とはいえ、瀬川氏もヘルスケア事業の立ち上げ時に苦い経験がある。一般向け遺伝子検査サービスの「MYCODE」は、同社のヘルスケア事業における第1号サービス。満を持して送り出したものの、販売面では課題もあったという。
MYCODEは、自宅で唾液を採取して郵送するだけで、がんや生活習慣病などに関するリスクを評価・分析してくれるサービス。価格は2万9800円。現在も販売が続けられている。
製品を使ってみた利用者からは、好意的な意見が多数寄せられた。中には、MYCODEで食道がんリスクが高かったため正式に検診を受けたら、実際に早期食道がんが見つかったとの利用者からの声もあった。
このように製品の質には自信があったが、当初期待していた販売計画と実数にはかなりギャップがあったようで「ここでは言えない」と瀬川氏も苦笑いするばかりだった。
例えば、テレビなどで活躍する識者を招いて、1000人規模の健康セミナーを実施。その会場でMYCODEを販売したところ、なんと1個も売れなかったという。瀬川氏は「この頃は、誰をDelightするか。つまり誰に喜んでもらうための製品かを突き詰めていなかった」と振り返る。
DeNAの得意なゲームであれば、「男性」や「○○が好きな女性」というように必ずターゲット顧客を想定する。しかし、ことヘルスケアでは「誰しも健康であったほうがいい。世代や性別関係なく誰もがDNA検査をすべきだ」と思い込み、詳細なターゲットを絞り込まぬまま、販売してしまったと瀬川氏は反省の弁を述べた。
これを受け、がんに絞った検査パッケージを発売したり、有名人頼りでないマーケティングへと切り替えた。また、神奈川県が推進するプロジェクト「ME-BYO BRAND」のロゴを取得するなど公的機関とも協力し、地道に知名度を高めていった結果、2015年度中には事業として単月黒字化を達成するなど成長につながった。
ただし、MYCODEの価格は約3万円。すべての日本国民が今すぐ使うかといえば当然難しい。また、遺伝子検査そのものも社会に浸透しきってはいない。「健康によいサービスですよと言うと、それだけで離脱する人もいる。そうではなく、非ヘルスケア訴求、例えばお得なサービスを使っているうちに気付いたら健康になっていた。そんなアプローチをとれないかと開発したのが『歩いておトク』だ」(瀬川氏)
歩いておトクは、ドコモ・ヘルスケアと共同で運営しているサービス。最大の特徴は、歩数に応じてバーチャル旅行が進み、かつポイントが貯まっていくこと。また提供側のDeNAとしては、携帯電話の新規契約・機種変更時などに窓口で加入推進ができるため、歩数計アプリなどに全く興味がないユーザーにもヘルスケアの一端を感じてもらい、どのような効果があるか検証したいとの思惑もあった。
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