楽天は2月21日、中国でECサイト最大手「京東商城(JD.com)」を運営する京東集団と連携し、楽天の無人配送ソリューションに京東集団のドローンと地上配送ロボット(UGV)を導入すると発表した。
楽天が導入を予定するのは、最大積載量5kgのドローンと、最大50kgの荷物を積載して時速15kmで走行可能なUGV。ドローンで離島や山間地域などの物流困難地域への配送を実現するほか、UGVの活用により無人での新たな配送ソリューションの実現を目指す。
京東集団は、2016年の総流通総額は9392億元(約154兆7700億円)をほこる中国最大の小売業者で、IT企業としても、アマゾンやグーグルと並び収入規模で全世界トップ3に君臨している。また、世界初の完全無人倉庫や無人仕分けセンターを建設するなど、物流の革新的なスマート化に取り組んできた企業だ。ドローンやUGVを活用した無人配送も、既に中国国内8省で実現しているという。
一方の楽天も、日本国内においてドローン事業「楽天ドローン」を展開している。ドローンを活用した物流サービスを日本で初めて提供したほか、「ドローンハイウェイ構想」や目視外の補助者なし飛行など、将来のドローン活用社会に向けたさまざまな実証実験を進めてきた。また将来、大量のドローンが飛び交う中でも、それぞれのドローンを管理できる、空域管理システム「Rakuten AirMap」も展開するなど、ハード・ソフト面でドローンの普及に積極的に取り組んでいる。
では、日本のドローン業界では先を行く楽天が、国外の事業者と連携する理由は何か。楽天で常務執行役員を務める安藤公二氏によると、ドローンが求められるさまざまな場面で、その目的に応じた最適な機体を活用するためだという。特に京東集団は中国での配送ノウハウがあるため、同社の経験を活かしたドローンやUGVを導入することで、物流のイノベーションをこれまで以上に加速させる狙いがある。
また、京東集団 副総裁 X事業部総裁の肖軍(ショウジュン)氏は、楽天との提携により「目指す未来の展開についても共に考えながら連携できる」との考えを語った。ともにEコマース事業を手掛ける両社を、肖氏は「似ている」と評し、お互いの強みを活かし、日本市場で展開していきたいとコメントした。
中国企業といえば昨今、通信漏えい疑惑を発端とし、華為(ファーウェイ)製品の使用取り止めを米国が要請するなど、中華脅威論ともいえる風潮がある。これについては、安藤氏は「今回の提携は配送分野における機械の導入のみで、顧客情報などといったデータ面での提携はない」と説明。ドローンやUGVの実証実験における政府や自治体との連携についても、これまで通りの関係性で進められるとした。
ドローンやUGVの実運用開始に向けては課題がある。現在の法律では、ドローンは人口密集地や人の直上といった危険性がある箇所、また監督者が目視できない範囲での飛行は、特に限られた範囲のみでしか認められていない。また、UGVのような無人自動車は、現行法ではドローン同様に公道での走行を禁止されている。安藤氏は、国土交通省と規制見直しについての検討を進めているとし、「安全に運行できるルールを構築していきたい」(安藤氏)と語った。
楽天 ドローン・UGV事業部 ジェネラルマネージャーの向井秀明氏は、「これまで楽天が手掛けてきたドローン配送ソリューションは、実証実験や試験サービスの意味合いが強かった」と説明。2019年度の目標として、京東集団が中国で展開しているような体制を整え、定期的に運行するドローン配送を実現したいと語った。
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