ドコモ、NTTぷらら子会社化で映像事業を強化--「NOTTVと同じにはならない」

 NTTドコモは2月1日、2019年3月期第3四半期決算を発表。営業収益は前年同期比1.8%増の3兆6541億円、営業利益は前年同期比5.4%の9020億円と、増収増益の決算となった。

NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏
NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏

 同日に開かれた決算説明会において、ドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏が詳細を説明。通信事業、スマートライフ領域ともに増収増益だが、前年度にインドの携帯電話事業者、タタ・サンズの賠償金支払いがあった影響から、フリーキャッシュフローは前年同期比40.3%減の3868億円となったという。

 主力の通信事業は、顧客還元などの影響からモバイル通信サービス収入は減少しており、携帯電話契約数は前年同期比2%増の7752万契約、モバイルARPUも5300円と横ばい傾向にある。それを契約数が前年同期比24%増の554万契約と、好調な光通信サービス収入の増で補う形が続いている。ただ一方で、解約率は0.55%、ハンドセット解約率も0.45%と低水準に抑えられている。

ARPUの推移。モバイルARPUが横ばいとなる一方で、ドコモ光ARPUは継続して伸びている
ARPUの推移。モバイルARPUが横ばいとなる一方で、ドコモ光ARPUは継続して伸びている

 もう1つの柱となるスマートライフ領域は、前年同期比24%増の1348億円と順調な伸びを示す。新たな顧客基盤として打ち出している「dポイント」の会員サービス、「dポイントクラブ」の会員数は前年同期比7%増の6883万に達したほか、「dポイントカード」の登録数は前年同期比1.6倍の3073万、dポイントの利用も前年同期比35%増の1186億となるなど、好調に伸びているようだ。

新たな顧客基盤となるdポイントクラブの会員数は堅調に伸びており、dポイントの利用も拡大を続けている
新たな顧客基盤となるdポイントクラブの会員数は堅調に伸びており、dポイントの利用も拡大を続けている

 成長領域の1つとなっている金融・決済分野に関しても、取扱高が前年同期比23%増の2億8600万円に達し、「dカードGOLD」の契約数も1月28日で500万を突破するなど好調。2018年にサービスを開始したQRコード決済の「d払い」も、アプリのダウンロード数が9ヵ月で200万を突破しており、対応する店舗も拡大しているとのこと。

 KDDIが4月より「au PAY」を開始するなど競争は激しくなるが、吉澤氏は「我々は基盤となるエコシステムをかなり作っており、それらが全てdポイントと関連している。もっとアグレッシブに対応領域を広げていきたい」と、今後事業を一層拡大していく考えを示した。

QRコード決済の「d払い」は、提供から約9ヵ月でアプリのダウンロード数が200万を突破。アマゾンやファミリーマートなどでも利用可能になるなど加盟店も拡大している
QRコード決済の「d払い」は、提供から約9ヵ月でアプリのダウンロード数が200万を突破。アマゾンやファミリーマートなどでも利用可能になるなど加盟店も拡大している

NTTぷららを子会社化し映像事業を強化

 また今回の決算に合わせる形で、吉澤氏はスマートライフ領域の拡大に向けた新たな施策として、「ひかりTV」などの映像サービスを手掛ける、NTTぷららを子会社化することを発表。同社が持つ映像関連のノウハウと、ドコモが持つ顧客基盤を活用することで、映像をコアとした新たなビジネス創出を推し進め、「現在は1000億円弱」(吉澤氏)という映像事業を、2025年度までに3000億円の事業規模にまで成長させたいとしている。

 ドコモは自社で「dTV」や「DAZN for docomo」などの映像サービスを提供しているが、吉澤氏は「NTTぷららは映像のコンテンツや調達に長けており、それを取り入れてサービス強化につなげていきたい」と話す。すでに両社は、1月18日に生配信・マルチアングルの音楽ライブサービス「新体感ライブ」を共同で提供しているが、今後は映像と広告やEコマース、XRなどを結び付けるなどしてビジネスを拡大していきたいとしている。

今回の決算ではNTTぷららの子会社化も発表。映像コンテンツに強い同社を傘下に収めることで、非通信分野の拡大を推し進める考えのようだ
今回の決算ではNTTぷららの子会社化も発表。映像コンテンツに強い同社を傘下に収めることで、非通信分野の拡大を推し進める考えのようだ

 ただ、ドコモの映像事業といえば、かつてスマートフォン向けの放送サービス「NOTTV」で大きな損失を出したこともある。だが吉澤氏は「NOTTVは決まった時間にプログラムに放送するという形態だったが、今は見たいときに見るという形態に移っている。反省すべきところは反省するが、ビジネスモデルが違うので同じようなことにはならない」と話している。

分離プランやファーウェイ問題にも言及

 同日には、報道陣から新料金や分離プランに関する質問が飛んだ。ドコモは前回の決算説明会で、2019年度の第1四半期に分離プランを軸とした新料金プランを導入することを明らかにしているが、吉澤氏はまだ詳細は伝えられないものの、「発表と実施の時期は必ずしも一緒ではなく、早めに発表することを考えている」と話した。

 分離プランは総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の緊急提言でも要求されているものではあるが、導入によって通信料金を原資とした端末代の値引きができなくなるため、値段が高いスマートフォンなどは買いづらくなり、端末販売の流動性が著しく落ちる可能性も指摘されている。

 こうした点について吉澤氏は「正価で買っていただくのが基本になる」と話し、購入しやすくするため「docomo with」対象機種のように値引きなしでも購入しやすいミドルクラスのモデルを拡大していく考えを示す。その一方で、「私の考えだが、全く端末購入補助がないということはあり得ない」とも回答。従来とは異なる形で、過度にならない程度の新たな端末購入補助のあり方を考えていくとした。

 2018年末より話題となっている、ファーウェイなど中国メーカーの製品調達についても質問があったが、吉澤氏は「政府の動きを注視している。動きがあれば対応するが、今のところ弊社の調達ルールに基づいてやっている」と話し、政府の動向を見守りながら対応を検討する考えを示した。

 また海外に関する動きとして、韓国の通信事業者であるKTが、ドコモに5Gのプラットフォームを提供すると韓国系のメディアが報道した件についても言及。「KTのファン・チャンギュ会長とは意見交換しており、確認したところそのような言い方はしていないとのことだった」と報道を明確に否定。あくまでドコモ自身で、5Gのプラットフォームを構築していくとしている。

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