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ストリーミングにいち早く投資したユニバーサル ミュージック--Grainge会長が語る「音楽×IT」

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 低迷していた音楽業界が再び成長路線を描き始めている。流れを変えるきっかけとなったのはストリーミング。最大手のUniversal Music Group(UMG)はいち早くこの流れを見抜き、トレンドを牽引した。立役者は、会長 兼 CEOのLucian Grainge氏だ。8年前に就任以来、企業価値を8倍近く引き上げた。Grainge氏はすでに次の音楽体験を模索しており、そこでモバイルは重要な役割を占めると説明する。

UMG会長兼CEOのLucian Grainge氏、2016年にはナイトの爵位を授与されている
UMG会長兼CEOのLucian Grainge氏、2016年にはナイトの爵位を授与されている

 インターネットとデジタルはどの業界にも変化をもたらしているが、真っ先に影響を受けたのが音楽業界だ。2011年に会長 兼 CEOに就任したGrainge氏はデジタルを受け入れるだけでなく、ストリーミングの積極的な取り組みにより業績を回復させた。ストリーミングの大手Spotifyとの提携はそれを示す一例だ。

 その結果、2011年当時に60〜70億ドルだった企業価値は上昇。このところ親会社のVivendiによる約半分の株式売却計画が報じられていることもあり、2月中旬にJPMorganがまとめたレポートでは440億ユーロ(500億ドル)となった。売り上げは、4大メジャーレコードレーベルの中でトップを誇る。大ヒット映画「ボヘミアン・ラプソディ」で再熱中のQueen、Taylor Swift、「Despacito」のLuis Fonsi……いずれもUMGだ。

 2月末、スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2019」の基調講演で対談をしたGrainge氏は、ストリーミングを受け入れた当時について次のように語る。「新しいビジネスモデルを実行するとなると、必ず抵抗がある。だが我々は広告モデルにチャンスを感じていた」。当時盛んだったThe Pirate Bayなど違法ファイル共有の動きを差しながら、「(レコードレーベルは)異なる見解を持たなければならなかった。そこで広告というビジネスモデル、サブスクリプションとプレミアムモデルへのアップセルに可能性を感じた」と振り返る。

 ストリーミングでスマートフォンなどのモバイルデバイスは重要な役割を果たしている。「モバイルはメディアの消費や、メディアを楽しむ方法を完全に変えてしまった」とGrainge氏。UMGは英国のEEなどの事業者とバンドルサービスを進めている。

「ローカル音楽」がグローバルに広がる時代に

 Grainge氏はストリーミングの次にもう1つの方向性として、ローカルをあげる。UMGは米国、西欧州などの確立された市場に加えて、ラテンアメリカ、アジア、アフリカなどで地元のミュージシャンやスタジオに投資しているという。プエルトリコ出身のFonsiの「デスパシート」の成功は、地元音楽に注目したからこそだったかもしれない。「Despacito」のミュージッククリップが閲覧された回数は60億回を超えた。これは過去最高の数であり、ラテンアメリカを超えた大ヒットであることを示している。Grainge氏によると韓国音楽は米国で人気だという。

 このように、ローカルの音楽をグローバルが楽しむ動きはこれからも続くとみる。モバイルとソーシャルにより、あっという間に拡散される仕組みができていることは大いに関係ありそうだ。「技術やソーシャルネットワークを使って、ミュージシャンはコンシューマーと直接の関係を構築できるようになった」と述べる。「新しい方法で、あらゆる市場で音楽が再生されることが可能になった。これまでよりもオーディエンスが広がる」(Grainge氏)。

 ソーシャルを上手に使うミュージシャンといえばTaylor Swiftだ。2018年11月、UMGはSwiftとの契約を発表。Swiftは自身のInstagramで、Grainge氏らと並んだ写真を載せてファンに報告した。「Taylorはクリエイティビティのディストリビューションネットワーク持っている。以前からビジネス上で関係があったが、実にユニークな才能を持っており、グローバルなオーディエンスと対話ができる。これは前例のない能力」とGrainge氏は評した。

 Swiftだけではない。UMG所属アーティストは数々のソーシャルサービスで上位を独占している。例えばInstagramのフォロワー数トップのSelena Gomezと、3位のAriana Grande、Twitterのフォロワー数トップのKaty Perryと、2位のJustin Bieber、Facebookのフォロワー数ならEminem(5位)、Rihanna(6位)などだ(ランキングは2月末時点)。

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 ソーシャルネットワークと音楽についてGrainge氏は、「コンシューマーとのエンゲージがコンテンツ、つまりデータ、それにアクティビティとビジネスを加速させる」と述べる。これはローカルのアーティストでも同じだという。

 折しもMWCの直前にアカデミー賞が発表されたばかり。UMGがレコーディングをはじめ制作に深く関わった映画「ボヘミアン・ラプソディ」は主演男優賞、作品賞、録音賞など5部門を受賞した。感想を聞かれたGrainge氏は、「家族、それも数世代の家族で何回も観る映画になった」と述べる。中でも韓国では、1家族が1回以上見ている計算になるとのこと。音楽とビジュアルが組み合わさった時のリーチの広さを実感したようだ。「オーディオビジュアルでのエンゲージという点で、(ボヘミアン・ラプソディは)良い結果となった」という。

 オーディオビジュアルのように、これからは”聴く”ことが中心だった音楽体験が変わるとGrainge氏は考えている。動画はモバイルトラフィックの約8割を占めており、UMGも単なる音楽だけでなく「UMGの楽曲のストーリーテリングやナレーション、オーディオビジュアルコンテンツに大きな投資をしている」という。オーディオビジュアルの体験では4Kビデオ、AR/VRなど体験を変える技術やゲームにも注目しているという。

 例えばMarshmelloはオンラインゲーム「Fornite」とライブイベントを開催し、1000万人が参加した。「このようなことは、これまで(のレコードレーベルでは)実現しなかったことだ」とGrainge氏はいう。

スマートスピーカーは「大きなチャンス」

 スマートスピーカーのトレンドにも触れた。Grainge氏によると、トラフィックの量は目覚ましいものがあり「大きなチャンス」と見る。一方で、「曲名がわからないと、”音楽をかけて”と(スマートスピーカーに)頼むことはできない。(消費者の記憶に残るために)楽曲のタイトルがコーラスに入っている必要がある」とも述べた。

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 これまでを振り返りながら、Grainge氏は組織のカルチャーの重要性を強調した。「財務的、商業的な先例にとらわれず、完全にオープンなマインドを持つ。我々は継続的にリスクをとっており、カルチャーを発明している」とGrainge氏。そのための組織としては、「モノリシックな構造から分散した組織にし、様々な考えを持つ人を取り込んでいる」という。そして、「発明と創造、これは我々の責任だ」と断言した。

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