日産とドコモによる、5GとARを活用した“3Dアバターとバーチャル乗車”を体験

 日産自動車とNTTドコモは3月12日、第5世代移動通信方式(5G)を使用し、「Invisible to Visible」(I2V)技術を走行中の車両で活用する実証実験を、神奈川県横須賀市にある日産のテストコース「グランドライブ」で実施。それを実際に体験した。

ARで3Dアバターを登場させ、一緒に乗車している体験が味わえる
ARで3Dアバターを登場させ、一緒に乗車している体験が味わえる

 日産では、リアル(現実)とバーチャル(仮想)の世界を融合し、ドライバーが見えないものを可視化するI2Vを、未来のコネクテッドカー技術のひとつとして研究開発を進めている。I2Vでは、車内外のセンサーが収集した情報とクラウド上のデータを統合することで、車両の前方や建物の裏側、カーブの先の状況など通常では見えないものをドライバーの視野に映し出すことができる。

 こうした運転のサポートのほか、人々がVR(仮想現実)によって思い思いの姿に変身したアバターとして活動する仮想世界の「メタバース」と接続し、ARによって車室内に3Dアバターを登場させ、メタバースの人々と実際に同乗しているかのようにドライブ体験を共有することができるという。

「Invisible to Visible」の概念図
「Invisible to Visible」の概念図

 1月に米国ラスベガスにて行われたCESにおいて、モックアップ車両とシミュレーターによってI2Vの技術を披露しているが、今回の実証実験における特徴は、屋外で走行する実験車両とメタバースをドコモの5G通信によるネットワーク接続で実施していること。敷地内に移動基地局車を配備し、大容量かつ低遅延をうたう5G通信を活用。グランドライブ内の施設に実在するユーザーを、3Dアバターとして車内に出現させるという。

体験者はARゴーグルを装着
体験者はARゴーグルを装着

 体験者は、日産のNV350キャラバンをベースとした実験車両に乗り込み、ARゴーグルを装着。向かい合った座席側に、その場にはいないはずのユーザーが映し出され“バーチャル乗車”をする形となっていた。なお、施設にいるユーザーはVRヘッドセットをかぶり、コントローラなどを使って手などの動きを表現していた。ちなみにユーザー側でも、VRヘッドセットを通じて車の内外の様子は映し出されてわかるようになっている。

アバターを操作する“中の人”
アバターを操作し会話する“中の人”

 今回は、日産ミスフェアレディの方がガイドする形で取り組みなどを説明。さらにユニティ・テクノロジーズ・ジャパンのマスコットキャラクターで、バーチャル女優としても活動している「ユニティちゃん」も途中から乗車。仮想空間でのオブジェクトも表示することができ、例えばディスプレイを表示して説明したり、お菓子を渡してもらったり……と、そういうことも交えながら会話も含めて体験することができた。

車中の様子。ディスプレイを表示して説明をしたり、そこに動画を流すこともできる
車中の様子。ディスプレイを表示して説明をしたり、そこに動画を流すこともできる

 実際に体験した感覚では、3Dアバターが向かい側いに座った状態でリアルに登場しただけではなく、ラグを感じさせないスムーズな会話のやりとりができ、それによってが実在感を増し、想像以上に一緒に乗車する体験を味わえた。一方で、徐行運転というほどの低速移動であったことや、筆者が体験した回では、3Dアバター側の音声が途切れてしまい、システムを立ち上げなおすといったハプニング、後半は停車した状態でガイドが進行するところもあった。あくまで実証実験ではあるが、“動いてなんぼ”の車での活用を想定するのであれば、通信技術や整備、運用を含めて一層の進歩が求められると思える部分もあった。

 こういった技術の活用を考えるなかで、たとえばバーチャルなガイドが一緒に乗り、観光案内を行うということは考えられるうえ、歴史ある観光地などでその時代を知る高齢者が、実際に車両へ搭乗できなくても説明ができるといったことは考えられる。また、海外など遠隔地の観光に行った人と、日本に残った人と一緒に同じ景色を見ながら観光し語りあうといった楽しみも想定できる。

 ほかにも現実にいる人をアバター化するだけではなく、今回のユニティちゃんのようなバーチャルYouTuber(VTuber)や、アニメ・ゲームなどのキャラクターなどと、車のなかで同じ空間を共有するという体験も想定できる。施設内ではもうひとつ、停車した状態の市販車に組み込んだデモ車両があったのだが、そのときは体験者が運転席でアバター側が助手席という、ドライブデートのようなシチュエーションも味わうことができた。憧れの存在と一緒にドライブが楽しめるとしたら……と、それも夢が膨らむものだろう。こういうことを思うに、車とAR、そして3Dアバター(キャラクターコンテンツ)の相性の良さ、親和性の高さを感じる体験となっていた。

実証事件とは別に設けられたデモ車両
実証実験とは別に設けられたデモ車両
操作する側からの視点。相手側(体験者)もアバターとして映し出していた
アバターを操作する側からの視点。相手側(体験者)もアバターとして映し出していた

 この取り組みや実験は、あくまで未来の技術に向けたものであり、両社は今後もI2Vのさまざまな利用シーンを想定した実証実験を共同で進め、これまでにない新たなコネクテッドカー体験を提供する技術の研究開発を推進するとしている。

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