歩行するロボットが転倒するのを見るのは、気が滅入るものだ。私のせいで転倒するのであればなおさらだ。
私が立っているのはカリフォルニア州パサデナにあるラボで、二足歩行ロボットがたくさんいる。ある研究者に、トレッドミルを歩いている5フィート(約1.5m)の2脚ロボット「Amber」を転ばせてみるよう促された。ロボットは上部のレールにロープでつながれて所定の位置を歩くので、私が手荒なことをすると前か後ろに倒れてしまう。
ロボットに感情がないのはわかっていても、やはり残酷な気分だ。私は恐る恐る、Amberの右脚の前に手を突き出し、Amberがつまずいて足を踏み外すのを観察する。進路上にある障害物をうっかり蹴ってしまったような状況だ。驚いたことに、Amberは立ち直り、何事もなかったかのように、それまでと同じ着実なペースで歩き続けた。
次に、金属製の長い物差しで胴体を押す。Amberは再び元の体勢に戻った。
このプロセスは、卑劣に思えるかもしれないが、カリフォルニア工科大学(Caltech)のAMBER Labの研究者が妨害テストと呼ぶものだ。すべてはロボットの歩き方を理解するためなのだ。
われわれは、Boston Dynamicsのような企業のロボットが、走ったり、ジャンプしたり、さらにはパルクールを行ったりするのを見るのには慣れている。だが、AMBER Labのロボットは、派手な技を決めたりはしない。ラボの研究者は、ロボットの動き回り方を理解することによって、歩行困難な人やまったく歩けない人を助ける機器にその技術を直接適用できるようになる。
Caltechで機械工学および土木工学の教授を務め、AMBER Labを率いるAaron D. Ames博士は、「歩行やランニングなどの動作を実現するたび、われわれはそれを人工器官、そしていずれは対まひ患者向けの外骨格に搭載したいと考える」と述べている。同研究所の主な重点分野は、二足歩行ロボットの実験的研究だ。「歩行ロボットで採用しているのと同種のアルゴリズムによって、(対まひ患者が)起き上がって歩けるようにしたい」(Ames博士)
Ames博士とチームは、人間の動作をロボットに模倣または反映させようとするのではなく、ロコモーション(運動や移動)に関する数学を理解しようとしている。従って、ロボットが倒れても、研究チームは単にロボットの設定を調整することで修正を試みるのではない。「われわれは基礎科学に立ち返り、数学とアルゴリズムを通じて反復することで、もう一度やってみる」(Ames博士)
ロボットは液圧ではなく電気モーターを利用するため、細かい作動が可能になり、補助器具としての利用に一層適したものになる。
同研究所で開発された人工装具の1つが「Ampro 3」だ。これは動力大腿義足で、足首に2自由度を備え、既存の器具よりうまく歩けるように設計されている。私は博士課程の学生であるRachel Gehlhar氏に、Amproを装着して歩き回るとどんな感じか、実演してもらった。装着者の歩く速度に基づいて、慣性計測装置(IMU)が義足の動きを調節する。そのため、Gehlharさんが歩みを速めるとAmproも加速する。
私の訪問時には、4つの主要ロボットが開発中だった。防護用の柵に取り付けられたホッピング(跳躍)ロボット、Amber、Ampro、そしてロープにつながれていない状態で動く二足歩行ロボット「Cassie」だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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