家庭用とロケーションVRの課題と展望--第一人者らが語る2018年の振り返り

 1月31日、SHIFTにて「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾(六十六)」と題したトークセッションが実施。コラムニストの黒川文雄氏が主宰となり、エンターテインメントの原点を見つめなおし、ポジティブに未来を考える会となっている。

 今回のテーマは「バーチャルリアリティの展望 2018年-2019年」。ゲストにおける2018年のVR市場環境を振り返りや、2019年の展望などが語られた。登壇したのは“GOROman”として知られるエクシヴィ代表取締役社長の近藤義仁氏、VRエンタメ施設「VR ZONE」やVRアクティビティを手掛けるバンダイナムコアミューズメントの“コヤ所長”こと小山順一朗氏と、“タミヤ室長”こと田宮幸春氏、セガグループでVRLBE(VRロケーション・ベースド・エンタテインメント)を推進しているCAセガジョイポリスの小川明俊氏。

左から近藤義仁氏、小山順一朗氏、黒川文雄氏、田宮幸春氏、小川明俊氏
左から近藤義仁氏、小山順一朗氏、黒川文雄氏、田宮幸春氏、小川明俊氏

ロケーションVRの苦労と風営法--ロケーションVRに力を入れ始めたOculus

 冒頭では、個々における2018年の取り組みなどについて触れられた。小川氏は2018年10月に渋谷の「MAGNET by SHIBUYA109」にてVR特化型施設「JOYPOLIS VR SHIBUYA」のオープンをはじめ、施設に導入するVRコンテンツの海外調達などを手掛けた。

 同施設におけるVRコンテンツのひとつで、映画「ターミネーター」の世界をテーマとした「TERMINATOR SALVATION VR」は、3ルームを用意していたのだが、フル稼働ができない状態が続くなど、日本に持ち込んで初めて判明するトラブルなどもあるとし、その経験において、ロケーションVRにおけるセッティングは場所と環境によって相当苦労したと語った。

 またお台場の東京ジョイポリスなどでも展開している、対戦型VR eスポーツをうたう「TOWER TAG」についても期待を寄せており、セガグループのダーツライブとの協業により、今後は本格展開を試みていくという。ちなみにこのTOWER TAGについては、小山氏が「絶対に体験したほうがいい」、田宮氏が「ゲームデザインが素晴らしい」と絶賛。

 このほか、ゲームセンターなどに関わる風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)に触れる一幕も。勝敗やランキングなどで競い合う要素がある場合、風営法の対象機になるという。そのためコンテンツの内容や表示まわり、設置面積などに気を配る必要があるという。JOYPOLIS VR SHIBUYAについて小川氏は、所轄の警察と相談して確認しながら進めたとしている。

小川明俊氏
小川明俊氏

 近藤氏は、まずVRヘッドセット「Oculus Go」について触れ、近藤氏がOculus側から聞いた話によると「日本ではプロモーションをほどんど行わなかったのに、日本が一番売れた」と語る。VR ChatなどソーシャルVRの盛り上がりについても触れ「これまでVRをやっていなかった層が、興味を持ち出した。以前から考えると、思ってもみなかったムーブメントが起きた。(自身がやりだした)2014年から思うと、想像つかない世界になっていた」とコメント。このほかPS VR用ソフト「ASTRO BOT:RESCUE MISSION」について、「特にVRのゲームを作っている方は必ずプレイしたほうがいい。クオリティが高い」と絶賛する一幕も。

 VTuberについても言及。エクシヴィとしても、VRアニメ制作・配信ツール「AniCast」を開発し、Gugenkaのキャラクター「東雲めぐ」のSHOWROOM生配信をはじめとするプロジェクトを展開しているほか、エイベックスとともに新たなアニメ表現を追求する「AniCast Lab.」を設立した。近藤氏は、VRと直接的な関係性は薄いとしながらも、VTuberの盛り上がりによってモーションキャプチャ関連のツールやシステムのコモディティー化が促進されたと分析する。

近藤義仁氏
近藤義仁氏

 米国で行われた展示会「Oculus Connect 5」について触れ、リリースが近い「Oculus Quest」を紹介。スタンドアロンで稼働できるVRデバイスで、フリーロームVRに活用しやすいものとなっている。そのなかで、現地で体験したというマルチプレイで銃撃戦が楽しめるフリーロームVRコンテンツについて、iPadをVR空間内の様子をバーチャルカメラとして撮影し、その映像を外部に映し出すというシステムも紹介。小山氏が「今後は絶対必要」というほど、ロケーションベースのVRコンテンツには相性がいいものだとした。

Oculus Quest
Oculus Quest
iPadをVR空間内の様子をバーチャルカメラとして撮影するシステム
iPadをVR空間内の様子をバーチャルカメラとして撮影するシステム

 かつて近藤氏は日本でOculus Japan Teamを立ち上げ、Oculus VRの親会社であるFacebook Japanに在籍した経歴を持つ。Oculus Riftが展開され始めたころ、当時のOculus側はフリーロームやロケーションベースのVRに懐疑的だったという。それゆえ、今回こうしたフリーロームVRの展示していたことに驚いたと、率直な感想を語った。

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