ヤフーは4月25日、2018年度通期の決算を発表した。売上高は前年度比6.4%増の9547億円。営業利益は前年比24.4%減の1405億円。当期利益は前年度比42.1%減の778億円となった。
また、同社は10月から持株会社体制へ移行することも明らかにした。「Zホールディングス」という名称の持株会社を設立し、その下にヤフーと、金融関連事業の中間持株会社を置くという。
2018年度は、広告関連収益が前年度比6.7%増の3238億円、ショッピング事業の取扱高が前年度比22.6%増の7692億円と大きく伸びたが、クレジットカード会員へのポイント還元など販売促進費が173億円まで膨らみ、ビッグデータ処理環境構築に向けた減価償却費も121億円と利益を圧迫した。また、持分法適用会社となっているPayPayが2度に渡って実施した(2回目は実施中)「100億円キャンペーン」が影響し、持分法による投資損益として175億4100万円を計上したことも利益を押し下げる要因となった。とはいえ、黒字は確保した。
広告などのメディア関連事業では、ユーザーインターフェースの改善などが功を奏して、検索連動型広告が前年度比11.1%増の1642億円と、5年ぶりに二桁%の成長を果たした。ヤフー代表取締役社長 最高経営責任者の川邊健太郎氏は、メディア事業で重視している指標として、月間ログインユーザーID数と、ログインユーザーの利用時間を挙げたが、この2つの指標も伸びている。月間ログインユーザーID数は前年度比10.2%増で、4年連続で二桁%の成長を達成した。そして、スマートフォン経由ログインユーザーの利用時間は前年度比21.8%と大きく伸びた。
また、動画コンテンツの強化に投資した結果、スマートフォン経由の動画視聴時間が前年度比85.3%増と急伸した。川邊氏は「動画コンテンツ調達と、ヤフー独自制作の動画の提供で、若年層のユーザーを獲得できた」と、今後のヤフーの成長につながる新規ユーザーを獲得できたことをアピールした。その結果、スマートフォンユーザーがヤフーのトップページで動画を視聴する時間は前年度比で2.4倍に、スマートフォン動画広告の売上は前年度比2倍と大きく伸長したという。
コマース事業では、「eコマース取扱高の最大化」「自前のサービスによる決済金額の最大化」「金融、会員ビジネスなどO2O(Online to Offline)事業の最大化」の3点に力を入れているという。その結果2018年度は、「Yahoo!ショッピング」の取扱高が前年度比22.6%増の7692億円に達した。これで、前年度比20%以上の成長を4年連続で果たしたことになるという。さらに、O2O事業では「Yahoo!トラベル」や「一休.com」がポイント会員サービスの効果で売り上げを伸ばし、取扱高が前年度比26.6%増の3925億円となった。
決済では、2018年10月に開始した決済サービス「PayPay」が、2回に渡る「100億円キャンペーン」の効果で累計登録者数が666万人を突破し、加盟店舗も50万を超えるほどの急成長を果たした。そして、PayPayとの連動によってクレジットカードの有効会員数も増加し、サービス開始から5年で600万人を突破した。
さらなる新規会員獲得に向けた施策も準備している。まず5月8日から、PayPayを使った支払いのたびにユーザーに還元するボーナスの付与率を0.5%から3%に引き上げる。6月1日からは、PayPayを使った支払い20回に1回の確率で最大1000円相当のボーナスを付与する「PayPayチャンス」を開始する。どちらも今のところ期限は設けていないという。
さらに、6月からは新キャンペーン「いつもどこかでワクワクペイペイ」を開始する。店舗の種別や地域などを限定して、月替わりで実施するキャンペーンだ。6月はPayPay加盟のドラッグストアで、支払いのたびに最大10%のボーナスを付与する。ソフトバンクとワイモバイルの携帯電話利用者や、Yahoo!プレミアム会員には、最大で20%のボーナスを付与し、先述のPayPayチャンスの当選率を20回に1回から、10回に1回に引き上げる。7月以降も、対象店舗を変えて続けるという。
ヤフーのサービスも、6月からPayPayに対応する。Yahoo!ショッピングと「ヤフオク!」の決済にPayPayを利用できるようになり、ヤフオク!では売上金をPayPayにチャージすることも可能になる。さらに時期は未定だが、現在Yahoo!ショッピングで提供している期間固定TポイントをPayPayに切り替える予定だ。これで、2018年度実績で計算すると7000億円相当をPayPayに供給する効果を期待できるという。
川邊氏はPayPayについて「当面は基盤となる利用者数、店舗数、決済回数を増大させていくことに注力する」とし、その後は蓄積した膨大な決済データと残高データを活用して、広告やマーケティング支援、金融などのサービスを開発し、収益を上げる見通しを明らかにした。
そしてヤフーは10月1日から持株会社体制へ移行することも明らかにした。「Zホールディングス」という名称の持株会社を設立し、その下にヤフーと、金融関連事業の中間持株会社を置く。ヤフーの既存のサービスは新生ヤフーが提供し、ジャパンネット銀行などヤフー傘下の金融関連企業は中間持株会社の配下で事業を展開する。これは、各事業をより素早く、柔軟に進めるためだという。
さらに「金融事業を本格的に展開するに当たり、金融業者としてしっかりとした統制体制を作る。そして、金融関連事業ではネット事業とは異なる意思決定が必要になる」(川邊氏)ため、金融関連事業の中間持株会社を設立するとした。
川邊氏は2019年度の業績見通しとして、増収増益への転換と、売上収益1兆円超を目指すことも明らかにした。そして長期的な展望として、2022年度まではサービス利用者数やeコマース取扱高の拡大と、新規事業立ち上げに向けた投資を続けて、売上収益を二桁%で成長させていくとした。2023年度以降は、増大させた利用者数や、育成してきた新規事業を収益に結びつけて、利益を拡大させていく見通しだという。
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