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ピチャイCEOは何を語らなかったのか--グーグル「Dragonfly」をめぐる異説 - (page 2)

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極秘プロジェクト扱いで反対を押し切ろうとしたプロジェクト責任者

 次に、このプロジェクトの責任者とされるScott Beaumont氏なる幹部をめぐる話に移る。The Intercept記事を読むと、このBeaumont氏が「功を焦った」との印象が伝わってくる。


北京で開催されたイベントで語るBeaumont氏
(2015年12月に公開されていた動画。この人物の情報はGoogleで検索してもあまり見つからなかった)

 2009年にGoogleに入り、2013年からは中国と韓国の責任者を務めるBeaumont氏(英国人)が、どの時点でDragonflyプロジェクトの責任者に指名されたかははっきりしない(Pichai氏や前任の検索責任者らが2016年にはすでに中国市場再参入について意見交換していた、との記述はあるが)。それでも、このプロジェクトを成功させればほぼ間違いなく(少なくともGoogleの)歴史に残ることは明らかで、同時にBeaumont氏はこれを成就させる難しさにも早い段階で気付いていたようだ。

 この難しさに対処するためにBeaumont氏が採ったとされる戦術には、iPhone開発時のSteve Jobs氏を思い出させるものがある。具体的には、プロジェクト関係者に箝口令を敷いて「情報を外に漏らした者は(たとえ相手が社内の人間であっても)クビにする」と話していたとか、(プロジェクト内の)職責の異なるチーム同士のコミュニケーションを抑え込み、自分の直轄チームだけが情報をコントロールしようとしていたなどと書かれている。2018年8月の段階で共同創業者のSergey Brin氏がDragonflyについて、「自分は何も聞いていなかった(The Interceptの記事で初めて知った)」と発言していたが、それがもし本当であるとすれば、Beaumont氏のこのやり方が相当徹底したものであったのかもしれない(カリスマ的な創業者ならまだしも、いち幹部にそんなことが可能なGoogle社内の管理体制というのもちょっと恐ろしい気がするが)。

 ところで。

 Zunger氏曰く「Googleのなかではとくに異例」とされる形で進められたこのプロジェクトが、もしBeaumont氏らの思惑通りに進んでローンチにこぎつけていたら、間違いなく大惨事になっていただろうと思えるのが次の点だ。

 記事によると、Googleでは新しい製品やサービスの開発にあたって、法律やプライバシー、セキュリティに関して問題がないかどうかをチェックするレビューが必ず行われている(=それぞれの担当部署によるレビューが義務付けられている)。しかし、Dragonflyではこの通常の手続きが行われなかったという。プロジェクトの担当幹部らは、プライバシー(担当チームのまとめた)レビューの中味を薄める(=問題の深刻さを軽くみせる)つもりだったとみられる。

 他社でもやっている「サーバを中国国内に置く」ことに加えて、ユーザーの検索履歴と(使ったスマホの)電話番号を紐づけるといったオマケまで付随するこのサービスが、プライバシーに関して問題にならないはずがない。そして、そういう面倒な問題にかかずらっていてはいつまで経っても話が先に進まない……Beaumontらがそう考えて、プロジェクトの早い段階で「プライバシーおよびセキュリティの担当チームを排除」していた、蚊帳の外に置こうとしたというのは想像に難くない。

 その一方で、麻雀で言えば「役満狙いのダマテン」(大きな手=得点をねらって、最後まで手を明かさずにいること)のようなこの手がうまくいった場合に、社内外から噴出するはずの批判や質問に対して、Pichai氏やBeaumont氏らがどう対処しようとしていたかは不明だ。

 この件に関して、社内だけでなく、外部からも中止を求める声が数多く上がっているのは、以前に記した通り。外部というのはたとえば、アムネスティ・インターナショナルをはじめとする60の人権団体とか、あるいは米議会の有力者(共和党のMarco Rubio氏や民主党のMark Marner氏など)のことだ。


中国向け検閲対応検索エンジンを開発しているとしてGoogleを批判するWarner議員

Google従業員やアムネスティ・インターナショナルが「Dragonfly」プロジェクトに抗議

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