「パラダイムシフトが起こるのは、何か問題が起こった時、その後に真のイノベーションが起こる」――GA technologies 代表取締役社長CEOの樋口龍氏は、3月13日に開催した2019年10月期第1四半期決算説明会で、不動産業界を取り巻く環境をこう説明した。投資トラブルや施工不良問題など、不動産業界にはネガティブなニュースが相次いだ。しかし樋口氏は、インド企業OYOと合弁会社を設立し、賃貸住宅事業に本格参入するヤフーや、米国で人気の不動産検索サイト「Zillow(ジロー)」が売買領域に踏み出すといった、新たな動きを挙げ「非常にポジティブな状況にある」と意気込む。
2018年7月に東京証券取引所マザーズ市場に上場。同年11月には、不動産仲介会社向けの営業支援クラウドシステムなどの開発、運営を手がけるイタンジと賃貸、家賃保証のリーガル賃貸保証の2社をM&Aにより傘下に収めた。
2月に東京都港区六本木に移転した東京本社に、GA technologies、リーガル賃貸保証、イタンジの3社の拠点を集約。「企業は独立しているが、事業内容が近いこともあり非常にシナジー効果がある。同じオフィスで働いたほうが生産性が高く、コミュニケーションロスも少ない」(樋口氏)と、3社が一緒に働くメリットは大きいという。
業績も好調だ。第1四半期(2018年11月~2019年1月)の売上高は73億3900万円と前年同期比で約2倍の成長を記録。営業利益は7800万円、経常利益は5500万円、四半期純損失は2400万円の赤字になるが、これは、毎期第1四半期に投資をし、第4四半期に利益を拡大する形をとっているからだという。
2019年10月期通期の売上高は366億500万円(前回予想は326億6300万円)へと上方修正しており、営業利益は10億4100万円を据え置いたが、「創業時から1~2年の小さな成長ではなく、5~10年単位での大きな成長を考えている。積極的に長期成長のために使いたいと考えているから」(樋口氏)と、姿勢は一貫している。
投資項目に据えるのは、人件費、採用費、広告宣伝費。なかでも社員数は2018年10月時の195名から276名まで増加しており、雇用環境を重視。また、広告宣伝費としては、中古不動産流通ポータルサービス「Renosy(リノシー)」で、リブランディングを実施したほか、イベントに出展をするなど、全方位的な認知拡大施策を打つ。
「創業時からデジタルマーケティングの強化によってリノシー会員は伸びたが、今後はリアルの店舗を出すことによって、新たな会員獲得を狙う」(樋口氏)とし、体験型ショールームの開設も進める予定。顧客拡大を見据え、現在、東京、名古屋、大阪にある販売拠点に福岡を加える計画も明らかにした。
イタンジとの連携にも期待を寄せる。従来の賃貸業界は、探す、内見、申込み、契約と各プロセスに別々のサービス、会社を使っていることで、コストや時間がかかるケースが多かった。GA technologiesでは、すべての工程を一手に引き受ける「RENOSY 賃貸」を展開。物件確認に自動応答するシステム「ぶっかくん」やウェブで完結した内見予約システム「内見予約くん」など、イタンジのシステムと組み合わせることで、リアルタイム性のある賃貸提供サービスの創出を目指す。
樋口氏は「GA technologiesは、不動産領域にビジネスチャンスがあるとしてこの業界で先行してきた。売買、仲介、賃貸におけるBtoBの領域はすべてとる気持ちで取り組んでいる」と決意を話した。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス