家庭内の監視カメラも、独り暮らしの高齢者をモニターする1つの手段ではあるが、一日中記録をとるのは、プライバシーの侵害にもなりうる。このジレンマの解決を目指している1社が、Sensorscallだ。Sensorscallが開発しているAIデバイスは、コンセント差し込み式で、人の動き、活動レベル、空気の状態などをモニターする。
「CareAlert」というこのデバイスは、センサを使って活動量を測定し、人の毎日の行動パターン、例えば就寝時刻や夜中に起きる回数などを学習するように作られている。夜中に頻繁に起きるとか、バスルームにいる時間がいつもより長いといった異常があると、介護士に通知を送る。通知は、専用アプリでもテキストメッセージでも送ることができる。
CESで展示されていたCareAlertは、音声センサも内蔵している。ただし、認識するのは人の声ではなく、トイレで水を流す音、シャワー、ドアの開閉などに伴う音だ。例えば、水流音がいつもより少ない場合は、水分摂取が足りないか脱水症状を起こしている可能性もある。ドサッという音が感知され、そのまま5分間、人の動きがなかったら、転倒した可能性があることを介護士に通知する。
介護士の側では、CareAlertを双方向スピーカとして使い、高齢者が無事かどうかを確かめることができる。薬を飲むよう促す音声リマインダを録音しておき、毎日決まった時刻にCareAlertから流れるようにスケジュールするなどの使い方もできるという。
CareAlertは、1台あたり99ドル(約1万1000円)で2月からベータユーザーに提供される予定だ。1つの住宅につき、少なくとも3台(バスルーム、台所、寝室など、人の出入りの多い場所に)設置することをSensorscallは推奨している。年間のサブスクリプション料金が約149ドル(約1万6000円)で、これはソフトウェアのアップデートなどに使われるが、契約初年度はこのサブスクリプション料金が無料になる。
英国のスマートホーム企業Centrica Hiveも、「Hive Link」という類似のシステムを英国内で12月に発表している。米国でも2019年内に展開する予定だという。このシステムもCESで展示されていた。
Hive Linkに搭載されるセンサには、人の日常的なパターンや習慣を学習するAIアルゴリズムが組み込まれている。介護士は「Hive」アプリで活動ログをチェックしておけるので、例えば、高齢の母親がいつもどおりの朝8時に起きてこない、などの異常が発生した場合には、介護士のもとにメールやテキストメッセージでプッシュ通知が届く。
Hive Linkは、モーションセンサ、窓センサ、ドアセンサとともに、コーヒーメーカーやテレビなど、日常的に使われる家電製品に取り付けられたスマートプラグを組み合わせて利用する。これらすべてが連動し、活動量や動きに基づいて、その人がいつもどおりに動いているかどうか、例えば朝のコーヒーをいれたか、冷蔵庫のドアを開けたか、といったことを確かめてくれる。CareAlertと同様、カメラは使っていない。英国でのHive Linkの価格は149ポンド(約2万1000円)で、そのほかに月額料金が15ポンド(約2200円)ずつかかる。
Centrica Hiveのグローバルプロダクトリードを務めるJohn Gutch氏は、こう語っている。「母親に対して『無事かどうか確かめられるように、あるモノを家の中に置かせて』と伝えるのは、かなり難しい。重要なのは、プライバシーの侵害にならないようにすることだ」
これらのイノベーションの目的は、人々の生活をよりシンプルで楽しいものにすることだ。その手段は、適切な投薬でもモニタリングでも、VRによって誰かにほほ笑んでもらうことだけでもいい。
「高齢者は、安全で健康的、そして活動的でいられるようにしてくれる多くの新製品のおかげで、前の世代よりも長く自立できている」と、IEEEのフェローでタフツ大学大学院工学研究科の研究科長であるKaren Panetta氏は語る。「テクノロジに詳しい世代が年を重ねれば、さらなるハイテク製品が自分たちや高齢になっていく親たちを、日常生活のあらゆる面で支援してくれると期待するようになるだろう」(同氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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