得られる)。フレームは交換式となっており、要望が多かった木製フレーム(本物のカリモク製)も新たに用意した。
同社がこれまで撮影した映像だけでなく、新たに世界各地のライブ映像も視聴できるようにする。また、要望が多かったユーザーがスマートフォンなどで撮影した動画もアップロードできるようにするという。これにより、たとえば自宅にいながら「思い出の旅行先の景色」や「遠く離れた実家の庭から見える景色」などをいつでも見られるようになり、より活用の幅が広がると考えているという。
新モデルでは“音”にもこだわった。2つのスピーカーのほか、新たに全体を振動させるスピーカーを液晶パネルの裏に内蔵。これにより、映像にあわせて画面全体が揺れることで、たとえば滝が流れる映像などでは、より迫力のある音も楽しめるようになった。なお、Bluetoothスピーカーとして音楽再生に使うこともできる。
さらに、新開発したオプションのカメラモジュールを取り付けると、Atmoph Window 2を見ている人の顔の位置や角度を認識し、それに合わせて表示する景色が上下左右に“動く”ようになるという。これにより、より本物の景色に近い映像が楽しめるようになる。このカメラは、外出先などからスマートフォンのアプリで室内を見るための“見守り”にも使えるという。
このほか、明るい外からの光が入っているように見せるLEDライトモジュールもオプションで提供する。森の中で木漏れ日がさし込んでいるような演出が可能になるという。「このライトで小さな植物くらいなら育てられる。地球の風景をタダで借りているので、少しでも自然に貢献したい」(姜氏)。
なお、ライブ映像の視聴や、動画のアップロード機能は、初代モデルもアップデートによって使えるようになるという。同社では製品をより長く使って欲しいという思いから、初代モデル発売から2年間で30回近いアップデートを実施してきたそうだ。2代目の発売後も、可能な範囲で初代のユーザーのフォローを続けていくという。
大幅に進化したAtmoph Window 2だが、なんと価格は前モデルの7万円から3万円近く安い約4万円。さらに、クラウドファンディングのIndiegogoの早期購入では30%オフの約3万円で手に入れることができる。初代の開発によってすでに金型やノウハウもあることから、製造コストを下げられるとはいえ、なぜ、これほどの低価格に踏み切ったのだろうか。
この疑問に対し姜氏は、「私たちは風景というアートを販売しているが、より多くの人に使ってもらわなければ成り立たない。iPhoneなど誰もが手にする端末ならまだしも、全く知らない状態から買うには7万円はハードルが高かった。まずは試してもらえるように(デバイスの)普及を優先し、社運をかけた価格で挑戦する」と、その理由を明かす。
一方で、デジタル窓をニッチな製品だとは思っていないという。「多くのSF映画には、現代の延長線の未来としてデジタル窓が出てきているし、そろそろそれに近い未来が来ると思っている。(デジタル窓が)家の中のインターフェースの選択肢の1つになるように普及スピードを早めたい」(姜氏)。
映像のコラボなども進めていく予定だ。たとえば現在は、JAXAより宇宙ステーションから見える地球の景色を動画として提供してもらっているほか、高級旅館の「星のや」より、客室の窓の外から見える自然の動画を提供してもらっている。この事例を増やしていくほか、将来的にはゲームなどのエンタメ作品ともコラボし、Atmoph Windowの画面上に“ファンタジーの世界”を映し出したいという。この辺りは、元任天堂社員ならではの発想かもしれない。
同社では、2025年時点でAtmoph Windowシリーズの累計100万台の出荷を目標に掲げる。ただし、1社で進めていくのではなく、さまざまなメーカーの参入も促すことで、デジタル窓市場を構築し、「その中でのリーディングカンパニーを目指したい」(姜氏)と意気込みを語った。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」