スウェーデンに本社のあるペルモビールが、4月18日〜20日に大阪で行われる「バリアフリー2019」にて、電動車いすの新型Fシリーズを発表する。これに先駆けて4月12日にプレス向けに説明会を開催した。
日本支社長の加世田忠二氏が登壇し、新型の電動車いす「F5 Corpus VS」を披露した。これは前のタイヤが大きく前輪駆動で、座面は高級チェアのような次世代型。これまでの車いすのイメージとは大きく異なる、デザイン性と機能性を誇る。前のタイヤが大きいと、階段などの段差を乗り越えやすい。そして前輪駆動であれば前輪を軸に動けるので小回りがきき、その場で回転できる。この小回りの良さで「生活の範囲が大きく変わる」と加世田氏は説明した。
ペルモビールとは、1967年にスウェーデンで創業した電動車いすメーカー。現在、日本を含めた17ヵ国に支店があり、製品は70ヵ国で展開する。米国や欧州ではかなりの認知度があり、特に米国では30%のシェアを確保する。2017年度の売り上げは430億円を誇り、過去20年間の年間成長率は20%を達成する。
利用者は主に脊髄損傷、多発性硬化症、ASL(筋萎縮性側索硬化症)、脳性麻痺の4疾患による障害者。中でも米国ではASLの90%の人がペルモビールを選択するという。ASLは進行が早く、頭はしっかりしているものの、徐々に身体が動かなくなっていく難病。自分の意思をいかに伝えられるかが重要で、ペルモビールでは進行に合わせて、電動車いすの操作方法を変更できるからだ。
手で操作ができなくなったら足、足が厳しくなったら顎、舌、最終的には目といった具合に、操作オプションを追加していける。「米国では、ASLになったらペルモビールが必要だと認識されている」と加世田氏。
新型の「F5」では、リクライニング機能を強化。座面や背もたれ、足を乗せるフットプレートをより安定した状態で180度フラットにできる。ベッドで寝たきりになると床ずれができてしまうが、それは車いすでも同様だ。うっ血を防ぐために定期的に姿勢を変える機能をティルトと呼んでおり、そのティルトでうっ血が拡散されない場合は、リクライニング機能が大いに役立つ。
座面は昇降し、45cmまで上げられるため、車いすに座っていても視線を合わせながら会話ができる。そして「F5」の最大のメリットは、スタンディングの姿勢が保てることだ。膝にニーパッドを取り付けたり、胸にベルトをするなどして身体を固定したりすることで、スタンディングのまま移動することもできる。加世田氏は「立つことで健康を取り戻せる」と語る。
足裏に加重がかかることで足首が直角になって、骨密度も改善される。足の筋肉はポンプの役割を備えているので、血流が良くなりむくみが解消される。圧迫されていた内臓も定位置に戻るので、お通じが良くなるなどの効果が期待できる。胸の横隔膜も広がるので、呼吸がラクになる。しかも目線を合わせることが精神衛生上において非常に大切で、自信を取り戻したり、ポジティブな意識になれると言う。
スタンディング状態での移動を可能にしているのが、振動の吸収力が強化されたサスペンションだ。各タイヤにサスペンションを取り付けることで重さを吸収するので、スタンディングで片方に加重しても倒れることなく、安定した状態を保てる。
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