個人向け自動車リースサービスである「マイカー賃貸カルモ」を展開するナイルは4月22日、トヨタ自動車などが出資する「未来創生2号ファンド」を運営するスパークス・グループをリードインベスターとして、SBIグループ、AOKIグループなど複数の投資家から、総額約15億円の資金を調達したことを発表した。
この資金によって、カルモのマーケティング活動や人員体制を強化するほか、同社が運営するモビリティ以外の各事業と、親和性が高い企業のM&Aも積極的に検討するとしている。
カルモは、月額定額のマイカーのサブスクリプションサービス。ネットで手続きすることでリーズナブルな価格で利用できることが特徴だ。国産全車種、メーカー保証付きのディーラー新車に乗れるほか、メンテプランに加入すると整備費用も月額定額にすることができる。
ユーザーは、メーカーや価格などから好みの車種を選び、料金シミュレーション後にオンラインで審査に申し込む。2~3営業日で審査結果がわかり、通過すれば郵送で契約書のやりとりをして、ディーラーとの電話後、決まった日時に納車されるという流れだ。
同社代表取締役社長の高橋飛翔氏によれば、2018年1月のサービス開始から1年と数カ月で、累計の申込数は3000件を超えているという。ユーザー層は地方在住の男性が多かったが、最近は女性も増加傾向にあり3割を超えるという。通勤用の足のほか、買い物や子どもの送り迎えといった“セカンドカー”需要で軽自動車を借りる人が多いそうだ。
長期契約のユーザーが多いことも特徴で、9割以上が7年以上の契約をしているという。「特に地方においては、乗り換えよりも、長期で乗るので月額費用を抑えたいというニーズが高いのでは」と高橋氏は分析する。
また、この1年を通して要望が多かったのが“中古車”の取り扱いだったという。そこで2019年夏までには「中古車版カルモ」の提供も始める予定。仮に新車で7年間のリースを組むと月額2万円以上の費用がかかるが、中古車なら車種によっては月額7000円程度で済むと高橋氏は話す。「人によっては携帯代よりも安くなる」(高橋氏)。
都市部では、電車や地下鉄、バス、タクシーなどの交通インフラが充実しているが、地方では交通手段も少なくマイカーが当たり前だ。家族全員が、1人1台ずつクルマを持っていることも珍しくない。
自動運転やMaaS、ライドシェアなど、モビリティと一口に言っても幅広いジャンルが存在するが、法規制などによって実現までに時間がかかるサービスも少なくない。そこでまずは、“消費者の日常の交通手段をイノベーションしたい”と考え、自動車リースに着目したと高橋氏は振り返る。
「サービスを始めて驚いたのは審査に通らない人が多いこと。高齢者だけでなく、所得が低かったり、与信がない人も多い。サブスクサービスによって敷居を下げて、携帯電話のようにライフスタイルにあわせて誰でもクルマを持てる時代にしていきたい」(高橋氏)。
当初はクルマを“所有”することに軸を置いているカルモだが、その先に見据えるのはクルマを“共有”する世界だ。たとえば、今後はクルマを4〜5人で“共同保有”できるサービスなども検討していくという。
通勤など毎日ではなく、週に1度程度しかクルマのニーズが発生しない人もいる。その人のために、カーシェアよりも手軽に、スマホを鍵にしてすぐに解錠し、エンジンをかけられるクルマを複数人で共同保有することで、1人あたりの維持費を下げるというもので、2019年内の実証実験を予定しているという。
また、将来は自動運転機能が標準搭載されたクルマがメーカーから発売されると見ており、個人間のカーシェアなどでも、自動運転で移動する時代がくると高橋氏は話す。「そうなった時の主役はクルマを持っている人。その人たちが地域交通の担い手になる可能性もある。そうなれば、本当の意味でクルマを無料で持てたり、クルマで稼いだりできる時代になる」(高橋氏)。
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