NTTドコモ・ベンチャーズは2月6日、オープンイノベーションを推進するイベント「NTT DOCOMO VENTURES DAY 2019」を開催した。
冒頭に登壇したNTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏は、「スマートフォンのエコシステムが成熟期を迎え、XRなど技術開発の競争も激しくなっている。激しく変動する時代において、ドコモは顧客や社会に対して新しい価値を提供し続けるため、競争を勝ち抜いていく」(吉澤氏)とコメント。ベンチャー企業やパートナーが持つ技術やアイデアを、ドコモの資産を足し合わせることで、新たな価値創出を目指すと話した。
現在ドコモが注力しているのが次世代ネットワーク規格である5Gだ。「IoTなど多くの技術が柱として並ぶが、5Gが重要な主柱となる。サービス開始直後から、ドコモの強みを生かしたサービスを開始するため、広くパートナーを求めている。『ドコモ5Gオープンパートナープログラム』には、すでに2000を超える企業・団体が参画し、100件以上のトライアルを実施してきた。スピードとチャレンジ精神を持つベンチャーの力をお借りしながら、5G時代のサービスを共創して、よりよい未来を築きたい」(吉澤氏)。
続いて、NTTドコモ・ベンチャーズ(以下、NDV)の代表取締役社長である稲川尚之氏が、「コーポレート・ベンチャーキャピタルの未来」について語った。同氏は、2018年の活動を振り返りつつ、出資実行20件(日本12件、海外8件)、参加者3200名、協業30件以上という実績を紹介。NDVは「組み合わせを考えた結果。投資と協業が両者で良い結果につながった」(稲川氏)という。
また、当日は新たなパートナーとして、フィンランドのHatch Entertainment、ラブグラフ、スペースマーケットが加わったことを明らかにした。Hatch Entertainmentは、ゲームストリーミングサービス「Hatch」を提供する企業で、ユーザーはdアカウントによってHatchにログインし、世界中のゲームを通じて他のプレーヤーとスコアを競うといった楽しみ方ができる。ラブグラフはカップルや家族の外出時にプロカメラマンが同行して、その瞬間を残す出張フォト撮影サービスを展開する企業。スペースマーケットは、個人宅や公共スペースなどを1時間単位で貸し借りする場所のシェアリングサービスを提要する企業だ。
2019年に注目するトピックとしてNDVは、「5G」「会員基盤/デジタルマーケティング」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の3つを掲げた。5Gは吉澤氏と同じ文脈のため割愛するが、会員基盤については「電話番号をdアカウントに変更することでサービスの横連携を実現する。いただいた行動データを用いて利便性の高いサービスを実現していく」(稲川氏)。DXについては、「NTTグループ全体でデータを利活用し、新たな価値を創造するため、通信事業社としてやるべきことを日々考えている」(稲川氏)と語った。
稲川氏の講演で興味深いのが「深化」というキーワードである。投資という観点から見れば戦略的リターン、財務リターンいずれを優先すべきかという課題が付きまとうが、「実は両方を得るべきだ。両者を得ないと新たな流行を展開できない。だからこそ、投資の質を高める意味のキーワード『深化』を用いた」と稲川氏は話す。
ドコモという大企業とベンチャーの連携については、次の様に課題を掲げた。「大企業とベンチャーの壁は存在するが、そこにNDVがベンチャー企業の輪に加わり、人のつながりを持って協業に至る」(稲川氏)と述べつつ、情報の重要性を人間の構造に照らし合わせた。「ネットワークは血管である。血液(情報)が循環しないと人は死んでしまうが、血液を身体中に巡らすことで能力を発揮する」(稲川氏)。だからこそ、ベンチャーキャピタル(VC)は情報とネットワークを重視するのだと強調した。
未来の創造というテーマについては、「現在は起点に考えるとアイデアは生み出しにくい。だからこそ、一歩先を創造し、その種を見つけてほしい。僕らもVC側として相乗効果の創出を目指す。現在はビッグデータ時代といわれているが、情報にお金を払う方が出てきた。つまり情報をマネタイズできる時代となる。僕らが(ベンチャーのアイデアや資金を)下支えするのでアクセスしてほしい」(稲川氏)と聴講者にアピールしつつ、「アイデアのブレンド。これを常にやり続けたい」と今後の方向性を提示した。
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