一般社団法人 放送サービス高度化推進協会(A-PAB)は、2018年12月からスタートした新4K8K衛星放送の普及状況について説明。新4K8K衛星放送を視聴した人は、所有者や量販店店頭での視聴を含めて5.3%に留まっており、普及に向けた活動を強化する必要があることが浮き彫りになった。
一般社団法人放送サービス高度化推進協会理事長の福田俊男氏は、「2019年1月の時点では、上々の滑り出し、あるいはまずまずの滑り出しと申し上げていたが、それから4カ月が経過し、状況は変わっている。1月、2月の受信可能機器の販売台数が足踏み状態となり、少し気をもんでいる」とし、「今日は、4K/8K市場が早く満開になるように、少し派手だが、桜の柄のネクタイをしてきた。信心めいた話だが、藁にもすがりたいという気持ちの表れである」などとコメントした。
だが「番組の充実や魅力の向上、機器のラインアップ強化によって、視聴者の選択肢が広がる。2019年はラグビーワールドカップがあり、9月には、新たに4K放送を開始する放送局もある。さらに、2020年の東京オリンピック、パラリンピックにあわせたテレビ需要には底堅いものがあるという量販店の声もある。期待をしながら、焦らずに普及推進活動を進めたい」と述べた。
一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2019年2月時点での新チューナー内蔵テレビは35万9000台、外付け新チューナーが19万4000台。一般社団法人 日本ケーブルテレビ連盟(JCTA)では、新チューナー内蔵セットトップボックスが14万1000台となり、これらを合算した69万4000台が、新4K8K衛星放送視聴可能機器の総台数となる。
放送サービス高度化推進協会 理事の木村政孝氏は、「量販店では、放送開始の12月1日前後は品物がなくなるほどの売れ行きだったが、1月下旬から2月にかけては足踏み状況になっている。イノベーターと呼ばれる層の購入が一段落したとみられる」とし、「量販店店頭では、4Kに対して関心を持っている来店客が多く、質問も多い。しかし、現時点で購入しない理由には、『好きなメーカーの商品がない』、『もう少し時間が経てば安くなる』、『ピュア4Kのコンテンツがそろってきたら考える』といった共通した反応がある。また、4月からの新生活需要シフトで、低価格製品の販売が中心となり、しばらくは4Kテレビの販売が足踏み状態になることが気になる」との見方を示した。
現在、ピュア4K放送は、民放4局合計で全放送時間の2桁の構成比に達したところだという。ただ、ゴールデンタイムに限定すると、5割以上をピュア4Kコンテンツとしている放送局が2局あるという。
さらに、チューナーを搭載していない4K対応テレビは、すでに約570万台が販売されていると推計しており、これに対して、外付け新チューナーが19万4000台しか販売されてない現状は、4K対応テレビを所有しているにもかかわらず、わずか3%しか、4K放送を見ていないことになる。今後、4K対応テレビを所有している人に対する4K視聴の訴求が必要であることを示した。
一方、同協会が定期的に実施している「4K/8K放送市場調査」の最新の結果も発表した。
6回目となる今回は、20~69歳までの男女5000人を対象にウェブで調査を行ったもの。放送開始後初の調査であり、一般社団法人放送サービス高度化推進協会周知広報部部長の重森万紀氏は、「全体的には、放送開始を機に、4Kおよび8Kに対する認知が高まった」と総括した。
4Kという言葉を知っている人は62.0%、知っているような気がするという人は25.6%。また、8Kという言葉を知っている人は48.9%、知っているような気がするという人は23.6%となり、「徐々に浸透してきている」としたものの、2018年12月から、新4K8K衛星放送が始まったことを知っていた人は、36.9%に留まり、ここでは「さらに認知を広げる余地がある」とした。
また、新4K8K衛星放送を見るには、チューナー内蔵テレビや、4K対応テレビとチューナーが必要であることを知っていた人は43.3%であり、ここでも「引き続き、理解の浸透を図る必要がある」と語った。
さらに、新4K8K衛星放送を視聴した人は、5.3%に留まっており、視聴場所で最も多いのが、電気店の店頭で全体の63.5%を占めた。自宅の4Kおよび8Kテレビと回答した人は29.3%となった。
その一方で、新4K8K衛星放送を視聴した人の84.0%が、放送に対して、「非常に満足できる」、「まあ満足できる」と回答したという。4Kテレビ所有者に対する満足度調査でも、「非常に満足している」が26.0%、「まあ満足している」が63.0%となっており、その理由として、現在の地上波などの放送よりも、きれいな画質で見られるからという回答が41.3%となった。だが、画面サイズや価格などが購入の際に一番良かったからが33.5%となっており、4K視聴をしていなくても、4K対応テレビに満足している利用者が多いこともわかった。
4Kおよび8Kテレビの所有者は、7.8%であり、4Kおよび8Kテレビを欲しいという人は35.7%。だが、これは裏返せば、56.5%の人が欲しくないという結果になっている。
4Kおよび8Kテレビの非所有者のうち、購入する予定であるとの回答者は2.1%、いずれ購入する予定であるとの回答が28.0%。購入予定がない人は、その理由として、テレビにお金を使いたくないが35.4%、4Kテレビや8Kテレビの価格が高いからが28.6%、アンテナを引く工事が大変そうだからが15.2%となった。
また、チューナーが搭載されていない4K対応テレビの所有者のうち、すでにチューナーを設置している人は11.6%に留まっており、また、いずれ対応チューナーを購入する予定であるとしている人も36.6%、チューナー内蔵テレビを新たに購入するとした人も11.6%に留まった。逆算すれば、約4割が4K放送の視聴環境を整備しないこともわかった。重森部長は、「チューナーの導入促進に向けて取り組んでいく必要がある」とした。
興味深いのは、新4K8K衛星放送の視聴経験がある人に限定すると、68.9%の人が4K/8Kテレビが欲しいと回答している点。「視聴経験のある人は、購入意欲」と分析した。
さらに、A-PABでは、新4K8K衛星放送に関するコール状況についても説明した。コールセンターへの問い合わせは、放送が開始された2018年12月の2542件をピークに減少しており、3月は386件になった。2018年4月から2019年3月までの年間のコール数は9202件となった。
放送サービス高度化推進協会 4K8K推進センターセンター長の宇佐美雄司氏は、「最も多い相談は、新4K8K衛星放送を視聴するために必要なチューナーやテレビ、録画機といった受信機器に関するものである。次いで、アンテナやブースター、ケーブルなどの受信設備に関する質問が多い。3月に入ってからは、どんな受信機器で見られるのか、ケーブルテレビでも見られるのかといった視聴方法に関する問い合わせが多い」とした。
なお、A-PABでは、2019年4月から、総務省の衛星放送用受信環境整備事業の交付決定を受けて、電波漏洩対策の補助事業を開始する。電波漏洩対策への助成金制度の運用、業界への技術講習会などの実施、電波漏洩対策相談窓口の運用の3点で、約1億1000万円の助成金でスタート。1件あたり2分の1の整備補助が行われる。4月8日から申請受付を開始。新4K8K衛星放送の受信設備整備の一助として活用してほしいとしている。
会見には、4K8K推進キャラクターの深田恭子さんも登場し、「新4K8K衛星放送で食べ物や旅行などの番組を見た。美しい景色を楽しんだり、虫が飛んでくる臨場感に驚いたりといったこともあった。4K/8K放送を見て、行ってみたいと思った場所があった」などと語った。
会見では、4K川柳の優秀作品を深田さんが選んだ。優秀作品は「お花見は 4K映像で 見た気分」となった。
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