パナソニックがロボット開発の動きを加速させている。1月25日、東京都中央区に設立した、共創型イノベーション拠点「Robotics Hub」を報道陣向けに披露。同様の施設を大阪府門真市にもオープンしたほか、6つの大学との連携による共同研究を進めていることなども明らかにした。
パナソニックでは、ロボット掃除機「RULO(ルーロ)」をはじめ、臨床アシストや歩行トレーニングロボット、トマト収穫、水中ダム点検など、幅広い分野でロボティクス事業を展開してきた。しかし、パナソニック マニュファクチャリングイノベーション本部本部長の小川立夫氏は「工場などで使用されているロボティクスは、いかに製品を早く、大量に作れるかといった部分が重要であり、パナソニックはこれらの知見をためてきた。しかしこれから私たちが挑戦するのは社会的なロボティクスサービス。この部分の知見があまりなく、キーデバイス開発、ロボティクスの要素技術、商品化といったサイクルを、パナソニックだけで早く回すことはできない」と課題を挙げ、産産、産学連携の共同研究に至った背景を説明した。
Robotics Hubは、東京、大阪の拠点に加え、千葉工業大学、東京大学、東北大学、奈良先端科学技術大学院大学、立命館大学、早稲田大学の6つの大学と連携拠点を準備しており、テーマを決め、共同研究に乗り出す。
これまでのロボットは「自動化(Auto)」を価値の主軸に据えていたが、パナソニックでは「自己拡張 (Augmentation)」を、自動化の次の提供価値と位置づける。Augmentationは、人間能力、動作の性能、仕様を向上させる「Enlarge」と、ヒトを計測・理解する技術の強化で五感をつなぎこむ「Enrich」の2つのアプローチで進める計画だ。
Robotics Hubの東京拠点では、4つのデモを実施。「移動ロボット評価」エリアでは、WHILLと共同開発中の自動運転型パーソナルモビリティを披露。自動運転で進む車椅子に荷物を積んだ車両がついてくる仕組み。空港内など屋内での使用を想定している。
「第三の腕」エリアは、Augmentation領域のEnlargeを担う取り組み。施工における天井への板の取り付けは、ずっと上をむいたまま作業をしなくてはならず、かなりの労力が必要になる。現在は板を押さえる、ビスを止めるなど、二人がかかりで作業している場合もあるが、第三の腕が板を固定し、人間がビス止めをすることで、作業が終えられるとのこと。このほか、料理中に調味料をとってほしいといった場合にも活用できたり、腕ではなく足として使ったりと、活用方法は幅広いという。
「要素技術」エリアでは、部品としてロボットを支える技術を紹介した。写真左がジャンプができる「筋肉」、右のカメラが「目」の役割を果たしており、新しいロボットを開発する際、これらの部品を組み合わせることで、開発期間の短縮につながるという。
Augmentation領域のEnrichとして開発を進めているのが「感覚拡張」エリアだ。手のひらにデバイスを握ることで、手に刺激を感じられ、室内を歩いているのに、雪道や落ち葉の中の歩いているような感覚を味わえるとのこと。振動のほか、音を流したり、ビジュアルを再生したりすることで、視覚、聴覚、触覚を活用した歩行感覚の拡張デモを体験できる。
パナソニックでは、自己拡張 (Augmentation)のコンセプトの具現化に向け、4月に学際的バーチャルラボ「Aug-Lab(オーグラボ)」を開設する予定。共創の促進に加え、価値検証を進めることで次世代ロボットの早期実用化を目指す。
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