好きが高じて事業を立ち上げた猛者たち--趣味が仕事になるのは理想か - (page 2)

好きなことを貫いてビジネスに挑戦するということ

 伊豫氏が起業したきっかけは、「リクルートでプロダクト作りを10年やっていた。研究とプロダクト作りは頭の使い方が似ているので、楽しくて没頭していたが、ある時、鐘がなって、動物行動学とプロダクト作りと猫好きの3つをやっている人は、日本にいないだろうと気づき、起業した」(伊豫氏)。

 鐘が鳴ったのは、自分がやりたいプロダクトをなかなか作れない辛さがあったからだという。「周りに起業家も多いので、相談すると『やればいいじゃん』と言われ、やらねばという気に」(伊豫氏)。

 大企業で働く衣斐氏は、ものづくりが好きなのではなく、人を驚かせることが好き。その一つの手法としてものづくりが好きなのだと話す。つくるラボはサークル活動と称しているか、これについては「大企業なのでボトムアップでやるのはなかなか難しいため、外で実績を作ろうとしたら、仲間がどんどん増えてきた。協力企業もあるが、組織に属しているわけでもないのでサークル活動と呼んでいる。コミュニティーには90人ほどが参加しており、そのうち20人ほどがアクティブに活動している。」(衣斐氏)。

 中学のときにサイトを立ち上げた松岡は、ビジネスにするというより、鉄道好きな人の情報源になればと考えた。「鉄道の趣味グループに属していれば、いろいろと情報交換できるが、そうでない人が情報収集できるようサイトを立ち上げた」(松岡)。その後買収されたが、それについては「連絡をいただいたとき、ヤフーのエンジニアとして働き始めたばかりだったので、正直数年後に話があればいいなとは思った。最終的には同じネット系企業への転職だったので、なんとかなるかなと思い決断した」(松岡)。

鉄道コムの編集長松岡孝昌
鉄道コムの編集長松岡孝昌

 好きなことであっても、そこから起業するにはパワーが必要だ。起業するときの苦労話としては、「会社を法人化するかどうかで議論したが、すべてが楽しいことばかりで、あまり大変だと感じたことがなかった。私の場合はこれ以外やりたいことはなく、自分の会社なので四六時中事業のことを考えていても苦痛ではない。楽しいことにかき消される」(伊豫氏)。

 「まだビジネス化はしていないが、つくるラボは、いろんな所からアイデアを集めて驚きを与えることを得意とするチームになっているので、その舞台をつくり、事業化してビジネスにしていくところで、会社と連携できれば最高。一方、サークルも大きくなり、仕事の話もきているが、副業禁止のメンバーも多いため、課題となっている」(衣斐氏)。

 会社の副業は働き方改革によって見直されつつある。「社内の人材の鮮度を高め、優秀な人材がさらにスキルアップする効果にも着目され、副業を認める企業が増えてきた。会社の制度として副業認められた場合に、我々がそのモデルケースになれるように準備しておきたい」(衣斐氏)。

 20周年を迎えた鉄道コムは、どのような発展を考えているのか。「ネットの事情が20年前からかなり変わってきたので、鉄道ファンではなくても鉄道の情報が広く伝わるようになってきた。それを活用して鉄道ファンになってもらうような取り組みができればと思っている」(松岡)。

 3人ともに、好きなことを仕事としてやっているためか、表情から辛さや苦労は感じられない。やはり好きが高じてビジネスにすることは人生の理想形なのだろうかと問いかけると、「3つの好きなことが生きる活力になっているので、もし信念を持って腹を据えてやりたいことがあれば、みなさん事業化を考えるべき。好きなことを事業にしている人が一番強いし、いいプロダクトを作れる」(伊豫氏)とコメント。

 衣斐氏は「新しいものを作るにはインプットが大事で、ハッカソンなら異業種異文化の人と出会い、会話できるので、それがアイデアの種になり、どう料理するかということを、これからも楽しんでいきたい」と人との出会いの大切さについて説いた。

 松岡は「『好きなことを仕事にすることは楽しいだろう』とよく言われるが、楽しいことばかりではない。ただ、最終的には自分の趣味に還元されるものと思っているので、苦労は厭わない。何か好きなことがあればぜひ挑戦してほしい」とし、好きを起業することの大切さについて話した。

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