レンダリングは、原子炉の設計図とレーザーマッピングを組み合わせたものだ。レーザーマッピングは、原子炉内を探査したロボットが収集したデータから生成した。1号機の奥に入り込むにつれ、細かい描写が消えていく。原子炉の炉心とその下の、格納容器と台座と呼ばれる部分がどうなっているのか、誰も実際には分からないからだ。
伊藤忠テクノソリューションズが、JAEAと東京電力から提供されたデータを取り込んで、このシステムのユーザーインタフェースとアプリケーションを設計した。システムには、福島第一原子力発電所の原子炉1、2、3号機のデータが組み込まれている。これらの原子炉内部には、異なるレベルの放射性物質や核燃料(デブリ)がまだ詰まっている。
伊藤忠テクノソリューションズで広報を担当する浅野純平主任は「このプロジェクトを達成できたのは、エンジニアリング分野でのシミュレーションソリューションを提供することによるノウハウの蓄積のお陰だ。JAEAおよび福島復興に関わる原子力関連企業に感謝している」と語る。
初めて1号機内を探検した際、われわれのガイドは片手で持ったコントローラで動きを制御していた。このコントローラは、電動ドリルとスタートレックに出てくる光線銃「フェイザー」を混合したような見た目だ。東京電力が原子炉の詳細を非公開にしておきたがったため、映像は撮影できなかった。
しばらく原子炉内をさまよった後、ガイドは懐中電灯の光から明るい照明に切り替え、周囲をもっと見えるようにした。最初に懐中電灯だけの視界を見ておくことは重要だ。作業者に、視界が限られる状態を理解させるためだ。
このVRツアーは、壁を通り抜けるときにぞくっとしたほど説得力のある体験だった。われわれのガイドは原子炉内の異なる場所を上下しながら移動した。体は実際には動いていないことを理解しているので、これには少し混乱した。
スクリーンの向きは、ガイドが装着している3Dメガネに搭載されているモーショントラッキングシステムに基づいており、われわれはガイドが運転する車に同乗しているような感じだ。
数分間のガイド付きツアーの後、今度は私が3Dメガネを装着しコントローラを持って単独ツアーを開始した。
セキュリティ的な配慮から、楢葉のオペレーターが原子炉空間の模擬シミュレーションをロードし、私がゆっくり空間を歩き回れるようにしてくれた。
VRはよく映画の「マトリックス」と比較される。このシステムはまさにそうだ。白い床には黒い線が格子状に描かれ、灰色の空間にはパイプが張り巡らされている。色のない世界だ。
コントローラのボタンを押すことで、前進・後退でき、頭を動かすことで方向を変えたり、昇降できる。慣れてくると、行きたい方向に行けるようになった。
コントローラの2つ目のボタンは、仮想世界の物体を“つかんで”移動させるためのものだ。物体がパイプにぶつかると、ブザーが鳴る。
今回、私は福島の原子炉を実際に訪れたわけではないが、現場のロボットを遠隔操作するためのオペレーター訓練にこうしたツールがいかに役立つかを垣間見せてくれた。
これは、新作映画のプロモーション用VRなどより、ずっと有用だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境