ベネッセホールディングスとソフトバンクの合弁会社で、高校向けの学習支援プラットフォーム「Classi(クラッシー)」を運営するClassiは1月8日、小中学校向けに校務支援サービスを提供するEDUCOMを買収したことを発表した。買収額は数十億円後半の規模とみられる。今後は両社が提供してきたサービスを統合した「学習×校務」支援サービスを共同で展開するという。
学習支援プラットフォームのClassiでは、生徒自身が学校生活の中で得た学びを記録して振り返れる「ポートフォリオ」、クラスや部活、保護者などの単位でメッセージやファイル送信、ウェブテスト、アンケートなどができる「校内グループ」、約9000本におよぶ「動画学習」などの機能を提供。2014年4月の設立ながら、全国の高校(約5000校)の4割にあたる約2100校に導入されているという。
なかでも、2018年4月に提供を開始したポートフォリオ機能は、すでに1000校以上に利用されるなど好評だと、Classi代表取締役副社長の加藤理啓氏は手応えを語る。「生徒が主体的にスマホから目標を立てて、やったことや感じたことを書いている。それに対して先生からフィードバックがくると生徒も嬉しい。ITによるエビデンスに基づいた指導ができるようになり、学習指導要領以外の指導に不安を持っていた先生も積極的に利用してくれるようになった」(加藤氏)。
今回、Classiが子会社化したEDUCOMは約30年にわたり校務支援をしてきた企業で、全国の小中学校や教育委員会向けに、教職員の校務を効率化するシステム「EDUCOM マネージャーC4th」をクラウド・オンプレミスの双方で提供。教育系(成績処理や出席確認)や保健系(健康診断票、保健室管理)、指導要領や学校事務などの機能を統合的に利用できるもので、業界トップシェア(校務支援システムを導入する学校のうちの約5割)となる全国約320自治体・約6900の小中学校で導入されているという。
近年は、文科省の「次世代学校支援モデル構築事業」や、総務省の「スマートスクール・プラットフォーム実証事業」などを皮切りに、教職員が利用する校務系システムと、生徒たちが利用する授業・学習系システムを連携させることで、学習指導や生徒指導の質の向上や、学校運営の改善につなげようとする機運が高まっている。また、文科省では統合型の校務支援システムの導入を推奨しており、2023年までに100%の導入率を目指している。
このような背景もあり、学習支援に強みを持つClassiと、校務支援に強みを持つEDUCOMがパートナーシップを結んだ。加藤氏によれば、Classiはこれまで高校を中心に導入校を増やしてきたが、義務教育である初等中等教育(小学校・中学校)へのアプローチ方法を模索していたタイミングでもあったという。30年にわたり校務支援をしてきたEDUCOMのネットワークは魅力的だ。一方のEDUCOMも、さらなる技術革新を推し進めようとしていたタイミングだったため、双方の思惑が一致した。
買収の決め手は「学校へのコミット力だった」と加藤氏は明かす。義務教育の小中学校向けにITサービスを提供する場合には教育委員会経由となるが、EDUCOMには全国に20以上の拠点があり、導入校へのアフターフォローは同社が直接行っている。これにより、学校のニーズをくみ取りすぐにプロダクトに反映できる体制を構築しているという。高校向けに直接サービスを届けているClassiとも親和性が高いと考えた。
今後は、双方のサービスの連携を進めていくが、まずはEDUCOMの校務システムを導入する小中学校向けに学習支援のClassiを提案していく予定。これにより、たとえば高校生が使っているポートフォリオ機能を小中学生から利用できるようになり、より生徒ごとの学習データを充実させられるようになると考えている。また、将来的には全国にある1700の自治体の中でも、特にIT導入が難しい小規模な自治体にもサービスを届けていきたいとしている。
「子供たちにとってITは当たり前の存在になっているが、小中学校ではまだ紙の教科書が中心になっている。義務教育だからこそ、学校はもっと楽しく、ワクワクする場であるべき。ITを使いながら、パッションを持ってお互いに学び合う環境にしていきたい。そのために、小中学校向けに30年事業を展開してきたEDUCOMと一緒になって、そのスピードを上げていきたい」(加藤氏)。
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