実際のところ、歩いておトクはDeNAの全サービスを通じても極めて高い利用率を誇る。能動的にサービスを開始した利用者であれば、その後1カ月以内に90%が再度利用するという。また利用者の50%近くが1カ月のうち21日以上、アプリを利用している。
MYCODEからの学びもあり、メインターゲットは「30〜40代で健康意識の高くない女性」に定めた。ただし、広い年代に利用してもらいたいサービスである事から、ユーザーインターフェイス周りは特に配慮したという。
また、開発にあたっては初期コンセプトを微調整していった。瀬川氏は、「私が『楽しく健康になれるサービスを作る』と掛け声をしたこともあり、開発チームでは、アイコンをコレクションしたり、キャラクターを育成するといった、ゲーム的なものを作ろうという意識が当初は高かった。ただメインターゲット層との対話の中では、『歩いたら旅行気分が味わえた』というコンセプトが最も支持され、むしろキャラクター育成などのゲーム要素は必要ないとの結果が出た」という。
こうして、UIなどのデザインには「旅行」を全面的にフィーチャーすることとした。また、道程をイラスト地図上に重ねるとの初期方針も、開発中のフィードバックを元に、シンプル化させ、一方で観光地の写真を大きく使うようにした。GPSや外部ヘルスケアデータとの連携機能なども、ターゲット層のITリテラシーを考慮して、あえて採用しなかった。
「我々も相当な想いをもってUIデザインを作っていたが、ターゲットユーザーの行動変容に結びついていないと分かったので、そこはしっかり変えた。作り手の思いとユーザーの受けとめにズレが出ることはある。開発のプロフェッショナルであっても間違えるのだという認識で取り組んだことが、良いKPIが出た理由ではないか」(瀬川氏)
講演の最後、瀬川氏は新製品・新事業の立ち上げにあたっては「どういうユーザーをどう“Delight”させるかを突き詰めること」が重要だと改めて指摘した。瀬川氏はかつてネットスーパーなど、おもに主婦層の利用が多いサービスの開発に携わった。当時まだ瀬川氏は独身だったが、それでも“ママ友”を100人近く作り、徹底的にリサーチした経験があるという。
「このおかげで、インタビュールームにユーザーを招いただけでは分からない仮説、課題が沢山浮かび上がった。“ユーザーになりきる”くらいのつもりで臨まなければ」(瀬川氏)
そうして理解した「ユーザーの課題」を解消するためには、その方法をゼロベースで考えるべきだと瀬川氏は補足する。DeNAのヘルスケア事業は当然「ユーザーの健康作り」が第一の目標であり、MYCODEのような製品はまさに王道とも言える。ただ「歩いておトク」のように、「楽しんでいたら結果的に健康になれた」でも、ユーザーにとってはなんの問題もない。発想の方向を時に変えることもまた重要だとした。
瀬川氏はヘルスケア事業のさらなる目標として、サービスのユーザー数だけを重視するのではなく、「実際にどれくらい健康になっていただけたか」までを徹底的に追求したいとする。その上で「DeNAはオートモーティブ関連、そしてライブ配信(SHOWROOM、Pococha)など幅広く事業展開している。皆さんも、どういうユーザーのどういう課題を解決したいのか、そこを突き詰めて新事業などに取り組んでほしい」と呼び掛け、講演を締めくくった。
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