ソフトバンクは2月5日、2019年3月期第3四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比4.9%増の2兆777億円、営業利益は18.5%増の6349億円と、増収増益を記録している。
ソフトバンクは2018年12月に上場したばかりで、今回は上場後初の決算発表となる。同社の代表取締役社長執行役員兼CEOである宮内謙氏は、「2015年に合併でソフトバンクが誕生して以来、最高の利益と売上だ」と話し、今回の決算内容に自信を見せた。
主力の通信事業に関しては「世の中的にスマートフォンは減速したと言われるが、日本のスマホ比率はまだ6割台」と話し、まだ成長の余地がある市場だと説明。スマートフォンを普及させるためにも、「Yahoo!ショッピング」との連携施策や、決済サービス「PayPay」やタクシー配車「DiDi」などの新サービスを増やすことでスマートフォンの利用シーンを拡大し、それをスマートフォン自体の拡大につなげていく戦略をとっていきたいとしている。
その上で宮内氏は、現在展開している「ソフトバンク」「ワイモバイル」「LINEモバイル」の3ブランドを合計した、スマートフォンの累計契約数を公表。第3四半期時点で前年同期比190万増の2146万契約であることが明らかにされたが、そのうちワイモバイルの契約数は「2割弱」、LINEモバイルの契約数は「ジョイントベンチャーなので公表していない」とのことだ。
ソフトバンクとワイモバイルに関しては、双方のブランドを掲げたダブルショップが1500店にまで増えており、ソフトバンクとワイモバイルのブランドを相互に移動する顧客が増えているとのこと。当初は低価格を求めてワイモバイルへ移行する顧客が多く、ARPUを押し下げる要因になっていたというが、現在は「ほぼイーブンになりつつある。今期にはほんの少しの差になった」と話す。
またソフトバンクは、2018年12月に大規模障害を起こしたことで解約率上昇を懸念する声が挙がっていたが、宮内氏によると障害直後の1週間は影響があったものの、その後は持ち直し、ワイモバイルを含めたスマートフォンの解約率は過去最低水準の0.79%にまで達しているとのこと。ただし、フィーチャーフォンやタブレットなどを含めた主要回線の解約率は1.03%と高水準にあるが、その理由は50GBの容量が使える「ウルトラギガモンスター+」の投入でモバイルWi-Fiルーターなどを利用する必要がなくなり、そうした端末の解約が増えているためだとしている。
一方、ブロードバンド契約に関しては前年同期比23%増の752万件と好調に伸びている。中でも光回線の「ソフトバンク光」が572万にまで伸びてきており、今後3〜4年のうちに1000万契約を目指すと宮内氏は話す。
そして宮内氏は、5Gの導入時期に関しても言及、2019年の夏頃に5Gを活用したプレサービスを展開する考えを示したが、本格的な商用サービスの開始は端末が出揃う2020年になるとしている。一方で懸念されるのが設備投資額の増加だが、今後5年間の投資額は、1年当たり3800〜3900億円程度でやっていけると宮内氏は話す。
今後の成長を担う新領域については、累計契約数が400万を超えたPayPayだけでなく、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資する、コワーキングスペース事業を展開するWeWorkと合弁で展開している「WeWork Japan」の事業が急速に伸びていると説明。事業開始から1年経たないうちに9500のメンバーを獲得しており、東京のコワーキングスペースはすでに99%埋まっている状態とのことだ。
今後は東京だけでなく、全国にコワーキングスペースを展開していくほか、ソフトバンクが2020年度中の移転を計画している新本社も“WeWork化”し、完全なIoTベースのスマートオフィスを展開するとしている。2019年度は4万メンバーを獲得し、さらにその後は10万契約の獲得を目指すとしている。
報道陣からは、総務省が求める分離プランの導入、そしてNTTドコモの料金値下げへの対抗について多くの質問が寄せられた。ソフトバンクはソフトバンクブランドで分離プランを導入済みであり、ワイモバイルでも2019年度上半期に分離プランを導入するとしているが、もし通信料金と端末代金を完全に分離する必要が出てきた場合「我々の努力は安くて最高にいい端末を開発するなり、見つけてくるなりという仕事になるのではないか」と宮内氏は話す。
ただ一方で、完全分離で懸念されるのがユーザーサポートだという。分離プランの導入によって通信と端末のサポート領域も明確に切り分ける必要が出てくるため、データ移行やアプリの設定など、端末に付随したサポートは従来のように無料でするわけにはいかなくなり、「そうしたサービスを有料化する動きが出てくるかもしれない」と宮内氏は話す。
また宮内氏は、端末に付随したサービスを提供できるかも気がかりだと話す。例えばワイモバイルブランドでは、シニア向けに「かんたんスマホ」を提供しており、ボタンを押すだけで簡単にサポートに電話ができる仕組みが用意されている。しかし、もし端末と通信が完全分離された場合、こうしたサービスをどのような形で提供していくか「議論を呼ぶと思う」と、懸念を示している。
NTTドコモの新料金プランへの対抗策については、大容量のサービスであればソフトバンクブランド、低価格のサービスであればワイモバイルで対応するなど、打ち出されたサービスの価格帯によって異なるブランドで対抗策を打ち出す考えを示した。一方で、ブランドを1つに統合することに関しては「ワイモバイルも使いやすくて料金がシンプルというブランドイメージができた。このブランドを変えるのはマーケティング上得策ではない」と明確に否定。対象とするユーザーのセグメント毎にブランドを変えるという、現在の戦略を継続する方針を示した。
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