自動車の窓はその性質上、注目を集めることはあまりない。車窓は虫が私たちの口の中に入るのを防ぎ、肌を紫外線から守ってくれるが、その程度のものと思われている。近い将来、そうした状況は変わるかもしれない。拡張現実(AR)の時代が車窓にも浸透し始めているからだ。
Fordは「Feel the View」というスマートウィンドウのプロトタイプを開発した。Feel the Viewは車窓を通して伝えられる触覚フィードバックを使って、外の世界を触覚で表現する。カメラが外側の景色を撮影して、255段階の灰色に変換する。その後、それぞれの段階にフィードバックレベルを割り当てて、それに応じてガラスが振動する。これにより、視覚障害者は外の世界について、何らかの印象を得ることができる。
GMがプロトタイプを作成した車窓は、お絵かきボード「Etch-A-Sketch」のように機能したり、動くアバターを表示したり、外の世界のAR情報を車窓に重ねて表示したりできる。スマートフォンベースのARと同様、FordやGMのこうした取り組みも、ユーザーに邪魔な装置を着用させる代わりに、既に使われているものにAR情報を表示することを目指している。
トヨタ自動車はARを活用したアプローチ「Window to the World」を披露している。車窓を使って、外側にある特定の何かを拡大表示させる機能などを備えている。これは、デジタル一眼レフカメラの電子ビューファインダーを使ってクリティカルフォーカスを確認するのに似ている。
Mercedesの「F 015」コンセプトカーは、車窓とは何かという問題への新たな視点を示すものだ。いくつかのモードでは、ドア下部のパネルがバーチャルな車窓になり、車体外部のカメラから送信される外側の映像を表示する。このモードにARグラフィックスを重ねることも可能だ。あるいは、パネルを不透明なディスプレイに戻して、メディアや通信、ナビゲーションを表示させることもできる。
ヘッドアップディスプレイ(HUD)は既に多くの自動車に搭載されているが、そのほとんどは今も真のARより「Google Glass」に近い小型ディスプレイだ。そうした状況は変わりつつあるようだ。HarmanやContinental、Visteonといった大手自動車技術サプライヤー各社が、真のARをフロントガラスにもたらすシステムを自動車メーカーに売り込んでいるからだ。その狙いは、ナビゲーションや計器類、通信をフロントガラスに表示することで、ドライバーが前方の道路から目を離す回数を減らすこと。この新技術がドライバーの気を散らす要因になるのかどうかについては、現在、議論が交わされている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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