ハウスマートが「カウル」で提供するのは、中古マンションを安心かつ効率的に購入できる仕組みだ。主に使うツールはスマートフォン。身近かつ手軽にできる家さがしを実践する。
代表取締役の針山昌幸氏は、不動産会社の営業からキャリアをスタートし、楽天を経て、ハウスマートを起業。その背景には「ものありきではなく、人生にとって最適な住まい探しができる仕組みを作りたい」という強い思いがある。「家が好きで、住まいに関する仕事がしたかった」と話す針山氏に、カウル立ち上げの背景から、居住用物件にこだわる理由までを聞いた。
子どもの頃団地で育ったので、飛び跳ねたり騒いだりしてよく両親に怒られていました。それで、家に対して良い印象があまりなくて、家族で出かけるときも、電車の窓から同じような集合住宅が見えると「あぁなんか嫌だなぁ」と(笑)。
ところが小学3年生のときに、両親が自宅を購入して引っ越したんですね。戸建てだったので、上下の階の方に気兼ねする必要もなくなり、自分の部屋もできた。その時にものすごく嬉しくて、家っていいなぁと。そこから家がすごく好きになって、家に関する仕事がしたいと思っていました。
その後、新卒で不動産会社に入社して、土地の仕入れや開発、販売を一通り経験させてもらいました。会社自体も伸びていましたし、尊敬する上司や先輩にも恵まれ、楽しく働いていたのですが、一方でなにかが違うなと強烈な違和感を覚えていたんです。
当時、自社物件を扱っていたのですが、それがなにか違うなと。会社側からすると自社物件をご購入いただくことで、収益を最大化しているのですが、それって果たしてお客様にとって最善の策なのかなと。
もちろん私がおすすめする自社物件を気に入って購入してくださるお客様もたくさんいらっしゃいましたが、果たして全員の方のご希望にあっているのかなと。すべての人が納得して、家を買うという幸せを感じてほしい、そんな不動産購入をしていただきたいと考えたのが起業のきっかけです。
――不動産会社で販売をされていたときは辛かったですか。辛くはないのですが、なにか違うなと感じてしまうことはありました。例えば、購入から半年経ったお客様からお電話をいただくと、反射的に出たくないなと思ってしまう自分がいました。本来であれば、お客様からお電話をいただけるのは大変嬉しいことです。例えばレストランであれば「またご予約いただけるのかも」など良いことにつながりますよね。でもなぜ出たくないなと感じてしまうかというと、クレームかもしれないと思ってしまうからなんですね。
これはおかしいなと。頑張って営業して、お客様に最適な物件をおすすめしたにもかかわらず、なぜ後ろめたい気持ちになってしまうのか。それは、本当に最適な物件を紹介できたという自信がもてないからだと気づきました。
さらに因数分解してみると、買っていただくことに全力を尽くしているが、本当は物件を買っていただいた後、10、20、30年後の不動産の価値を示した上で買っていただくべきなんだろうなと。
家は明日以降の暮らしをより良くするために買うものです。のどが渇いたから水を買うのとはわけが違う。明日以降の生活が大事なのに、家の販売は売ったところで終わってしまうんですね。この部分を解決しないと、自信を持って家を売れないなと思いました。
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