2019年は「仕込み」が花咲く年に--LINE出澤社長と舛田氏にインタビュー - (page 2)

出澤氏 金融系はさまざまなパートナーや、監督官庁が存在するため準備に時間がかかり、発表が2018年に集中しました。また、LINEはグローバルで8000人を超えたため、社内でビジネスユニットを設けることで、各自がベンチャーのようにスピード感をもってビジネスに取り組める仕組みを2018年から始めています。

 その結果「LINE ショッピング」「LINEトラベルjp」といったサービスを提供できる組織作りを行いました。2019年は取り組みを一歩進めて、各リーダーが責任を持つカンパニー制へ移行する予定です。私は以前からフラットな文鎮型組織が美しいと考えてきましたが、各リーダーに意思決定を任せつつ、次のLINE創業者創出を目指します。

舛田氏 ここで1つ裏話を。2014年の「LINE CONFERENCE TOKYO 2014」で発表したLINE Payですが、決済と銀行のどちらをお披露目するか2つの選択肢がありました。2013年ごろから銀行業務の検討は進めていましたが、当時の我々では銀行を持つ資金力も人材もタイミングも足りず、時期尚早との判断を下しています。

 当時は手掛けるサービスも山ほどあり、銀行を始めるには金融庁の審査などに多くの時間を要するため、LINE Payから始めました。現在は銀行の重要性が高まり、日本のLINE Bankを含めた4カ国で事業を進めています。

出澤氏 タイは商業銀行大手のカシコン銀行と共に「KASIKORN LINE」を設立し、台湾は政府が用意するインターネットバンキングライセンスに応募している段階で、2019年2月ごろに結果がでる予定です。インドネシアでは、韓国資本で現地に本社があるPT. Bank KEB Hana Indonesiaに出資しました。

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投資や保険、トークンエコノミーも

――金融という切り口では、「LINEスマート投資」「LINEほけん」なども展開されていますが、これらは将来的に連携するのでしょうか。描かれている未来像を聞かせてください。

出澤氏 LINE Payが日常的な財布として生活の中心にある世界を目指しています。たとえば当日の飲み会で少額のお金が必要な場合、シームレスに借りて、割り勘機能で支払えるのは便利ではないでしょうか。私は保険業界出身ですが、あの業界は顧客との相談時間を確保することが難しく、保険加入者も減少しています。しかし、日常的なリスクに変わりはありません。だからこそ「LINEほけん」を通じて、気軽に保険を活用できる仕組みを提案できると思います。

 他方で、従来の送金システムは多くのコストがかかってきました。国際間はもちろん企業間、個人間も同様です。しかし、LINE Payが送金・着金のプラットフォームになれば、従来のコストを抑えることも可能でしょう。ユーザーの利便性や社会コスト全体を引き下げるような未来を提供したいと思います。

舛田氏 我々は「あらゆる距離を近づける」ことを最終ミッションに掲げていますが、金融サービスと人は身近ではなくなっています。使える方は使い倒しますが、未使用者は距離が開いたまま。公平ではありません。社会を構成する要素の1つは金融ですが、主従の関係に当てはめれば、時にはお金が主、人が従になることもあります。ここをフラットにするのが重要です。金融サービスと人の距離を縮めれば、ビジネスも働き方も楽しみ方も変わります。金融システムを柔軟に変えれば、連鎖的に社会を変えられるのではないでしょうか。

 LINEは社会基盤を目指していますが、人によっては「大それたこと」と言われることもあります。それでも背伸びして(サービスを展開してきたことで)コミュニケーションや情報の社会基盤の一翼を担うまで来ました。その次が金融です。LINEプラットフォームと同等の社会基盤を構築すべく、すべての資源を集中させています。

――社会基盤ということでは、9月に発表したトークンエコノミー構想「LINE Token Economy」も深く関係していると思います。こちらの進捗はいかがでしょうか。

舛田氏 あまり多くは話せませんが、1つはインターネット進化論として「ウェブ3.0」があると仮定すれば、サービス事業者とユーザーの関係がフラットになるべきでしょう。たとえば弊社が新規上場した場合、富を得るのは投資家や従業員に限定されます。ただ、この結果はユーザーがアクティブに使ってくれたからこそ得られたものです。

 エンゲージメントに報える方法を考えてきましたが、発行した独自トークンをインセンティブとしてユーザーに付与すれば、サービス自体が大きくなったときによりユーザーに還元できると考えたのが始まりです。ここから新たなメディア、新たなサービス、新たなプラットフォームの構築が可能ではないでしょうか。

 社会的実験の側面が大きいものの、独自トークンの「LINK」やLINKエコシステムも作りました。分散型アプリケーションのDapps(LINEではdAppと表記)も今後拡大します。その上で、既存のLINEサービスと連携させるのが2019年、並行して外部サービスと連携させていくのが2020年になるでしょう。LINKのチームは最もスモールなチームで、「とりあえずやってみなさい」というスタンスで一番自由を与えています。

 前述した"金融と人"の話と類似しますが、現金は多くのルールが存在し、そこで進化させることも面白い挑戦でしょう。一方で、異なる挑戦分野として暗号通貨があります。われわれは両者を異なる存在として認識しておらず、目標はどうやって人との距離を近づけるかであり、そこに今後も注力していきます。

スマートディスプレイ「Clova Desk」は2019年にお披露目

――Clova(LINEが開発した音声AI)の進捗状況を教えてください。

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